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2017年7月30日 (日)

「カーズ/クロスロード」

Cars32017年・アメリカ/ピクサー・アニメーション・スタジオ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題:Cars 3
監督:ブライアン・フィー
脚本:ボブ・ピーターソン
製作:ケビン・レハー
製作総指揮:ジョン・ラセター

擬人化した車たちのレースに賭ける姿を描くピクサー・アニメーション・スタジオの長編アニメ「カーズ」シリーズ第3作。監督は前2作にストーリーボード・アーティストなどで参加していた、これが監督第1作となるブライアン・フィー。前2作を監督したジョン・ラセターは製作総指揮に回った。声の出演は前2作でも主人公マックィーン役を務めたオーウェン・ウィルソンに「ローン・レンジャー」のアーミー・ハマーなど。

これまで華々しく栄冠を勝ち取って来たライトニング・マックィーン(オーウェン・ウィルソン)だが、彼も既にベテランの域となっていた。そんな折、最新テクノロジーを装備した次世代レーシングカーを操るジャクソン・ストーム(アーミー・ハマー)が台頭して来た。ストームとの争いで焦ったマックィーンはレース中に無理をして大きなクラッシュ事故を起こしてしまう。失意のどん底にいたマックィーンだが、故郷ラジエーター・スプリングスの仲間たちの励ましもあって再起を決意し、最新技術を誇るトレーニング施設で訓練を開始。担当トレーナーになったクルーズ・ラミレス(クリステラ・アロンツォ)とともにトレーニングに明け暮れ、再度ジャクソン・ストームとの闘いに挑むのだが…。

「カーズ」シリーズは大好き。1作目は新進だが傲慢な性格で友人もいないライトニング・マックィーンが、迷い込んだラジエーター・スプリングスの人懐っこい車たちと触れ合う事で、早く走る事よりも、人生にとってもっと大切な事を学んで行く、という教訓が込められた物語であった。
この、むしろ大人向けのメッセージには感動した。只のカー・アクション・アニメに留まらない、ピクサーの凄さを思い知らされた。

2作目「カーズ2」は一転、007をはじめスパイ・アクション映画のパロディ満載で、前作にあったようなテーマ性は希薄であった。しかしその分、何も考えずに気楽に楽しめる作品になっており、映画ファンにはパロディの元ネタを探すというお楽しみもあり、1作目に比べるとやや物足りないが、これはこれで面白かった。

そこで本作だが、2作目は一種の番外編で、物語的には本作が1作目の正統な続編、という事になる。人生訓的なテーマも復活している。

(以下ネタバレあり)

本作のテーマは、“忍び寄る衰えにどう立ち向かい、どう克服するか”というものである。
これはまた深いテーマを持って来たものである。

歴戦の勇者でずっと第一線を走り続けて来たマックィーンも、もはやベテラン。次世代の新進レーシングカーが台頭して来て、マックィーンはぶざまに負け、車体も大破する。
再起を果たそうとするが、最新テクノロジーを搭載したジャクソン・ストームら若手には勝てそうもない。

そんな時、スポンサーの会社が大富豪のスターリングに買収され、マックィーンは最新設備を整えたスターリング経営のレーシング・センターで、シュミレーターなどのハイテク・マシンを使った訓練に挑む事になるが、年齢による衰えが見え始めたマックィーンにはどうも馴染めない。次のレースで勝てなければ引退という選択肢が待っている。
さて、マックィーンはこの人生最大の危機をどう乗り越えるか…という話である。

1作目ではまだ若造だったマックィーンが、はや後進に道を譲る事を考える年齢になったのか。いいテーマだけれどちょっと早過ぎないか、というのが正直な気分である。
「ロッキー」シリーズではないけれど、もう1~2本、頑張って最後に勝利を勝ち取る王道パターン作品を作ってからでも遅くはないと思うのだが。
ロッキーは60歳でもまだチャレンジを続けていたけれど(笑)。まあレーサーは引退年齢は早いかも知れないが。

レーシング・センターでマックィーンのトレーナーとなるのが黄色いボディのクルーズ・ラミレスである。彼女はマックィーンのファンで、かつてレーサーになる事を夢見ていたが、今はあきらめてトレーナーという職に甘んじている。

クルーズと二人三脚でマックィーンは厳しい特訓を始める。砂浜で走ったり、ダートレースに参加したり。
マックィーンは若いクルーズに、レーサーの才能を見て、自分が恩師ドク・ハドソンに教えられた事を思い出し、今度はクルーズを励まし、育てようと思うようになる。

1作目が、ドク・ハドソンとマックィーンの師弟物語だとすると、本作は今度はマックィーンとクルーズとの師弟物語という事なのだろう。
この発想は悪くない。…のだが。

本作を「ロッキー」シリーズにおける「クリード チャンプを継ぐ男」的な位置にある作品だという声もある。これもロッキーが若者を鍛えて一人前に育てて行く師弟の物語である。

だが、「クリード-」におけるロッキーは年老いて完全に引退していて、もうリングに立つことはない。
それに対して本作のマックィーンは、まだ引退していない。引退を賭けてレースにチャレンジしている途中なのである。この点が「クリード-」とは根本的に異なる。

そしてあの意表を突くラスト。これを賞賛する声もあるが、私はまったく納得行かない。あれでは肩透かし、というか邪道である。

マックィーンは、一旦敗れて失意のどん底にあったが、そこから這い上がって最後に逆転勝利する、というのがこの手のエンタティンメントの王道であり、観客もそれを期待しているはずである。少なくとも小さな子供の観客は、あっけにとられ、ガッカリした事だろう。

 
テーマとしては悪くない。チャンピオンだった男が、去り時を知り、身を引く、という話もうまく描けば感動の物語になったかも知れない。

だが残念な事に、脚本がかなりダメである。一番いけないのは、クルーズ・ラミレスのキャラクター、及びレーサーとしての実力がきちんと描かれていない点である。

レーサーになる事を夢見ていたとは語られるが、今はトレーナーとして、まともにレーシング活動もしていないはずである。何度かマックィーンと一緒に走って、マックィーンも実力を認めた、というのも分かるが、本格的なスピード・レースに一度も参加していない車が、練習もせずにいきなりフロリダ500マイル・レースに出て、優勝する、というのはあり得なさ過ぎる。そこへ持って行くのなら、せめてピストン・カップ級のサーキットで二人で練習として何周も走って競い合い、マックィーンが、「俺も敵わない、こいつをレースに出してやりたい」と悟るシーンくらいは入れておくべきである。それでも練習量は全然足りないが。

百歩譲って、マックィーンがクルーズと交代しレースに途中参加させる事を認めるとしても、最後の周ならみんな疲れきっている頃。そこにバトンタッチで入った車は疲れてない分、圧倒的に有利である。そんな事が可能ならみんな同条件にしないと不公平である。

何より、途中で勝利をあきらめる事は、マックィーン一人だけが決断していい事ではない。彼を支え、応援してくれたラジエーター・スプリングスの仲間たちや、親友のメーターたちを裏切る事でもある。彼ら仲間たちは、あのマックィーンの決断に納得したのだろうか。

勝負を始めたなら、絶対にあきらめてはいけない。最後まで勝利に執着すべきである。それで負けても、悔いはないはずである。後進に道を譲るというのは聞こえはいいが、それを正しい行いと認めてしまっては、“勝てないと思ったら夢をあきらめよ”と言ってるのと同じである。
むしろ、ボロボロになっても、最後の最後まで夢をあきらめず闘う姿を見せる事こそが、後進への教えになるのではないか。

最後のクルーズの勝ち方も疑問である。ドク・ハドソンが得意とした必殺技、空中一回転を、マックィーンから聞いていたにせよ、急に出て来て、一回も練習すらした事もない荒技をいきなり成功させるなんてあり得ない。神ワザ以上である。これも前述したサーキットの練習で、マックィーンが何度もこれをやって手本を見せるなりの伏線を張っておくべきだろう。

何度も言うが、テーマとしては悪くない。CGは相変わらずクオリティは高いし、お話も終盤までは見応えがある。
だが、最後の詰めを誤った事で、せっかくそこまでは面白かった物語がすべてぶち壊しとなった。あのラストはもっと何度も脚本を練り直し、それでも納得行く出来にならなければ、本来のマックィーンが逆転勝利する王道パターンに戻すべきだったと思う。中途半端なままで完成させた事が悔やまれる。

 
製作総指揮としてクレジットされているジョン・ラセターは、果たしてどこまで作品作りに係わったのだろうか。次々作られる他のディズニー・アニメの製作総指揮に忙殺されて、本作にはあまり係われなかった気がしてならない。ちゃんと参加してたなら、こんなダメ脚本にはOKを出さなかっただろうに。

それにしても最近のピクサー・アニメ、続編ものが多すぎやしないか。ここ数年でも「モンスターズ・ユニバーシティ」「ファインディング・ドリー」それに本作があり、この後「Mr.インクレディブル2」「トイ・ストーリー4」が控えている。「トイ・ストーリー3」はまだしも、「モンスターズ-」「ファインディング-」はいずれもつまらなかった。ちょっと心配である。

「ミニオン」シリーズや「シング/SING」などで最近勢いのある新進・イルミネーション・スタジオ等の台頭で、老舗のピクサー・スタジオも存在が脅かされている、という現状が本作のテーマに反映されている、とすればまことに皮肉と言うほかない。   (採点=★★★

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DVD「カーズ」(1作目)

 

DVD「カーズ2」

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コメント

ジョン・ラセターがプレイヤー(ディレクター)をやめ、サポート(製作側)に回ったという話がそのまま脚本になってるとすると、ストームって誰だ? ディズニー本社の作品群のメタファーとかか?

投稿: ふじき78 | 2017年8月17日 (木) 01:16

◆ふじき78さん
あ、なるほど。
言われてみれば、1作目、2作目ともジョン・ラセターが監督してましたが、本作では若いブライアン・フィーに監督を譲って本人は監督引退とか言ってるようです。
そうしたラセターの心情がストーリーに反映されてるというのは当たってるかも。
ストームは…これは上にも書きましたが、多分「ミニオン」シリーズが大当たりしてピクサーの牙城を脅かしてるイルミネーション・エンタティンメント社のメタファーじゃないでしょうかね。
ちなみにイルミネーションの最新作「ミニオン大脱走」は興行成績で4週連続1位なのに対し、「カーズ/クロスロード」は4週目ではや10位圏内からも陥落、と、興行レースでも「ミニオン」に惨敗してますが、ラセターはこうなる事も予見してたんでしょうかねぇ。

投稿: Kei(管理人) | 2017年8月17日 (木) 22:48

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