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2020年6月28日 (日)

「ライブリポート」

Lineofduty 2019年・イギリス=アメリカ合作  99分
配給:ギャガ・プラス
原題:Line of Duty
監督:スティーブン・C・ミラー
脚本:ジェレミー・ドライスデール
音楽:ザ・ニュートン・ブラザーズ 
製作:マイルズ・ネステル、 クレイグ・チャップマン、 スキップ・ウィリアムソン、 マーティン・スプロック、 クリストファー・タフィン、 ルネー・タブ、 ティファニー・ストーン、 スコット・ラステティ

誘拐事件捜査に当たる警察の動きと、SNS配信情報とをうまくミックスさせたちょっと変わったポリス・アクション。監督は「大脱出2」のスティーブン・C・ミラー。出演は「ダークナイト」「エンド・オブ・キングダム」のアーロン・エッカート、「キング・オブ・エジプト」のコートニー・イートン、ドラマ「ゴッサム」のベン・マッケンジーなど。

(物語)少女の誘拐事件が発生し、警察のもとに水が流れ込む透明の箱に閉じ込められた少女の映像が届いた。タイムリミットは64分。警察無線を聴いた警察官ペニー(アーロン・エッカート)は、独断で犯人を追う。そのペニーにネット配信サイトPeaple.comのレポーター、エイヴァ(コートニー・ イートン)が協力を申し出る。最初は拒否するも、エイヴァの熱心さに折れてペニーは追跡捜査の生配信を許可し、エイヴァの協力を得て、懸命に監禁場所を突き止めるべく行動する。一方SNSで拡散される映像は、テレビ局も巻き込んで無限大に広がって行く。

警察官(又は刑事)ともう一人の人物が共同で事件を追う、いわゆるバディ・ムービーは数多いが、その相棒がネット配信放送局のレポーターというのが新趣向である。いかにも時代である。

(以下ネタバレあり)

ペニーは無線で犯人の一人が近くを逃げている事を知り、”容疑者には手を出すな”という命令を無視して犯人を追い詰めて行くが、銃を向けられ犯人を射殺してしまった。

実は誘拐されたのは警察署長の娘クラウディアだった。唯一の手掛かりを失って怒り狂った署長は、命令無視を理由にペニーを解任し、拳銃まで取り上げてしまう。

そうした状況に追い込まれても、なんとしてもクラウディアを救いたいペニーに、ネット配信放送局のエイヴァが、情報提供と引き換えにペニーの捜査を取材させて欲しいと申し出る。

当然警察当局は猛反対だが、捜査権限を取り上げられた上、64分という限られた時間の中で少女を救う為には、こうしたSNSを活用した情報収集も必要と考えたペニーは、警察機構を無視してエイヴァに協力を求め、事件の核心に迫って行く。

なぜ一人の警察官であるペニーがそこまで少女救出に執念を燃やすのかと、最初は疑問だったのだが、物語が進むにつれ、実はペニーは以前、子どもを盾に警察に抵抗する父親を制圧しようとして、誤ってその子供を射殺してしまった過去があった事が判って来る。それがトラウマになって、ペニーの心を苛んでいた。

今度こそは、子供の命を救いたい、その執念がペニーを奮い立たせている。

一方、ペニーに射殺された犯人の兄ディーン(ベン・マッケンジー)は怒り狂い、自動小銃で武装してとことんペニーを追って来る。警官隊が駆け付けると乱射しまくり、次々と警官を血祭りにあげる。
このアクション・シーンは迫力はあるが、64分で満タンになる水槽を用意したり、自宅にさまざまな罠を仕掛けたりする知能犯的犯人像とはあまり結びつかない荒っぽさはちょっと疑問。
またディーンはかなりタフ、と言うかペニーに重傷を負わされ、救急車で搬送される途中に覚醒すると、起き上がるや周囲を無差別に殺しまくる。まるでターミネーター状態(笑)。

といった具合に、タイムリミット・サスペンスにしては派手なアクション・シーンが満載で、いろいろツッ込みどころも多い。

それでも終盤、タイムリミットまであと5分、と言うギリギリの所でペニーがちょっとしたヒントからクラウディアが埋められていた場所を突き止め、現場に到着すると、SNSを見ていた人たちが一斉に応援に駆け付け、みんなで力を合わせ懸命に手で土を掘るシーンでは、ちょっと涙が出た。そしてギリギリで少女救出。

作者としては、これがやりたかったんだろうなと想像がつく。確かに感動的だ。

ペニーも、おそらくはこの事でようやくトラウマから解消されるだろうし、警察にも復職するだろう。またエイヴァのネット放送局もこのお手柄で人気が出るだろう。すべてめでたしのハッピーエンドとなるラストは気持ちいい。


警察側もネットで見てるはずなのに、駆け付けるのが遅過ぎとか、素人のエイヴァが危険な所に飛び込み過ぎだとか、いろいろとアラも、そりゃないだろうというようないい加減な所も多く、よく出来た作品とは言い難い。

それでも面白かったのは、見せ場、アクション、サスペンスを縦横に網羅し、ほとんどノンストップでテンポよく物語が進んで行き、最後にウルッと来る結末も用意したりと、娯楽映画の要素をまんべんなく配置して、とにかく面白く見せようとするサービス精神にあふれた作り方をしているからである。

犯人のちょっとした一言や、些細な手掛かりから目的の場所を突き止めて行く謎解きサスペンス部分も悪くないし、伏線の配置もいい。

悪い点は目をつぶり、B級娯楽活劇と割り切って、頭をカラッポにして映画に入り込んだらそこそこ楽しめる作品ではある。人によって評価は分かれるだろうが、私はこういうのも好きである。

ペニーを演じたアーロン・エッカート、「ダークナイト」のトゥー・フェイス役で知られ、「ハドソン川の奇跡」では副操縦士役を演じる等、演技派としても活躍目覚ましいが、本作では「ダイ・ハード」のマクレーン刑事並みにタフなアクションをこなしている。今後もアクション路線を進むのか注目したい。

ただ、この味もそっけもない邦題はいかがなものか。これでは誘拐サスペンス・アクションという作品の内容がまるで伝わらない。せめて「誘拐!タイムリミット64分」(まんまですが(笑))くらいにしたらどうだろうか。  (採点=★★★☆

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(付記)
警察の人間でありながら、犯人を追い求める為には荒っぽい事、違法な捜査も辞さないタフな男、と言えば思い出すのがクリント・イーストウッド主演の「ダーティハリー」

Dirtyharry ハリー刑事ほどカッコよくはないけれど、ペニーも市民の車を強引に借りたり、無断で人の家に上がり込んだりとハリーに負けず荒っぽい。

で、その「ダーティハリー」1作目ではやはり、14歳の少女を誘拐して生き埋めにしタイムリミットまでに身代金を渡さないと少女は窒息死すると脅迫する犯人が登場する。こちらはハリーの奮闘も空しく少女は死んでしまう。

本作は、この「ダーティハリー」の誘拐シークェンスにヒントを得ているのかも知れない。警察署長とソリが合わないという点も共通する。

 

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