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2020年3月15日 (日)

「星屑の町」 (2020)

Stardustoverthetown 2020年・日本/メディアプルポ=ヒコーキ・フィルムズ・インターナショナル
配給:東映ビデオ
配給協力:イオンエンターティメント
監督:杉山泰一
原作:水谷龍二
脚本:水谷龍二
製作:鍋島壽夫、植村泰之、與田尚志、有馬一昭、星野晴美、永森裕二
企画:林哲次、嶋田豪
音楽:宮原慶太 

1994年から25年に亘り全7作が上演された、地方回りの売れないムード歌謡コーラスグループを主人公にした人気舞台「星屑の町」シリーズの映画化。監督は「の・ようなもの のようなもの」の杉山泰一。出演は舞台版にも出ていた大平サブロー、ラサール石井、小宮孝泰、でんでん、渡辺哲らに、「この世界の片隅に」ののんが「海月姫」以来6年ぶりに実写映画に出演を果たす。

地方回りの売れないムード歌謡コーラスグループ「山田修とハローナイツ」。大手レコード会社の元社員・山田修(小宮孝泰)をリーダーに、歌好きの飲み仲間や売れない歌手が集まって十数年前に結成されたグループだが、これといったヒット曲もなく、ベテラン女性歌手のキティ岩城(戸田恵子)らと地方を回りながら細々と活動を続けていた。ある日、彼らは修の生まれ故郷である東北の田舎町を訪れる。そこには修との間に遺恨を抱える弟・英二(菅原大吉)が待っていた。一方、英二の息子・啓太(小日向星一)の幼馴染み・愛(のん)は、母が営むスナックを手伝いながら歌手になることを夢見ていた。そんな彼女が突然、ハローナイツに入りたいと言い出したことから、思わぬ騒動が巻き起こる…。

原作舞台は全く知らなかったのだが、1994年以来なんと25年もの間に7作も作られ上演されて来たのだと言う。メンバーを見れば、リードボーカルが大平サブロー、以下ラサール石井、でんでん、渡辺哲、有薗芳記とまあ何とも濃い顔ぶれ。このメンバー構成は25年間変わっていないのだそうだ。

Stardustoverthetown2

そして歌われる曲目が「宗右衛門町ブルース」「ほんきかしら」「新宿の女」「中の島ブルース」「恋の季節」と、レトロな昭和の歌謡曲ばかり。私も知ってる曲ばかりなので心が和んだ。

お話も、売れないコーラスグループ・山田修とハローナイツが東北の地方をドサ回り巡業している時に、歌手を目指す若い女の子が、グループに入らせて欲しいと直訴した事から巻き起こるちょっとした騒動が、地方ののどかな風景をバックにトボけたタッチで描かれる。

(以下ネタバレあり)

久しぶりの映画出演となるのんが、これまた久しぶり、「あまちゃん」以来の東北弁で頑張っている。最初はオジサンたちも相手にしなかったが、ギターで「新宿の女」を歌ったりと懸命のプロモーションにオジサンたちも根負けし、グループ参加が認められ、そして彼女が加わった事で、ハローナイツも徐々に人気が再燃、テレビに出たりPVを撮影したりと活躍の場を広げて行く。

今の時代、若い子が一人加わったくらいでムサいオジサン・グループが売れるとは思えないが、そこは映画、そんな夢があってもいいんじゃないかと思わせてくれる。

ラストも、人気者になった愛が、突然ハローナイツを退団し、若い男子グループに移籍してしまうのだが、やっぱり愛も現代のドライな若者だった、というオチがちょっとシニカルでほろ苦い。

続々登場する昭和歌謡曲のオンパレードには、私らのような中高年世代にとってはとても懐かしく、心が癒される。後述するが、昭和の一時期、こういった5~7人編成の男性による“ムード歌謡コーラス”が大ブームとなって、次々とコーラス・グループが誕生し、やがて消えて行った。本作のハロー・ナイツは、今ではほとんど絶えてしまった、そうしたムード・コーラス・グループへのオマージュにもなっている。当時、ムード歌謡を聴いたり、カラオケで歌ったりしていた人なら楽しめるだろう。

ただ、若い女の子の愛(のん)が、なんで藤圭子の「新宿の女」なんかを知ってるのかとかの疑問も残る。せめて祖父とかが藤圭子の大ファンで愛に歌を教えていたとかの伏線エピソードも入れておいたらと思う。

ともあれ、杉山泰一監督の演出は、デビュー作「の・ようなもの のようなもの」にも通じるのどかさとのんびり・ムードが漂う、まさに昭和ノスタルジー・ロマン溢れる作品に仕上がっている。たまにはこんなユルユル作品もあってもいいと思う。
ハローナイツが舞台で歌うシーンでは、カラオケ風に歌詞がテロップで出るのも楽しい。観客も一緒に歌っても可の特別上映をやっても面白いだろう。

50歳以上で、昭和歌謡、特にムード・コーラスに親しんだ方にはお奨めである。あと、キティ岩城を演じた戸田恵子さんの円熟した演技も見どころと言えようか。    (採点=★★★★

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(付記1)
ムード・コーラス・グループは、その草分けが昭和30年代から活躍していた和田弘とマヒナスターズである。「誰よりも君を愛す」が代表曲だが、後に「お座敷小唄」など、ムード歌謡に囚われない幅広い活動で息の長い人気を持続した。

そして昭和40年代に入ると、内山田洋とクール・ファイブが登場、「長崎は今日も雨だった」が大ヒット。以降、黒沢明とロス・プリモス、鶴岡雅義と東京ロマンチカ、敏いとうとハッピー&ブルー、ロス・インディオスとまさに雨後の筍のようにムード・コーラス・グループが続出、一時代を築いた。
やがては、殿さまキングス、平和勝次とダーク・ホースといったお笑いグループ、コミック・バンドまでもがそれぞれ「なみだの操」、「宗右衛門町ブルース」とムード歌謡を発表、これまた大ヒットとなった。

さすがにこれはバブルで、やがて飽きられ下火となり、実力のあるグループがかろうじて生き残ったが、昭和の終わりと共に終焉を迎えた。おそらく残った多くのグループは本作のハローナイツと同様、地方のドサ回りで糊口をしのいでいたと思われる。
まあ平成の時代は、ムード・コーラスだけでなく、歌謡曲自体もニュー・ミュージックやJ・ポップス、ジャニーズ系等アイドル・グループの台頭でほとんど売れなくなってしまったのだが。

ちなみに本作のハローナイツというグループ名は、“ー・ナイツ”(「ふりむかないで」のヒット曲で知られる)と、“秋葉豊とローナイツ”という2つのムード・コーラス・グループの名前を合成したと思われる。

(付記2)
Stardustoverthetown3 「星屑の町」と聞いて思い出すのが、三橋美智也が歌う同名のヒット曲。♪両手を回し~て、帰ろ~揺れながら~♪という歌詞は聴いた事のある方もいるだろう。同名の映画にもなった。松竹配給で、三橋自身が主演している。

私はてっきりこの歌も劇中で歌われるかと思っていたのだが、残念ながら歌われなかった。せめてエンドロールでも流してくれたら大喜びして一つおマケしたのだが(笑)。

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コメント

思いの外面白く見ました。さすが25年間舞台をやり続けているベテラン俳優・芸人さんたち、非常に間が良くて、爆笑してしまいました。王道のコメディー感満載な上に、それぞれの役の人格・個性もはっきり出ていてとても楽しめました。最後の締めが甘い(電車内で天野と再会はないだろう!但し愛の変心はギャグとしてあり)のと、カメラワークがとにかく雑なのが気になりましたが。のんもそのメンツの中で、間も乱れる事なく爆発力もあって良かった。正直、彼女の後半の歌は若干平板な気がするのですが、ただ最初の「新宿の女」だけはすごいです。説得力があって鳥肌ものでした。テアトル新宿ののん主演二本立て、堪能しました!!

投稿: オサムシ | 2020年3月18日 (水) 21:56

◆オサムシさん
おっしゃる通り、終盤のツメが甘いですし、いろいろ突っ込みどころもありますが、ベテラン役者たちの息の合った演技合戦は楽しめましたね。
「新宿の女」は藤圭子の、どこか投げやりな諦念を感じさせる歌い方が魅力なのですが、のんはなかなかうまくその雰囲気を漂わせていましたね。「この世界の片隅に」のすずさんから本作まで、幅の広さにも感服します。もっと映画に出て欲しいですね。

投稿: Kei(管理人) | 2020年3月20日 (金) 20:00

「星屑の町」後発同名タイトルの弊害 ?
~舞台/星屑の町2作目~南国旅情篇~
下北沢本多劇場~'96/11/19~26(火)
発売CD♪{MISS YOU」2曲目オリジナル
♪星屑の町♪ 作詞*苦楽健人氏
作編曲*森田公一氏
歌*山田修とハローナイツ(名義)
◎全4番(311s)≪冬~春~夏~秋~≫
今も忘れていない2016/2/27(土)西宮
当時発売から20年目に舞台エンディングで初めて聴いた♪星屑の町~

投稿: | 2020年5月 9日 (土) 13:32

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