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2017年12月24日 (日)

テレビ「トットちゃん!」

Tottochan_2
テレビ朝日系で放映されていた連続ドラマ「トットちゃん!」が12月22日、最終回を迎えた。

私はテレビドラマはほとんど見ないが、前回本ブログで書いたように、倉本聰脚本の「やすらぎの郷」をずっと録画して見ていて、その際にセットした同じ時間帯(平日午後0時30分~)での自動録画予約をそのまま放っといたので、あまり見る気はなかったのだが、ほぼ成り行きで(笑)、その後番組のこれも再生して見る事になった。

が、予想に反して、これは面白く、いつの間にやら「やすらぎの郷」と同じくらい熱心に「トットちゃん!」にハマってしまったのである。

なぜそんなに面白かったかと言うと、ほぼ実在の人物がそのまま実名で登場する実話であるはずなのに、登場人物のキャラクターや人生の歩みが、フィクションのドラマ以上にとても面白くてドラマチックだからである。

徹子の母、黒柳朝さんは、とても行動的でまっすぐな生き方をする方で、どんな困難な時でもクヨクヨ悩まない。徹子が小学校を退学になった時でも、すぐにトモエ学園を探し出し、徹子の未来を大きく切り開いたし、戦後の混乱期には青森⇔東京間を行商で往復して稼いだ金で東京の家を建て直したほどの、いわゆる肝っ玉かあさんである。

その夫の守綱は、著名なバイオリニストで新交響楽団のコンサートマスターも務めた芸術家だが、朝に出会っていきなり結婚を申し込み、朝を愛するあまりに毎日つんのめりながら走って帰って来るので、靴先だけが磨り減っていたり(笑)、妻が家から出るのが心配なのでカギをかけて家に閉じ込めたり、ユニーク、というかかなり変人?である。

その二人の間に生まれた徹子も、かなりユニークな子供である。
好奇心旺盛で、小学校の授業中に、窓の外を通るチンドン屋に話しかけたりリクエストしたり、燕に話しかけたりと、先生の授業をまるで聞かない。とうとう小学校側から、授業を妨害するこんな子はこの学校に置けません(つまり退学勧奨)と言われてしまう。今で言う落ちこぼれである。

物語は、この徹子が、さまざまな人に出会って救われ、教えられ、戦前戦後をたくましく生き、NHKに入社して、ここでも落ちこぼれかけた所を救われて、やがてテレビ創生期から現代まで、テレビの歴史と共に歩んだ半生記を笑いと涙と感動で描いて行く。

黒柳徹子の人生に関しては、トモエ学園時代の幼少期を振り返ったベストセラー「窓際のトットちゃん」、テレビ時代は「トットチャンネル」という自伝エッセイがあり、また母の朝さんに関しては朝さん自身の著作「チョッちゃんが行くわよ」がある。本作はこの3つの自伝をベースにしているが、「トットチャンネル」は大森一樹監督により映画化され、また昨年もNHKで「トットてれび」の題でドラマ化されたばかり。「チョッちゃんが行くわよ」もNHKの朝ドラで「チョッちゃん」の題でドラマ化されている。

それぞれ読み応えがあるし、また映画化、ドラマ化されたものも基本的には原作をそのまま使っている。従っていずれもある一時期、または特定の主人公を中心にしたものであった。また「窓際のトットちゃん」は本人の意向もあってこれまで映像化はされて来なかった。

本作はその点、初めて黒柳徹子の誕生から近年までを通してドラマ化したという点でも意義があるが、これによって、黒柳徹子というユニークな人間を形作ったのは、その生涯の転機において、常に徹子を理解し、導いてくれた人物が何人もいた、という不思議なめぐり合わせを改めて強く感じる事が出来た。

小学校を退学になった時にトモエ学園に入園させてくれ、個性を尊重し育んでくれた小林宗作校長先生(竹中直人)。NHKの面接で、その個性を見抜いて合格に導いたNHK職員・大岡龍男(里見浩太朗)。そしてラジオドラマ「ヤン坊ニン坊トン坊」の、オーディションで、変な声を気にする徹子に「あなたはそのまんまでいてください」と言って声優に抜擢した飯沢匡(高橋克典)。
これらの人たちが一人でもいなかったら、今の黒柳徹子はいなかったと思うと、感慨深いものがある。まさにフィクション以上にドラマチックで、ちょっと感動した。

そして教育、人材育成というものは、教えるべき相手が潜在的に持っている個性・能力を認め、発掘し、伸ばしてあげる事が如何に大切か、という事が、このドラマを見ればよく分かる。教育とは何か、というテーマも内在している。

これで思い出すのが、三船敏郎が東宝のニューフェイス募集の面接で、ぶっきらぼうで横柄な態度を取ったので危うく不合格になりかけた時、面接官の山本嘉次郎やその場にいた高峰秀子らが、「面白いから採ってみては」と強く押して合格に至ったというエピソードである。
これも、表からは見えないが、三船が醸し出す強烈な個性を山本が感じ取ったからこそで、もしこの場に山本がいなかったら、後の日本を代表する国際的スター・三船敏郎は誕生していなかったかも知れない。

徹子も三船も、もしかしたら運命の女神が二人に手を差し伸べたのかも知れない。

 
登場人物はほとんどが実名であるのもいい。徹子の自伝に出てくる名前がそのまま使われているので話が分かり易いし、後半では渥美清、森繁久弥、向田邦子、沢村貞子、野際陽子といった、徹子にゆかりのある人々が次々登場してそれぞれの人物の人柄、交流ぶりなども丁寧に描かれている。
渥美を「お兄ちゃん」と呼び、沢村貞子とその夫の大橋恭彦を「母さん」「父さん」と呼んでいた、というエピソードに、徹子の人心掌握術の巧みさ、人間としての懐の深さを感じさせて興味深い。

渥美清を演じた山崎樹範が、顔の造りも話し方もそっくりだったのには笑いかつ感動した。野際陽子役を、野際の娘の真瀬樹里が演じているのも粋な配役である。
が、1点、森繁久弥役をマッチこと近藤真彦が演じていたのは興醒め。ミスキャストも甚だしい。まるで森繁に似てないだけでなく、貫禄やスケベさといった森繁の個性もまったく表現出来ていない。NHKの「トットてれび」では吉田鋼太郎が森繁を演じていたが、こちらはピッタリだっただけに、せめてこれくらいの役者を起用すべきである。
本作の唯一の欠点である。

ただすべて実名という訳ではなく、トモエ学園の同級生やNHKからテレビ朝日まで徹子と縁があった久松ディレクター(三宅健)、後に徹子と40年にわたって深い愛を交わした天才ピアニスト、カール・祐介・ ケルナー(城田優)などは実在の人物とは違う名前である。
徹子さんにそんな隠れた恋人がいたとはまったく知らなかったが、どうやら事実のようである。終盤はほとんど、徹子と祐介のラブストーリーになっていて、これまたドラマチックで見応えがあった。

しかし、こんな壮大で長い年月の物語を、たったワンクール、60話で語るというのは短か過ぎる。とことどころ駆け足になったり、いきなり話が飛ぶ所もあったりで、やはりもう少し時間をかけるべきではなかったか。「やすらぎの郷」と同じく2クール・6ヶ月にしたらもっといろんなエピソードを入れられたのに(例えば本作ではバッサリカットされていた、ユニセフ親善大使の事も描いて欲しかった。これも間違いなく黒柳徹子の大切な人生の一部なのだから)。

Totto2最後になるが、徹子を演じた清野菜名が素晴らしかった。中学生の15歳から、熟年(渥美清の死去も登場するから60歳半ばくらいか)までを演じ、後半はしゃべり方や扮装まで、まったく黒柳徹子がそこにいるようだった(ただ徹子も母の朝(最後の頃は80歳半ば)も年齢の割にフケていないのはご愛嬌)。

子供時代を演じた豊嶋花ちゃんも含めて、本当にお疲れ様でした。

 
とにかくこの3ヶ月、「トットちゃん!」が毎日楽しみで、終わってしまってまたまた“トットロス”になりそうである(笑)。

ちなみに来年からの次回作は「越路吹雪物語」。テレ朝お昼の連続ドラマ、2作続けて好調だっただけに、うーん、一応予約録画しておくか。

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(蛇足)
NHKの「トットてれび」で徹子を演じていたのは満島ひかり。園子温監督の「愛のむきだし」で大ブレイクし、今や若手の実力派である。

で、清野菜名も園監督の「TOKYO TRIBE」で」抜擢され、健康的ヌードやこちらもパンチラ・アクションを見せて、やはりこの作品をきっかけに飛躍した。

黒柳徹子を演じた二人の女優が共に園子温監督作で注目されたという共通性があるのも面白い。

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コメント

書き込み有難う御座いました。レスは当該記事のコメント欄に付けさせて貰いました。

自分も「やすらぎの郷」を見ていた流れで、此のドラマを見始めました。黒柳さんの書かれた本は何冊か読んでいたし、テレヴィ放送の黎明期の様子や今は亡き有名人達との逸話も其れ形に知っておりましたので、正直余り期待していなかったのですが、いやあ面白かった。黒柳さんの幼児期、そして少女期以降を演じた女優が其れ其れ魅力的な演技をしていたし、他の配役(寅さんなんぞはピッタリ!)も森繁氏以外は良かった。(近藤真彦氏は全く駄目。恐らくは私生活で彼と黒柳さんが仲が良いので、其れで選んだのではないかと深読みしていますが。)

又、幼児期の黒柳さん、ああいう子供は“普通の教育”では排除されてしまい勝ちだと思うんです。“一般的な価値観”で言えばそうなってしまうのですが、でも「君は、本当は良い子なんだよ。」と“個性”を大事にした園長先生が居たからこそ(NHK内にも、彼女の個性を尊重する人が何人か居たし。)、彼女は大スターに成り得た。そう思うと、改めて個性を尊重し、多様性を認める事の大事さを思い知らせる作品でしたね。

投稿: giants-55 | 2018年1月 9日 (火) 00:35

◆giants-55さん
書き込みありがとうございます。
森繁役の近藤真彦起用は、私も多分そうじゃないかと思いました(笑)。もしそうだとしても、局内で「そりゃちょっと」と異議を唱える人がいなかったとしたら、それも問題ですけどね。

ところで、後番組として「越路吹雪物語」が始まりましたので、またつい見てしまいましたが(笑)。
うーん、作りが「トットちゃん」とほぼ同じ。子供時代に授業中に窓の外に気を取られて授業を聞いていないという性格までほとんど同じ。
もう少し見てみないと結論は出せませんが、「トットちゃん」ほど面白い作品ではなさそうです。まあ前作が面白かったのは、黒柳さんも彼女を取り巻く周辺の人たちも、他に例を見ない極めてユニークな人たちばかりだったからなんですがね。

投稿: Kei(管理人) | 2018年1月11日 (木) 23:25

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