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2019年11月26日 (火)

「ターミネーター ニュー・フェイト」

Terminatordarkfate 2019年・アメリカ/スカイダンス=20世紀フォックス=パラマウント
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題:Terminator: Dark Fate
監督:ティム・ミラー
原案:ジェームズ・キャメロン、チャールズ・イグリー、ジョシュ・フリードマン、デビッド・ゴイヤー、ジャスティン・ローズ
脚本:デビッド・ゴイヤー、ジャスティン・ローズ、ビリー・レイ 
製作:ジェームズ・キャメロン、デビッド・エリソン
製作総指揮:ダナ・ゴールドバーグ、ドン・グレンジャー、エドワード・チェン、ジョン・J・ケリー、ティム・ミラー、ボニー・カーティス、ジュリー・リン

SFアクション「ターミネーター」シリーズの通算6作目で、シリーズ生みの親ジェームズ・キャメロンが製作に復帰した、「ターミネーター2」の正統な続編。監督は「デッドプール」のティム・ミラー。出演はシリーズ「1」「2」でサラ・コナーを演じたリンダ・ハミルトン、同じくターミネーターT-800を演じたアーノルド・シュワルツェネッガーの他に、「タリーと私の秘密の時間」のマッケンジー・デイヴィス、「ザ・ボーダーライン 合衆国国境警備隊」のガブリエル・ルナ。

メキシコシティの自動車工場で働く21歳の女性ダニー(ナタリア・レイエス)の元にある日、未来から最新型ターミネーター、“REV-9”
(ガブリエル・ルナ)が現れ、彼女の命を狙う。そこに同じく未来からやって来た強化型兵士グレース(マッケンジー・デイヴィス)が現れ、ダニーを守るためにREV-9と壮絶な戦いを繰り広げる。かろうじて工場から脱出したダニーたちをREV-9はどこまでも執拗に追って来るが、その先に、かつて人類を滅亡の未来から救ったサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)が現れ、REV-9とも激しい死闘を繰り広げる。ダニーとグレース、サラの3人は、サラにターミネーター情報の謎のメールを送って来る相手を探し、国境を越えてアメリカ・テキサスに向かうのだが…。

「ターミネーター2」の後、ジェームズ・キャメロンは「ターミネーター」の著作権を手放した為、大ヒット・シリーズという事もあって次々といろんな会社に権利が渡り、続編が作られて来た。

とは言え、「2」でスカイネットは壊滅し、1997年の「審判の日」は回避された事になっているので、以後のシリーズはどれも内容的に苦しい。「3」でも「4」でも、審判の日は実は先延ばしされただけで、やっぱりやって来たり、前作「新起動/ジェニシス」(以下「5」)では、「1」と同じくカイル・リースが1984年にタイムスリップすると、そこは「1」とはまったく違う世界で、サラ・コナーは「1」とは違って既に闘う女戦士になっていたり。

“タイムマシンで向かった過去の世界は現在とは違う別の世界、すなわちパラレル・ワールドである”という説が半ば言い訳的に使われていて、だから“この物語の世界はキャメロンが描いたのとは別のパラレル・ワールドである”という事にしている。だから前作とは辻褄が合わなくても当然だ、と開き直って続編が作られて来たわけである。

そんなわけで、シリーズが作られるごとに、話がどんどん複雑に折れ曲がって、なんだか収拾がつかない状態になって来ている。

ジェームズ・キャメロンが久々に製作・並びに原案に復帰した本作は、そんなわけで、「3」「4」「5」はなかった事にして、「2」の正統な続編として、「2」のその後を描いてる。

(以下ネタバレあり、注意)

巻頭、いきなり驚かされるのは、「審判の日」を回避し、幸福に暮らしていたジョンとサラ親子の前に、またまたT-800型ターミネーターが現れ、ジョンが殺されてしまう事。

この世界ではスカイネットが壊滅し、未来に終末戦争も起こらないはずなので、ジョン・コナーを殺す意味はないはずだが、恐らくは「1」で未来のスカイネットが、1984年に送ったのとは別に、1998年の世界にも予備でもう1体のT-800を送っていたのだろう。1991年にT-1000を送ったように。

未来のジョン・コナーは、1984年にはカイル・リースを(「1」)、1991年にはチップを改造した善玉のT-800を(「2」)それぞれ送り込んでサラやジョンの抹殺を防止したのだが、1998年にも送られていた事は気付かなかったのだろう(と善意に解釈しておく)。

そして物語はそれから24年後に飛び、ここでも未来の救世主となるはずのダニーを抹殺すべくターミネーターREV-9が送られて来て、それを防ぐべく強化型サイボーグの兵士グレースが送り込まれて来る。

スカイネットは壊滅したはずなのに、何故またまたターミネーターが現れたかというと、実はスカイネット壊滅後の未来にも、別のAI=リージョンが開発され、それがまたも人類に反乱を起こしたのだ。

歴史は繰り返す。ジョンやサラの決死の努力も空しく、遥か未来ではスカイネットに代わるAIによって、またも人類は破滅の危機に直面してるわけで、人間少しは学習しろよ、と言いたくもなるが、「2」では人類の誰もAIにすべてを任せる事の危険性を深く考えないうちにサラたちがスカイネットを壊滅させてしまったのだから、これはまあ仕方ないだろう。

まあ「3」や「4」のように、審判の日が1997年より先延ばしされた、という苦しい言い訳(笑)よりはこっちの方がまだ説得力はある。

本筋としては、「1」のサラ、カイル・リース、T-800を、本作ではダニー、グレース、REV-9にそれぞれ置き換え、最新のVFXを駆使して、「1」とほぼ同じようなストーリーが展開して行く事となる。

ただ「1」では、狙われたのは、未来の救世主、ジョン・コナーの母親だったが、本作では救世主となるダニー自身が狙われるわけで、ここは「2」のパターン(ジョン自身がT-1000に狙われる)が取り入れられている。

面白いのは、未来の救世主も、その命を守る為未来から送られて来た者も、「1」ではどちらも男だったのが、新作ではどちらも女性になっている辺りが時代性を感じさせる。

サラ・コナーですら、「2」よりもさらに男まさりになって貫録が付いている。T-800の決めセリフ「アイル・ビー・バック」をサラが発したのには笑った。

で、シュワちゃんはどこに登場するかと言うと、サラに謎のメールを送って来る発信元を辿って、国境を越えてアメリカに渡り、テキサスの森の中の目的地に着くと、そこにいたのがシュワ扮する、あのジョンを始末したT-800だったのである。

なんとそのT-800は、ジョンを抹殺するという任務を完了して、もう目的がなくなったので、その後はこの世界で人間として生きる道を選び、人間の女性と結婚して家庭を築いていたのである。
そりゃまあ「2」で、ロボットでも学習し人間並みの感情を持つ事も出来る、という事が描かれていたので分からなくもないが、「2」のT-800が人間的な感情を持つに至ったのは、「ジョンを守れ」とプログラミングされていたせいで、ジョンとさまざまな感情の交流を経験する中でその感情が培われて行ったわけだから、1988年に登場した、「ジョンを抹殺せよ」とプログラミングされた冷酷無比なロボットが、そんなに簡単に人間界に順応するのだろうかとの疑問も湧く。

まあこれは、シリーズの顔であるシュワルツェネッガーを、ゲスト的扱いで登場させたお楽しみという事で、固い事は言わない方がいいのだろう。

ただ顔の皮膚がすっかり年寄りになっていたのは、「5」でも「皮膚は経年劣化する」と説明されていたので納得出来なくもないが、白髪交じりの無精髭まで生えていた(笑)のには苦笑せざるを得ない(ヒゲぐらい剃って出演しろよ)。ま、これも生身の人間だと偽る為にワザとヒゲを植毛した、という事にしておこう(なんだか苦しい言い訳(笑))。

そういう突っ込みどころもいくつかあるけれど、シリーズお約束のド派手なカーチェイスに、今回は飛行中の輸送機内での大アクション、敵ターミネーターも今回は「2」のT-1000液体金属特性に、スケルトン骨格と分離して2体で攻撃して来るという凄ワザが加わって、アクション部分は十分楽しめる出来になっている。

そしていいのは、未来において、ダニーに助けられたグレースが、地球を救う為のダニーの毅然とした戦いぶりに心うたれ、「この人の為に命を捧げよう」と決意する辺りで、これは「1」のカイルの思いとも重なり合って感動させられる。

ラストも、車で去って行くダニーとサラの姿が、「1」の、サラが車で旅立つラストシーンを思い起こさせ、ジンとさせられる。

そんなわけで、いろいろ不満はあれど、過去のシリーズの名シーンも巧みにリフレインされていて一種の集大成的な作品になっており、シリーズをずっと観て来たファンなら感慨深く、いろいろと楽しめる作品ではある。完成度においては残念ながら「1」、「2」には及ばないけれど。

アメリカにおける興行では前作同様苦戦しているようで、シュワも年取って、これ以上続編を作るのは無理だろう。

そういう意味で本作は、シリーズ産みの親、ジェームズ・キャメロン自身によって、シリーズ自体を文字通りターミネート(停止)させる作品、と考えるべきだろう。キャメロン、シュワルツェネッガー、ハミルトンお三方には、 長い間ご苦労様でした、と感謝の言葉をかけておきたい。   (採点=★★★★

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コメント

「3」でシュワが舞台挨拶する為、
会場の有明で妻と朝から8時間位
順番待ちしましたね。ただラストで
ガクッとした作品でもありましたが
そこから何か違う4,5作も公開…
本作「2」の正当な続編という事で
私的には満足な作品でした。
ダニーとグレースの関係も感動的。
ただこれ以上は続編どうなんでしょう?
私もターミネートかなと思います。

投稿: ぱたた | 2019年11月28日 (木) 11:53

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