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2021年8月 9日 (月)

「トゥモロー・ウォー」  (VOD)

The-tomorrow-war 2021年・アメリカ   138分
製作:スカイダンス=パラマウント
提供:Amazon studios
原題:The Tomorrow War
監督:クリス・マッケイ
脚本:ザック・ディーン
撮影:ラリー・フォン
製作総指揮:ロブ・コーワン、クリス・プラット、ブライアン・オリバー、ブラッドリー・J・フィッシャー

地球を脅かすエイリアンと人類の戦いを、家族愛、タイムリープ等も交えて描いたSFアクション。監督は「レゴバットマン ザ・ムービー」のクリス・マッケイ。主演は「ジュラシック・ワールド」シリーズのクリス・プラット。共演はテレビドラマ「CHUCK チャック」のイボンヌ・ストラホフスキー、「セッション」のJ・K・シモンズなど。Amazon Prime配信作品。

 本作は元々は、「スター・トレック」「ターミネーター:新起動/ジェニシス」「ターミネーター:ニュー・フェイト」等のSF大作を発表して来たスカイダンスとパラマウント・ピクチャーズが製作した劇場用映画で、昨年のクリスマスに公開予定だったのが、コロナ禍で劇場が閉鎖され、公開の目途が立たないのでAmazonが購入し、配信を引き受けたという経緯がある。

スケールの大きな作品で、WETA Digitalなど大手スタジオが手掛けたVFXも見事で、配信のみなのがもったいない。

劇場鑑賞がモットーの私としては、出来れば劇場で見たかったのだが、配信でしか観られないので、仕方なくパソコン・モニターで鑑賞する事に。

(物語)2022年のある日、2051年の世界から未来人が現代に突然現れ、人類は30年後にホワイトスパイクと呼ばれる未知の生物と戦争になり、やがて敗北するという衝撃の事実を告げる。人類が生き残るための唯一の希望は、現代から援軍の兵士を未来に送り込み、戦いに参加する事だという。その1人として選ばれた、元軍人で高校教師のダン・フォレスター(クリス・プラット)は、まだ幼い娘・ミューリ(ライアン・キエラ・アームストロング)の未来の為に、再び戦いに身を投じることを決意する…。

基本ラインは、古くは「宇宙戦争」「インディペンデンス・デイ」、最近では「スカイライン」シリーズなど、これまで無数に作られて来た“人類とエイリアンとの戦い”を描くSFアクションである。

本作がそれらと異なるのは、そこに時空を越えるタイムリープ要素を加えている点で、本作は侵略SFと、タイムリープSFというSF映画の2大要素を巧みにミックスしている。これは斬新な発想である。

(以下ネタバレあり)

主人公はイラク戦争の帰還兵で、現在は妻と幼い娘の3人家族で平和に暮らしている生物教師のダンである。ダンの父ジェームズ(J・K・シモンズ)はベトナム戦争の帰還兵で、家庭を捨てて別に暮らしており、ダンは父を憎んでいる。

ある日サッカー、ワールドカップのグラウンドに、29年後の未来からタイムスリップして来た兵士たちが降り立ち、未来は謎の凶暴な生物に侵略されて、地球上の人類は50万人まで激減し、このままでは人類は滅亡すると伝える。この危機を逃れる為には、人口の多いこの時代から援軍を送って戦うしかない。

各国政府は徴兵によって援軍を送る事にするが、未来で同じ人物が遭遇するタイムパラドックスを防止する為に、送る兵士は40歳以上とした。こうすれば30年後にはその人たちは死んでいるだろうという事である(もっとも40歳代で派兵されたなら、30年後にはまだ70歳代で十分まだ生きていると思われるが。まあ50歳以上の人間送ったら機敏に戦えずあまり役に立たないだろうから難しいが)。

ダンは、未来から来た兵士から、7年後には死んでいると聞かされる。残り少ない命なら、愛する娘の未来を救う為に命を賭して戦う事を決意する。

こうして、ダンや多くの男たちが時空を越えて未来に向かい、敵エイリアンとの壮絶な戦いが繰り広げられる事となるのである。

The-tomorrow-war2

この前半の、不気味なエイリアン群団(ホワイトスパイクと名付けられている)と人類との攻防戦は凄い迫力。

ホワイトスパイクのクリーチャー・デザインは「クワイエット・プレイス」の怪物を思わせる醜悪な容貌で、動きは俊敏。最初に敵と遭遇するシーンでは、なかなか姿を見せないサスペンスフルな演出まで「クワイエット・プレイス」を思わせる。

次々と襲ってくる、無数のホワイトスパイクとの攻防戦は「スターシップ・トゥルーパーズ」を思わせたりもする。VFXはさすが見事。

ここでは、敵の攻撃に次々と兵士たちが犠牲になり、さらに数分後に爆撃される予定のビルから決死の脱出行と、スリリングかつスピーディな展開はなかなか見応えがある。これは前半の見せ場である。

戦いが一段落した後、ダンは“フォレスター大佐”と呼ばれる女性科学者と出会う。実はその女性は、あの愛娘ミューリ(イボンヌ・ストラホフスキー)であった。2022年でミューリが科学に興味がある描写が伏線となっているのがうまい。

彼女はホワイトスパイクの女王である雌を捕獲し、その体から雌を殺す事の出来る毒物を精製しようと考えている。その為に危険を冒してホワイトスパイクの巣窟に侵入し、女王を捕えようとする。このシーンの壮絶なバトルも見応えがある。ミューリを救う為に、待機せよとの命令に反してダンが救出に向かうシークェンスもハラハラさせる。

そして遂に女王の捕獲に成功し、何度も実験とスクリーニングを重ねて、雌を殺す毒物を精製する事に成功する。だが敵は近くまで迫り、ミューリに毒を託されたダンが過去に帰る直前、ミューリに悲劇が訪れる。

2022年に帰ったダンはミューリを救えなかった事を悲しむが、ここでダンはある計画を思いつく。この時代でホワイトスパイクを絶滅出来れば、未来の人類を救えるのではないか

これは「ターミネーター」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でも描かれた、“過去を変えれば、未来を望む方向に変えられる”というパターンの応用である。
さすがは「ターミネーター」シリーズ2本を製作したスカイダンスならではの発想である。もっとも「ターミネーター」は人類に敗北寸前となった敵スカイネットの方が、過去にターミネーターを送って歴史を変えようとする逆パターンなわけであるが。

ダンは僅かの手掛かりから、エイリアンが地球にやって来た時期と場所を突き止める事に成功する。なんとエイリアンは1,000年も前に地球に来ていたのだ。ロシアの氷山の奥深くに墜落し、そのまま氷河に埋もれていたのだ。それが2051年に人類を襲うようになったのは、地球が温められ、解凍されたせいである。
地球温暖化が、エイリアンを目覚めさせたとは、何とも痛烈な皮肉である。

本作の冒頭で、ダンが高校で教えている生徒の中に、古代の火山にやたら詳しい科学オタクがいたのだが、それもこのくだりの伏線になっている。随所に仕込まれた伏線が終盤できっちり回収されて行く脚本がなかなか秀逸。

ダンは疎遠だった父ジェームズに協力を頼み、、エイリアンの宇宙船を発見し、冬眠していたホワイトスパイクに毒を注入するが、逃げ出した女王をジェームズと一緒に追いかけ、死闘の末に遂に倒す事に成功する。

こうして、ダンは父親とも和解し、妻と娘ミューリの元に、父と一緒に帰って来る。人類も救われ、すべてハッピーエンドとなる。


やや都合が良過ぎる所もないではないが、ホワイトスパイクと人類との派手な攻防戦は迫力満点だし、全体としては、ジェームズとダン父子、ダンと娘ミューリの、それぞれの家族愛も丁寧に描かれていて、面白い作品に仕上がっている。娘を思う父ダンの心情にはちょっぴり泣けてしまう。

なお、氷に閉じ込められていたエイリアンが、解凍されて生き返り人類を襲う、という展開は「遊星からの物体X」へのオマージュだろう。

こんな具合に、本作はいろんなSF映画のおいしい所を巧妙に取り入れている。SF映画を数多く観ている映画ファンなら、ここはあの映画のオマージュだなといろいろ見つけて楽しむ事も出来る。SF映画ファンにはお奨めである。

それにしても、こんなスケール感のある、VFXも見事なハリウッド映画は映画館で観たかった。そうであればもっと興奮し感動出来るだろう。
配信作品でも「ローマ/ROMA」とか「アイリッシュマン」「Mank マンク」のように劇場公開された作品も多いのだから、是非今からでも、劇場公開を検討していただきたいと願う。  (採点=★★★★☆

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(付記)
本作は、米独立記念日の週末となる7月2日にAmazon Prime Videoで世界同時配信され、各国で第1位となる大ヒットを記録している。

これに味をしめたスカイダンスとアマゾン・スタジオが、早速続編製作に動き出したそうだ。監督、主演も続投の見込みだという。

どんな内容になるのだろうか。でも2022年の現代でホワイトスパイクは絶滅したはずだから難しい気がするが。
まさか、エイリアンの宇宙船はもう1基地球に来ていたとか? うーん、止めて欲しい気が(笑)。

 

 

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