「ゴジラvsコング」
2021年・アメリカ 114分
製作:レジェンダリーピクチャーズ=ワーナーブラザース
配給:東宝
原題:Godzilla vs. Kong
監督:アダム・ウィンガード
原案:テリー・ロッシオ、マイケル・ドハティ、ザック・シールズ
脚本:エリック・ピアソン、マックス・ボレンスタイン
製作総指揮:ジェイ・アッシェンフェルター、ハーバート・W・ゲインス、ダン・リン、ロイ・リー、坂野義光、奥平賢治
製作:メアリー・ペアレント、アレックス・ガルシア、エリック・マクレオド、ジョン・ジャシュニ、トーマス・タル、ブライアン・ロジャース
「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」に続く“モンスター・ヴァース”シリーズ第4作。監督は「ザ・ゲスト」のアダム・ウィンガード。出演は「ターザン REBORN」のアレクサンダー・スカルスガルド、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」のミリー・ボビー・ブラウン、カイル・チャンドラー、「ティーンスピリット」のレベッカ・ホール、「チャイルド・プレイ(2019)」のブライアン・タイリー・ヘンリー。また「罪の声」の小栗旬がハリウッドデビューを飾った。
(物語)モンスターたちの戦いによって壊滅的な被害を受けた地球。特務機関モナークは、太平洋の髑髏島にて、コングの保護と観察を続けながら、巨大怪獣の故郷<ルーツ>の手がかりを掴もうとしていた。そんな時、深海の暗闇からゴジラが出現し、フロリダにあるエイペックス・サイバネティクス社の工場を襲った。エイペックス社はモナークと共同でゴジラに対抗すべく、地球空洞説の研究者、ネイサン・リンド博士(アレクサンダー・スカルスガルド)に協力を依頼し、コングを髑髏島から連れ出し、南極にあるとされる伝説の地底空洞を探そうとしていた。だがコングを移送中の太平洋の海上に、再びゴジラが現れ…。
怪獣王・ゴジラとキングコングがガチンコでバトルを繰り広げる…。怪獣映画ファンならわが東宝=円谷英二特撮監督による59年前の「キングコング対ゴジラ」を思い起こし、この対決を巨費を投じ最新のVFX技術を駆使してハリウッドで製作、と聞くだけで血が騒いでしまう(笑)。
しかも“モンスター・ヴァース”シリーズ第1作「GODZILLA ゴジラ」(2014)がまずまずの出来(個人的にはやや微妙だったが。詳細は拙作品評参照)、そして第2弾「キングコング:髑髏島の巨神」(2017)が怪獣映画ファンなら大満足の快作だったから、この調子で両怪獣が対決してくれるなら、どんな凄い怪獣映画が出来上がるのかとワクワクしながら公開を待ったのだが…。
(以下ネタバレあり、注意)
うーん、正直言ってガッカリの出来だった。
ガッカリの原因第1。ゴジラの立ち位置、スタンスが曖昧なままの点。これは1作目「GODZILLA ゴジラ」、前作「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(2019)を通じて感じていた事。
1作目では、最初は人類の敵と思われていたのに、悪役怪獣ムートーを倒した事で、いつの間にか地球を救った救世主的な立場に変っている。
前作「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」でも、ラストで凶悪怪獣キングギドラを、モスラたちと力を合わせて退治し、こちらでもゴジラは地球の平和を守ったヒーロー扱いである。おまけに他の怪獣たちがゴジラの前にひれ伏し、神のように崇めるシーンまで登場している。
この2作で、ゴジラがすっかり人類の味方というスタンスが定着してしまった。…しかしこれでは、次作でコングと対決させるんだったらマズいんじゃないかと思った。
何故なら、“正義の味方同士で対決したら、どっちを勝者にすべきか、決着の付けようがないんじないの?”という疑問が生まれるからである。
実際、バットマンとスーパーマンが対決した「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」(2016)はしょーもない駄作だったし、わが2大ヒーローが対決した「座頭市と用心棒」も結局痛み分けでうやむやに終わっていた。ヒーロー同士の対決は、見てみたいという期待で客は集まるだろうが、どちらも負けさせられないから中途半端な出来になってしまうのである。
その点、「キングコング対ゴジラ」でははっきり、ゴジラ=悪役、キングコング=正義、という位置付けだったので、ラストでゴジラが海に没して、コングは悠然と南の島に帰って行く、という、まさに正義が勝つ結末となっていた。この方がスッキリする。
ゴジラ・シリーズの次作「モスラ対ゴジラ」でもゴジラはやはり悪役で、モスラの吐く糸でがんじがらめにされ、あっけなく海に叩き込まれて負けてしまうのである。
コングの方は、「キングコング:髑髏島の巨神」ではっきり、“髑髏島を守る守護神”、“強いヒーロー”として描かれているから、こりゃ決着は難しいんじゃないかと危惧していたのだが、やっぱり悪い予感が当たってしまった。
で、どういう結末にしたかと言うと、“両者よりも強そうな悪役”を登場させて、ゴジラとコングが力を合わせてその敵を倒す、という、前作のキングギドラがその悪役に置き換わっただけの二番煎じ的オチになってしまった。これがガッカリの2番目。
その悪役もなんとも中途半端。本来人類を守る為の対ゴジラ兵器だったのに、暴走してコントロールが利かなくなるのだが、その原因がいまいちハッキリしない。しかもそれを操縦していたのが、前2作に登場していた芹沢博士の息子、芹沢蓮というのもよく分からん。何故なら父の芹沢猪四郎博士は、前作でゴジラを生き返らせる為に自らを犠牲にしているからで、その息子がゴジラを倒す兵器に、しかも開発者が自分で操縦者として乗り込むというのもヘン。挙句に白目剥いていつの間にかいなくなってしまった。なんともシマらない役柄だ。
芹沢猪四郎博士の息子という必然性が感じられない中途半端なキャラクターで、何とも気の毒なハリウッド・デビューだ。
ついでにツッ込むと、距離関係がムチャクチャ。
最初にゴジラが現れたのは、アメリカ南東部、フロリダのエイペックス社の工場だったのに、次にゴジラが現れたのは、太平洋の海の上。フロリダから太平洋に移動するには、アメリカ大陸のどこか(メキシコか、南に下がってもパナマ辺り)を横断しなければならないが、そんな描写はない。せめてフロリダではなくカリフォルニアにしておけば問題なかったと思うが。
もっとひどいのが、コングは南極大陸にある、地下空洞の入口から地底に降りるのだが、その後あまり長距離を移動した形跡がないのに、いつの間にか香港の真下に来ている。
南極から香港まで、途方もない距離があるはずだが。時速50キロで不眠不休で走っても数日かかるだろう。テレポートしたのか(笑)。
脚本を書いた人、地球儀を見た事ないのだろうか(笑)。
も一つついでに、コングと心を交す少女ジア(ケイリー・ホトル)が、コングと手話で会話するのだが、身長100メートルもあるコングからはジアは豆粒以下にしか見えないはずで、細かい手の動きなんてとても判別出来ないと思う。そもそもコング、手話どうやって覚えたのか?
まあ、ツッ込みどころを挙げたらキリがないくらいで、あと体重何百トンもあるゴジラとコングが、アメリカ軍の空母に同時に乗ったら空母沈没するはずだとか、地底の空洞世界、なんであんなに明るいのか、地底にも太陽があるのか(笑)とかも。
音楽に関しても、前作ではあの伊福部昭作曲のゴジラ・テーマとか、古関裕而作曲の「モスラ」のテーマとかがエンドロールに流れて喜んだものだが、本作にはまったく登場しないのも不満である。
おそらく映画秘宝誌の2021年度ベストテン号では、トホホ大賞(ワーストワン)になりそうな予感がする。
その代わり、ゴジラとコングの2度に渡る対決シーンはなかなかの迫力。展開もスピーディで、そこだけ観てても値段分の値打ちはある。私のようにあまり深く考えず、両者の怪獣プロレスを頭をカラッポにして楽しむのが正解かも知れない。
採点としては、二大怪獣のバトルシーンに関しては(★★★★☆)、ストーリーに関しては(★★)、平均点で(★★★)という所か。
(口直しに、お楽しみはココからだ)
本作に登場する“地底空洞説”は、実は古くからいろんな学者がもっともらしく唱えて来た学説(?)で、本作でも描かれた“南極に開口部がある”という説も登場した事もある。
小説では、ジュール・ベルヌが「地底旅行」を発表し、これは何度も映画化された。
エドガー・ライス・バロウズも「ペルシダー」シリーズに地下空洞を登場させている。この中では“空洞中央に決して沈まない小型の太陽がある”とか、“地上で絶滅した古代生物がまだ生きている”とかの本作と似たエピソードも出て来る。
ちなみにバロウズは「ターザン」の原作者でもある。
日本でも山川惣治原作の「少年ケニヤ」に、地底世界に迷い込むエピソードが登場し、ティラノザウルスはじめ太古の恐竜が主人公のワタルたちを襲ったり、地上を目指すワタルたちを追いかけてティラノザウルスが地上に出て来たりと、「ペルシダー」シリーズをさらに発展させたお話となる。
本作における地下空洞をめぐるエピソードは、こうした過去の作品(特に「ペルシダー」シリーズ)を参考にして作り上げたものと思われる。
こういうスケールのでっかいホラ話(笑)を最新のVFXで描くというのは悪くないのだが、ゴジラとコングが闘うお話がメインの映画に取り入れた事で話が広がり過ぎ、散漫な感じになってしまったのが残念。“地底空洞世界での冒険”だけで十分1本の映画が作れるくらい奥の深い設定なのだから。
なおバロウズの「ペルシダー」シリーズは過去に一度だけ、1976年にイギリスのマイナー・プロダクションで作られ、「地底王国」の邦題で我が国でも公開されている。
低予算なのでかなりショボい出来。怪獣は日本と同じ着ぐるみで(笑)、しかも円谷特撮よりかなり落ちる。口から火を吐く怪獣が出て来たのにはズッこけた(笑)。
「ペルシダー」シリーズは是非、巨費をかけ、最新のVFX技術で作って欲しいと思う。
| 固定リンク
コメント
まあ、大体想像通りの映画でした。
脚本は突っ込み所が多いというかわざとなんでしょうね。
ここまで無茶苦茶だと一周回ってちょっと面白いかも。
まあ、バトルシーンがよく出来ているので、私もそこだけで料金分は楽しめたかな。
地底空洞説にはまいりましたね。
私もペルシダーシリーズ読んだので。
投稿: きさ | 2021年7月13日 (火) 14:32
ゴジラが全くわかってない人だなあと思いました
投稿: | 2024年3月19日 (火) 09:50