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2018年4月30日 (月)

「レディ・プレイヤー1」

Readyplayerone2018年・アメリカ/アンブリン・エンタティンメント=ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ
配給:ワーナー・ブラザース映画
原題:Ready Player One
監督:スティーブン・スピルバーグ
原作:アーネスト・クライン
脚本:ザック・ペン、アーネスト・クライン
製作総指揮:アダム・ソムナー、ダニエル・ルピ、クリス・デファリア、ブルース・バーマン

1980年代のポップカルチャーを盛り込んだアーネスト・クラインによる小説「ゲームウォーズ」を映画化したSFアクション。監督は「ペンタゴン・ペーパーズ   最高機密文書」のスティーヴン・スピルバーグ。出演は「X-MEN:アポカリプス」のタイ・シェリダン、「ぼくとアールと彼女のさよなら」のオリヴィア・クック、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」のベン・メンデルスゾーン、「スター・トレック BEYOND」のサイモン・ペッグ、「ダンケルク」のマーク・ライランスなど、若手と実力派のベテランが終結した。作中のゲーム世界には、アメリカはもとより日本のアニメやゲームに由来するキャラクターやアイテムなどが多数登場する。

西暦2045年。貧富の差が激しくなった世界では、多くの人々が荒廃した街に暮らしていた。そんな世界で若者たちが楽しんでいたのが、世界中の人々がアクセスするヴァーチャル・ネットワークシステム“オアシス”。誰もが別人のアバターとなって理想の人生を楽しめるのだ。ある日、この仮想世界を開発し、巨万の富を築いたジェームズ・ハリデー(マーク・ライランス)が死に、オアシスに隠された3つの謎を解き明かした者にすべての遺産を譲り渡すというメッセージを発信する。17歳の少年ウェイド(タイ・シェリダン)は、謎の美女アルテミス(オリヴィア・クック)らと共にこの争奪戦に参加する。だが、その過酷なレースを支配しようと、巨大企業IOI社が密かに陰謀を張り巡らしていた…。

本作は、ヴァーチャル・ゲームの世界がテーマである。私はビデオ・ゲームはやらないし、むしろ嫌い。そんな物にハマっている人を見たら、「現実世界に戻りなさいよ」と忠告したくなる。
そんなわけで、原作にも興味はなかったし、作品内容を聞いても、こりゃあんまり見たくない種類の作品だなと思った。スピルバーグが監督してるから(これまでスピルバーグ監督作はリアルタイムで全部観ている)、期待出来ないけどまあ観ておくか、という程度の気分だった。

だが、予告編でちょっと興味を惹かれた。なんとアイアン・ジャイアントがチラッと出てくるし、キング・コングらしき怪獣が摩天楼を飛び回っている。どちらも私にとってはとても思い入れ深い作品。その他にも'80年代にヒットした映画のキャラクターがわんさか登場しているらしい。これは面白くなりそうだと思った。

(以下ネタバレあり)

 
いやあ、楽しい。出てくる出てくる、デロリアンにAKIRAバイク、やっぱりアイアン・ジャイアント、キング・コングは予想以上に暴れてくれる。一瞬、バットマンやチャッキー人形も登場するし、中盤ではキューブリック「シャイニング」の盛大なオマージュというか引用、ついでに三船敏郎オマージュもあるし、後半には伊福部昭のゴジラ・テーマに乗ってメカゴジラも登場、対決するはガンダム…と、登場する'70~80年代の日本発も含むSF、ホラー、アニメの引用の多さにあれよあれよと驚嘆するばかり。もう、ゲップが出るくらいに楽しませてもらった。
あまり書いてる人は少ないけれど、ビー・ジーズの名曲「スティン・アライブ」に乗ってディスコ音楽映画の名作「サタデー・ナイト・フィーバー」(1977)のパロディが登場したのにはニンマリした。
しかし、“バカルー・バンザイ”まで登場したのには口アングリ。これ知ってる人、どれだけいるだろうか(笑)。

実はアーネスト・クラインの原作には、その'70~80年代の映画界を牽引したスピルバーグ作品へのオマージュが一杯出て来るらしいのだが、さすがに自身の作品を引用するのは気が引けたのか、それらはほとんどカットされている。おそらくはスピルバーグ自身も、この原作を他人に監督させたら多分スピルバーグ・オマージュだらけになりそうなので(実際、スピルバーグ作品抜きで'80年代カルチャーは語れないだろう)、他人に監督させたくないと思っただろう。

そんなわけで、本作は、VRゲームを描いた作品と言うよりは、そのもの凄い量の作品引用によって、'80年代に青春を送った、あるいは'80年代ポップ・カルチャーの洗礼を浴びた人たちには懐かしく、思い出に浸れる作品になっている。そんな人たちには絶対お奨めの作品である。

 
しかし本作は、そうした'80年代ポップ・カルチャーを単に懐かしむだけの作品ではない。

映画には、“オアシス”の遺産を利用して莫大な利益を上げようと画策する巨大企業IOI社という悪役が登場する。この悪役は仮想世界の中の悪ではない、現実世界の中で企業活動をする会社である。
ウェイドたちはVR世界の中で、悪のキャラクターと戦いながら、現実世界でも追って来るIOI社の連中と戦い、そしてVRの中の世界でも、現実世界においても見事に勝利するのである。
主人公たちは、決してVRの仮想現実世界に逃避しているわけではない。VRの世界も楽しいけれど、現実とも向き合わなければならない事を自覚する。

オアシスの創造者ハリデーも、死を迎えた時に初めて、「現実こそが、リアル」だと悟ったと語っている。

VRの世界は、ちょうど我々が映画を観るのと同様、いっときの息抜きで楽しむものであって、我々が映画を観終われば、また現実世界に戻り、そこで働き、生活し生きて行く。そうでなければならないのだ。

だから我々はこの映画についても、観ている間は世間の憂さを忘れて作品世界に没頭し、オマージュを楽しんでも一向に構わないが、観終わった後は、現実世界に向き合い、この世界が抱える矛盾を見つめ、未来を我々はどのように変えて行くべきなのかを真剣に考えるべきなのである。

それは、本作とか「インディー・ジョーンズ」シリーズのような、映画オマージュ満載の楽しい娯楽作品も作れば、一方で「シンドラーのリスト」「ミュンヘン」「ペンタゴン・ペーパーズ」のような、現実世界の残酷さ、厳しさ、問題点にもきちんと向き合った映画をこれまで作り続けて来た、スピルバーグだからこそ、説得力を持つのである。

そういう意味では、本作はスピルバーグ監督でなければ、秀作にはなり得なかったであろうし、ボコボコに叩かれていたかも知れない。つくづく、凄い映画作家だと思う。

 
思えば、1970年代以降現在に至るまで、常に映画界の最前線を突っ走って来たのが天才、スピルバーグである。監督としても、プロデューサーとしても数多くの映画史に残る傑作、映画の歴史を変えるような革新的な話題作を世に送り出して来た。世界歴代興行収入1位の記録を自身で2度も更新するし、アカデミー作品賞も監督賞も受賞したし、あらゆる名声を得かつ巨万の富も築いただろうし、多くの映画ファンから熱烈に支持されて来た
まさに本作のオアシスの創業者、ジェームズ・ハリデーを思わせる人生である(笑)。

その彼も早や71歳。昔なら老人であり隠居の歳である。やりたい事もやり尽くしただろうし、普通ならもう映画界を引退して悠々自適の余生を送ってもいい年齢である。

だが、その製作意欲は今も衰えを知らない。2010年代に入っても「戦火の馬」(2011)、「リンカーン」(2012)、「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015)、そして本年の「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」と、なんと4度もアカデミー作品賞にノミネートされている。「ペンタゴン-」なんて本作撮影の合間に並行して撮り上げている。スーパーマンか(笑)。

この先、どこまで我々はスピルバーグ作品を観る事が出来るだろうか。いつまでも元気で、これからも我々を楽しませ、驚かせて欲しいと心から望みたい。    (採点=★★★★☆

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コメント

スピさん若い奴向けの映画まだ撮れるなんてかっけーよ(いや、失敗作もそこそこあるけど)。今作は絶対の成功作。でもスピさんばっかじゃなく、もっとこう、その頃の人がポコポコ若い映画作ってほしいね。ジェームス・キャメロンなんてもうアバターから手を引いてほしいわ。これからアバター3本も4本も作られてもなー。

投稿: ふじき78 | 2018年5月 3日 (木) 23:18

3回目の鑑賞で多分誰も覚えてない「銀河伝説クルール」ネタを発見して、あまりの守備範囲の広さに思わず苦笑しましたw

投稿: ノラネコ | 2018年5月11日 (金) 22:05

◆ふじき78さん
>スピさんばっかじゃなく、もっとこう、その頃の人がポコポコ若い映画作ってほしいね。

いやあホント、いつまでスピルバーグに天下取らせてる気だ、他の監督、しっかりせよ!と言いたいですね。
もうほとんど使われなくなりましたが、スピルバーグと同世代の監督たちを指して、「ハリウッド第9世代」と呼んでた事がありました。マーティン・スコセッシ、ジョン・ミリアス、トビー・フーパー、ジョージ・ルーカスといった面々です。
フーパーは死去し、ミリアスはすっかり忘れ去られ、ルーカスも自身のルーカス・フィルムをディズニーに売っぱらって隠居状態だし、スコセッシは巨匠づいちゃって若い人向け映画なんて関心なさそうだし…。
オマージュ、パロディ満載映画と言えばスピルバーグ門下生のジョー・ダンテの「ルーニー・チューンズ:バック・イン・アクション」(2003)があり、私は楽しみましたが、興行的に惨敗し、以後ダンテ監督、どうも精彩がありません。聞くところでは、低予算ホラーやテレビドラマの監督しか仕事がないとか。
てなわけで、まだしばらくはスピちゃん天下が続きそうです。


◆ノラネコさん
「銀河伝説クルール」もありましたか。多分まだまだありそうですね。
「これも見つけたぞ」と言って自慢するのも映画ファンの特権ですね(笑)。
DVDでじっくり見直せば、まだまだいろいろ発見出来るかも。あー発売待ち遠しい(笑)。

投稿: Kei(管理人) | 2018年5月20日 (日) 14:55

こんばんは。

夢の技術と、「オアシス」のその呼び声は高いですが、その中身は、今までサブカルの世界で、慣れ親しんできたお約束のキャラで、それを結集した処に、この世界の凄みがあると思いました。

こんなに楽しいサブカルを活かさない手はない、という着想で、マニアのみならず、サブカルは普遍的だという事ですね。各キャラへの思い入れは個人差があると思いますが、誰もが、お馴染みのキャラの良さを再発見出来る、出逢いのゲームですね。キャラ同士が一つの物語の中で出逢い、その魅力を増し、人もまた出逢う、という、オアシスが楽園都市たるゆえんは、その出逢いの多さにあるのでしょう。

僕もゲームはあまりやりませんが、SNSの認識が広まって、出逢いの機縁が増えるのは良い事だと思います。

投稿: | 2018年6月14日 (木) 19:34

◆隆さん
なるほど、「オアシス」は、ゲーム自体も、参加者も“出逢い”を楽しむもの、という事ですか。
ブログでも、TBやコメントを通して、私もいろんな方々と出逢う事が出来ましたし、それは一理ありますね。
お互い、こういう出逢いは大切にしたいですね。これからもよろしく。

投稿: Kei(管理人) | 2018年6月22日 (金) 23:16

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