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2019年10月20日 (日)

和田誠さん追悼

Wadamakoto イラストレーター、他多彩な芸術活動で知られる和田誠さんが、10月7日、肺炎の為亡くなられました。享年83歳でした。

もの凄くショックです。大ファンでした。和田さんが関わった本や映画はほとんど読んだり観たりしています。

和田さんは、本業はイラストレーター、グラフィックデザイナーですが、映画が大好きで、映画に関するエッセイ等著作も多く、そのどれもが読んでてとても楽しくて、読み終えてもほっこりした気分になります。またいろんな方々との対談本も多く、さらに記憶力も素晴らしくて、対談の中で、観た映画に関する監督や出演俳優、ちょっとしたエピソード等についても、実に細かく覚えていて感心します。

本業のイラスト、グラフィックデザインに関しても、そのジャンルは実に広く、映画ポスター、広告デザイン、週刊誌の表紙、絵本、似顔絵、書籍の装丁、挿絵まで手掛け、その他に、アニメーター、映画監督としても大活躍され、さらになんと海外ミステリーの翻訳(スチュアート・カミンスキー原作「 ロビン・フッドに鉛の玉を」、「虹の彼方の殺人」)まで手掛ける多才ぶり。その守備範囲の広さには敬服するばかりです。

和田さんの描く似顔絵がまたいいのですね。シンプルな最小限の線だけで、実に見事に特徴を捕え、すぐに誰か分かります。

キネ旬に長く連載していた、映画の名セリフに関するイラスト入りエッセイ「お楽しみはこれからだ」も楽しい読み物です。そこに描かれた映画人の似顔絵が実によく似ていました。

Wadamakoto2_20191020013601 書籍の装丁に関して一言。私が大好きで尊敬するライター、作家は、映画評論家では小林信彦、山田宏一、森卓也、劇作家では三谷幸喜といった方々ですが、なんとこれらの方々が書いた本の装丁の多くは、いずれも和田さんが手掛けています。
多分、和田さんもこの方々の本がお好きなのでしょうね。この点でも和田さんに親近感を抱いています。まあ他にも数多くの装丁を手掛けてはいるのですが。

対談本も沢山ありますが、1対1、あるいは3人鼎談のお相手がまたいいチョイスです。山田宏一(「たかが映画じゃないか」「ヒッチコックに進路を取れ」)、三谷幸喜(「それはまた別の話」、「これもまた別の話」)、川本三郎+瀬戸川猛資(「今日も映画日和」)と、こちらも私の大好きな方々ばかり。

和田さんのエッセイや対談の本を読むと、映画を観る楽しみが倍化します。映画っていいな、映画ファンで良かったなぁと思わせてくれます。

Wadamakoto4 映画監督としても、「麻雀放浪記」「快盗ルビイ」「怖がる人々」「真夜中まで」の4本の長編を監督していますが、どれも基本をきちんと踏まえた正攻法の作りで、プロの監督の顔色なからしめる、良質のエンタティンメントとして完成されています。多分かなり映画作りを研究したのでしょうね。本当に和田さんは天才です。

個人的な事を言いますと、私は学生時代から和田さんのイラストに感銘を受けて、一時本格的に和田さんのようなイラストレーターになりたいと思っていた時があります。
和田さんのタッチに似せて似顔絵やイラストを描いてみたのですが、どうしても和田さんの描くような作品には足元にも及ばず、イラストレーターの夢は断念しました。

Wadamakoto2 その後社会人となってしばらくして、映画ファンが嵩じてマニアックなミニコミ誌を発刊した時、和田さんの「お楽しみはこれからだ」をパロって、映画で見つけたパロディ・オマージュに関するエッセイ「お楽しみはこれっきりだ」をそこに連載しました。レイアウトから似顔絵、字体まで真似てみました。
ちなみに、ペンネームの“和入田仁”も和田さんの名前のもじりです(“わいるだ・じん”と読みます(笑)。これもパロディ)。
Wadamakoto3恥ずかしながら、そのうちの一部を転載します(右)。クリックすると拡大されます。
これは後にHPを立ち上げた時にも一部掲載しました。

この和田さんの「お楽しみはこれからだ」は多くの人に影響を与えているようで、三谷幸喜さんも似顔絵を模写したり、筆跡まで似せようとしたそうです。
また、漫画家のみなもと太郎さんも、私と同じように「お楽しみはこれからだ」のレイアウトをそっくり真似た「お楽しみはこれもなのじゃ」を週刊誌に連載していました。
タイトルの左側にアルファベットをサブタイトル的に並べるのも同じ体裁ですが、そこには"WADAMAKOTOSAN GOMENNASAI"と書かれてました(笑)。

そのくらい、和田さんの描くイラストと文章は、多くの人に愛され、リスペクトされていたわけですね。

週刊文春の表紙絵も40年以上にわたって描かれて来ましたが、実は昨年辺り(?)から新作が途絶えて、アンコールと称して過去の表紙絵の再掲載になっていたのがちょっと気がかりでした。そう言えば朝日新聞に三谷さんが連載している「ありふれた生活」に毎回和田さんが描くイラストが載っていたのですが、これも2年半ほど前からイラストではなく、小さなカット絵になっていました。ひょっとしたら体調が思わしくないのでは、と心配していたのですが、訃報を聞いて、その心配が的中したようです。的中して欲しくなかった。とても悲しいです。

和田さんの残した足跡は、とてつもなく大きなものでした。もうこんな、絵も文章も味わい深く、温かみがあり、心豊かになれる作品を描けるイラストレーター(と言うよりクリエイター)は出て来ないのではないでしょうか。謹んで冥福をお祈り申し上げます。

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コメント

和田さんは私も大好きな方なので、お気持ち良くわかります。
人の生き死にばかりは人知の及ぶものではないですが、本当に残念です。
映画に関して一番影響を受けたのはやはり小林信彦ですが、和田さんの影響も大きいです。
和田さんの作品で一番好きなのは「倫敦巴里」ですが、パロディという事で絶版だった本作が増補版で先日刊行され、まだまだお元気かと思っていたのですが、、
ご冥福をお祈りします。

投稿: きさ | 2019年10月20日 (日) 21:26

和田さんの描かれるイラストは、一目で同氏の物と判る程、実に個性的な感じでしたし、絵からほんわかとした温かみが伝わって来る物でした。本当に残念です。合掌。

投稿: giants-55 | 2019年10月24日 (木) 02:08

◆きささん
おお、きささんも小林信彦ファンですか。小林さんは一時病気で倒れられとても心配したのですが、元気に復活で何よりです。週刊文春の連載は欠かさず読んでいます。
「倫敦巴里」私も大好きです。まあ和田さんの本は全部大好きで甲乙つけられないのですが。改めて本棚から和田さん著作の本を引っ張り出して読み返している所です。
何度読んでも、読み応えありますね。本当に残念です。


◆giants-55さん
和田さんのお描きになるイラスト、本当に温かみがあって、見てるだけで心が和みますね。
何より残念なのは、今後は三谷幸喜さんや丸谷才一さんをはじめとして、多くの方の本に和田さんの装丁が見られなくなる事です。次の装丁をなさる方、どなたがなっても大変ですね。そんな心配までついしてしまいました。

投稿: Kei(管理人) | 2019年10月24日 (木) 23:22

小林信彦、復活して何よりでした。週刊文春のコラム私も欠かさず読んでいます。
今週は、和田誠さん追悼でそちらに寄稿されていてコラムはお休みでした。
私も「お楽しみはこれからだ」は大好きで一時期日記やSNSに映画の名セリフを載せていたりしました。

投稿: きさ | 2019年11月 9日 (土) 12:10

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