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2019年12月21日 (土)

「映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!」

Shaun-the-sheep-movie_farmageddon 2019年・イギリス・フランス合作/アードマン=スタジオ・カナル
配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
原題:Shaun the Sheep Movie:Farmageddon
監督:リチャード・フェラン、ウィル・ベッカー
原案:リチャード・スターザック
脚本:ジョン・ブラウン、マーク・バートン
製作総指揮:マーク・バートン、 リチャード・スターザック、 ピーター・ロード、 ニック・パーク、 デビッド・スプロクストン、 カーラ・シェリー

「ウォレスとグルミット」で知られるイギリスのアードマン・アニメーションズによるクレイアニメ「ひつじのショーン」シリーズの「映画 ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム」に続く長編劇場版第2弾。監督は前作やTVシリーズのスタッフを務めていたリチャード・フェランとウィル・ベッカー。

イギリスの片田舎の牧場で、仲間たちとのんびり暮らすひつじのショーン。ある日突然、牧場の近くにUFOがやって来て、田舎町は大騒ぎとなる。そのUFOには超能力を持つ女の子の宇宙人・ルーラが乗っていて、ひょんなことから牧場に迷い込んでしまい、やがて出会ったショーンたちと仲良くなる。ところがルーラは宇宙に帰る方法が分からなくなってしまった為、ショーンと仲間たちは、ルーラを宇宙に帰そうと奔走する。一方、宇宙人探知省の捜査官、エージェント・レッドは宇宙人を捕まえようとルーラを追いつめて行く…。

「ウォレスとグルミット」シリーズからスピンオフした「ひつじのショーン」シリーズは、その後「ウォレスとグルミット」以上の人気者となって、テレビシリーズは4シーズンまで放映され、映画にも進出して劇場版も本作で2作目となる。前作「映画 ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム」は予想以上に面白い出来で、いろいろと映画オマージュもあり楽しめた。

前作で監督を務め、本作でも原案を担当したリチャード・スターザックは、チャップリンやキートン等が主演するサイレント映画からヒントを得たと語っており、登場人物はいずれもセリフを喋らず、パントマイムだけで物語が進行する。その分、動きだけで笑わせなければならず、脚本作りには相当の苦労を重ねたようだが、その甲斐あって、小さな子供から大人まで幅広い世代で楽しめる素敵な作品に仕上がっている。

(以下ネタバレあり)

本作はなんと、SFである。宇宙からUFOに乗ってエイリアンの少女・ルーラが地球に舞い降り、ショーンたちと仲良くなり、やがて宇宙に帰れなくなったルーラを帰すべくショーンたちが奮闘する話がメインとなる。

…といった具合に、本筋はまんまスピルバーグ監督の「E.T.」である。宇宙人を捕獲しようとする政府側エージェントもちゃんと登場する。また納屋に隠れていたルーラを誘い出す為ショーンがが食べ物の欠片(本作ではピザ)を投げるのだが、これも「E.T.」と同じ(あちらではチョコ)。

Shaun-the-sheep-movie_farmageddon3 逃げるショーンとルーラが乗った有蓋車がバウンドして宙に舞い、ホテルの外壁に描かれた月の絵を横切るシーンには笑ったね(右)。

「E.T.」以外にも、「2001年宇宙の旅」やら「未知との遭遇」やら、有名SF映画のパロディが次々登場。音楽まで「2001年-」で使われたあのクラシック名曲がそのまま登場するのには笑うやら感動するやら(「ツァラトゥストラ-」が流れるシーンもあの絵柄そっくりとなる)。
ルーラの両親が乗ったUFOの母船が降り立つシーンも「未知との遭遇」とそっくり。

そして政府側エージェントの服装が、サングラスに黒スーツ、とこれまた「メン・イン・ブラック」と同じ。このエージェントは女性で、名前がブラックならぬレッド(笑)。
ちなみにシリーズ最新作「メン・イン・ブラック:インターナショナル」では新人エージェントがこちらも女性だった。時代ですな。

宇宙人の子、ルーラのキャラデザインが、やや不気味なE.T.と違ってとてもカワイイのもいい。

Shaun-the-sheep-movie_farmageddon2

無論、シリーズおなじみの、トボけた牧場主や、主人に忠実な番犬ピッツァーの厳しい禁止令、それを出し抜いていたずら騒ぎを巻き起こすショーンたちと、いつものギャグと笑いも健在。
そんな厳しいピッツァーだけど、本当は心優しい性格のようで、終盤ではルーラを守る為、ショーンと力を合わせて活躍する辺りはちょっとホロッとさせられる。

ショーンたちの主人である牧場主がUFO騒動に便乗して牧場内に、宇宙をテーマにしたアミューズメントパークを作って一儲けしようと企むのだが、欲をかき過ぎて失敗し、あげくに新車で買ったトラクターをおシャカにされてしまうのは、身から出た錆とは言えちょっと気の毒。
そのパークの名前が" Farmageddon"(これが原題)。これは
"Farm"(農場)と「アルマゲドン」の合成語だろう。不吉な名前にするから、言わんこっちゃない(笑)。

まあそんな具合に、物語はシンプルだが、いろんなドタバタギャグに加え、ぎっしり詰め込まれた名作SF映画へのオマージュを見つけて楽しむ作品と言えるだろう。

シリーズ・ファン及びアードマン・アニメのファンなら無論おススメだが、小さな子供さんにも見せてあげたい、そして「E.T.」他古典的SF映画ファンならさらに楽しめる、クレイ・アニメの快作である。 
(採点=★★★★

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