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2022年8月13日 (土)

「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」

Jurassicworlddominion 2022年・アメリカ    147分
製作:ユニヴァーサル=アンブリン・エンタティンメント
配給:東宝東和
原題:Jurassic World: Dominion
監督:コリン・トレボロウ
原案:デレク・コノリー、コリン・トレボロウ
脚本:エミリー・カーマイケル、コリン・トレボロウ
キャラクター創造:マイケル・クライトン
撮影:ジョン・シュワルツマン
音楽:マイケル・ジアッキノ
製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、アレクサンドラ・ダービシャー、コリン・トレボロウ

現代に蘇った恐竜たちが大暴れする人気作「ジュラシック」シリーズの最終章。監督は「ジュラシック・ワールド」1作目でメガホンを取ったコリン・トレボロウ。出演は「ジュラシック・ワールド」シリーズに主演のクリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワードに加え、「ジュラシック・パーク」初期3作の主演者サム・ニール、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラムも顔を揃える。

(物語)ジュラシック・ワールドのあった島、イスラ・ヌブラルが噴火で壊滅し、救出された恐竜たちが世界中へ解き放たれて4年。人類はいまだ恐竜と安全に共生する道を見出せずにいた。そんな中、恐竜の保護活動を続けるオーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、ジュラシック・パーク創設に協力したロックウッドの亡き娘から作られたクローンの少女、メイジー(イザベラ・サーモン)を守りながら、人里離れた山小屋で暮らしていた。ある日、オーウェンは子供を連れたヴェロキラプトルのブルーと再会。しかし、その子・ベータとメイジーが何者かによって誘拐されてしまい、オーウェンはクレアとともに救出に向かう。一方、ある目的で恐竜の研究をしている巨大バイオテクノロジー企業のバイオシンを追っていたサトラー博士(ローラ・ダーン)は、グラント博士(サム・ニール)と協力してバイオシン社に乗り込み、そこで働くマルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)と再会する。

1993年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督「ジュラシック・パーク」(以下1作目と呼ぶ)を最初に劇場で観た時の感動と興奮は今も忘れられない。

初めて恐竜の全体像が画面に登場するシーン、ほとんど実物の実写のようにしか見えないブラキオサウルスの滑らかな動きに、グラント博士たちと同様に我々観客も驚嘆した。

映画は、こんな事まで出来るようになったのだとまざまざと実感した。無論、アニマトロニクスも巧みに併用したスピルバーグ監督の演出手腕による所も大きいが。

以後、CGもますます精緻になって、もっと凄い映像も当たり前になったが、やはり最初に観た時のインパクトは強烈だ。

以後シリーズ化され、一旦「ジュラシック・パークⅢ」(2001)で打ち止めになっていたが、2015年ジュラシック・ワールド」(以下4作目と呼ぶ)で復活、そして通算6作目となる本作で、シリーズは最終章を迎える事となった。ずっとリアルタイムでシリーズを観て来た私にとっては、感慨深いものがある。

最終章という事で、1作目に出演したサトラー博士(ローラ・ダーン)、グラント博士(サム・ニール)、マルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)も再登場。さらに1作目に登場したきり、その後のシリーズには出て来なかったパーク運営会社のライバル社(これがそもそもパークの管理システムが機能不全となる遠因を招いた)が本作で重要な役割を果たし、シリーズの落とし前をつけた形となっている。

さらにさらに、本作の随所に、1作目へのオマージュ・シーンが盛り込まれており、1作目を観ているファンなら思わずニンマリさせられる。

そういう訳で、本作を観る前に是非1作目をDVD等で鑑賞し、復習しておく事をお奨めする。本作の楽しみが倍加する事請け合いである。

(以下ネタバレあり)

物語は前作「ジュラシック・ワールド/炎の王国」の続編となっており、前作のラストで恐竜たちが世界に放たれ、各地で恐竜と人間とが共存している姿が描かれる。チビ恐竜などは子供のペットになっている。一方で凶暴な肉食恐竜は、巨大バイオテクノロジー企業・バイオシン社が国連依頼の元、イタリアのドロミティ山脈の一角で保護している。

そして前作の主人公たち、オーウェンとクレアは、前作でも重要な役割を果たしたクローン少女・メイジーと共に人里離れた山中でひっそりと暮らしていた。近くには、オーウェンと心が通じ合うヴェロキラプトルのブルーも、子供のベータと共に棲んでいる。ところがある日、謎の集団によってメイジーとベータが攫われてしまう。オーウェンとクレアは僅かな手掛かりから、メイジーたちを探してマルタ島の恐竜の闇マーケットに潜入する。

一方、アメリカ各地に巨大イナゴが現れ、農作物を食い荒らして深刻な食糧危機を招いている。調査を行ったサトラー博士は、バイオシン社の種を使った農作物だけが被害を免れている事から、変異イナゴにバイオシン社が絡んでいると判断し、旧知のグラント博士と共にバイオシン社の恐竜保護区に向かう。

…といった具合に、物語はこの2つのグループがそれぞれにチームを組んで行動する姿を並行して描いて行く。

メインとなるのはオーウェンたちのグループのエピソードで、これだけでも十分1本の映画になるのだが、最終章の顔見世として第1作の主人公たちを登場させる為に、サトラー博士たちが絡むもう一つの物語を組み入れ、後半に至ってこの2つのグループが合流し、力を合わせてバイオシン社の陰謀に立ち向かって行く事となる。

実はメイジーたちを誘拐したのもバイオシン社の手の者で、バイオシン社は恐竜のDNAを活用して新たな医療技術による薬品開発を進めており、その為にはクローン少女メイジーと単為生殖という独自のDNAを持つベータの遺伝子を必要としていたのである。巨大イナゴもバイオシン社が恐竜の遺伝子から作りだしたものだった。

かくして物語は終盤、バイオシン社の巨大施設を舞台に、オーウェンたちやグラント博士たちがDNA操作で生み出された凶暴な新種恐竜に襲われ逃げ惑ったり、さまざまなピンチを潜り抜けて、最後は悪徳企業バイオシン社壊滅へとなだれ込んで行くのである。


「ジュラシック・パーク」
ファンとしては、同作に主演していたサム・ニール、ローラ・ダーンの久しぶりの登場が何より嬉しい。ローラ・ダーンは少し老けたが、グラント博士に扮するサム・ニールは貫禄味を増していい雰囲気だ。なおジェフ・ゴールドブラム扮するマルコム博士は既に前作「炎の王国」にも登場していた。

シリーズの集大成として、1作目に登場したいろんなシーンのオマージュがあちこちに出て来るので、1作目の記憶が鮮明な(あるいはDVDで再見した)観客なら思わず感動したりニンマリしたくなるだろう(詳細は後述お楽しみコーナー参照)。

本作の悪役、バイオシン社CEOのルイス・ドジスン(キャンベル・スコット)についてだが、実は第1作に既に登場している。物語の冒頭近く、パークのシステム・エンジニア、デニス・ネドリーを多額の金で買収し、恐竜の胚をシェービング・クリームの缶に入れて持ち出すようそそのかしていたのがドジスンだった。
結局ネドリーが嵐の中、道に迷い、エリマキのあるディロフォサウルスに殺されてしまい、ドジスンの計画は失敗するのだが。
この時ドネリーがパークの管理システムをコントロール不能にしたせいで高圧電流が遮断され、恐竜が暴れ出して大パニックとなったのは周知の通り。

ほんの僅かの登場だったのですっかり忘れていたが、本作を観る前にDVDで1作目を鑑賞して、ドジスン登場を確認出来た。ネドリーを探すドジスンにネドリーが大声で「ドジスン!」と呼びかけるシーンがある。
その後シリーズを通してまったく姿が見えなかったドジスンを本作で29年ぶりに再登場させた事で、第1作の宿題を片付けた形となったわけである。

アクション的には、マルタ島でのオーウェンが乗るバイクと恐竜ラプトルとの壮絶なバイク・チェイスが見もの。これは本筋とは関係ないのだが、1作目のジープとT‐レックスとのカーチェイス(スピルバーグの「激突!」オマージュ)を応用したサービス・シーンと考えて理屈抜きに楽しむのが正解だろう。

話としては、あれもこれもと盛りだくさんで、ちょっと詰め込み過ぎの気もしないではないが、あまり深く考えず、テーマパークのライドに乗った気分でハラハラ、ドキドキ、スリルを楽しめばいいのである。

そしてシリーズを通して一貫するテーマ、“高度な科学の力で自然をも支配しようとする人間の驕りが、致命的な災厄をもたらしてしまう”事への警鐘は本作でも健在である。

第1作から登場しているヘンリー・ウー博士(B・D・ウォン)がシリーズを通して、いつもDNAを好き勝手にいじってインドミナス・レックスだの、本作でも名前は忘れたが数種類と、新種の恐竜を作りだす事に喜びを感じる一種のマッド・サイエンティスト的存在だったのが、本作のラストで、巨大イナゴを作りだしてしまった責任を感じて、巨大イナゴを撲滅させるべく遺伝子を組み換えた1匹のイナゴを群に放つシーンは印象的である。
ただ急に最後で反省するのは、ちょっと取って付けた感がないでもないが。まあこれも、人類は一度立ち止まって反省すべきではないかというテーマを強調する意味であえて入れたと解釈しておこう。

Jurassicpark2

ラストで、恐竜たちが動物たちと仲良く共存し生活しているいくつかのシーンも印象的だ。もはや人類は、恐竜たちと共存して生きて行くしかないのである。

前作「炎の王国」のラストシーンでマルコム博士は次のような言葉で人類に語りかける。
「度を越えた遺伝子工学は破局を招くでしょう。我々の暮らしは非日常的な事故によって激変します。あるいは人知を超えた不治の病も暮らしを変えます。しかし激変が日々の暮らしの一部になる事もあるのです。これからの人類は恐竜と共生するのです」。

これはそのまま本作のテーマでもあるのだが、マルコム博士の言う“人知を超えた病が、日々の暮らしの一部になる”とは、今の世界に蔓延する新型コロナウイルスそのものではないか。
人類はまさにウイズコロナで、ウイルスとの共存を迫られている。ある意味で前作は、このコロナ過を予言していたとも言える(前作の公開はコロナ禍前の2018年)。新型コロナウイルスも某〇漢研究所で人為的に作られたとの説もある。
また本作には、巨大イナゴの襲来で、深刻な食糧危機に直面するシーンが登場するが、現実社会でも異常な気候変動に加え、ロシアの侵攻で世界最大の小麦輸出国ウクライナから小麦が輸出出来ず、世界的な食糧危機が問題となっている。偶然にしては出来過ぎている。

そう考えると本シリーズは、まさにタイムリーに作られた、その時代とリンクして来た傑作シリーズだと言っても過言ではない(1作目自体、科学でコントロール出来るとの過信が重大な災厄を招いたチェルノブイリ原発事故の暗喩とも取れる)。

物語だけでなく、テーマ的にも集大成となって、このシリーズは有終の美を飾ったと言えるだろう。 (採点=★★★★☆

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(さて、お楽しみはココからだ)

本作には、旧「ジュラシック・パーク」シリーズへのオマージュ・シーンがいくつもある。一応私が気付いたシーンを以下に列記する。(未見の方は映画を観てからお読みください

1.サトラー博士が巨大イナゴの被害を調査しているシーンで、バイオシン社の種を使った畑だけ無事であるのを見て、思わずサングラスを外してその畑を凝視するシーンがあるが、これは1作目でサトラー博士が、初めてブラキオサウルスを目の前で見て、慌ててサングラスを外すリアクションとそっくりである。

2.出発前の飛行場で、サトラー博士が可愛い子供のトリケラトプスを撫でるシーンがあるが、1作目ではサトラー博士、大人の病気になったトリケラトプスの身体をやはり撫でていた。

3.パイロットのケイラが操縦する飛行機がバイオシン社手前の氷の湖に不時着した後、オーウェンが氷の上を歩いてる時、氷のひび割れが広がって湖中に転落しそうになるシーン、これは2作目「ロストワールド/ジュラシック・パーク」でジュリアン・ムーア扮するサラが崖から転落した車の中で、かろうじてガラスの上に落ちるものの、ガラスがビリビリとひび割れして危うく落ちそうになるシーンのオマージュ。

4.脱出したグラント博士たちの乗った車が崖下に転落して逆さになり、そこにギガノトサウルスが迫って来て鼻先で車を転がすシーンは、これは誰でも気が付く1作目のT-レックスが子供たちの乗った転覆した車を襲うシーンの再現である。ご丁寧にマルコム博士が燃える棒を振り回して恐竜の気を逸らす場面までそのまんま登場する。

5.これが大笑いだが、終盤、バイオシン社研究所の円い噴水の前T-レックスが一瞬通り過ぎるシーンがあるが、これが毎回お馴染みのポスターにあるパークのロゴマークとそっくりの絵柄となる。

6.ドジスンが研究所を脱出する際、赤いシェービング・クリームの缶を大事そうに持ち出すシーンがあるが、これ上記にも書いた、1作目でドジスンがドネリーに恐竜の胚を入れるよう渡したあの缶である。ドネリーが失敗して泥の中に落とし、行方不明になっていたのだが、その後わざわざパークを訪れて見つけ、あの作戦失敗の記念として大事に保管していたのだろうか。これも1作目を観て、あれはどうなったのだろうかと思っていたファンに対する宿題の解決とも言える。

7.その直後、ドジスンは1作目のドネリーと同じく、ディロフォサウルスに襲われ哀れな最後を遂げる。ディロフォサウルスに真っ黒い吐瀉物を吐きかけられる所までそっくりである。


探せばまだまだあるかも知れないが、私が気付いたのは上記まで。多分マニアックなファンが何度も観て見つけてくれるかも知れない。他に気付いた方がいたら教えてくださいね。


Valleyofgwangi最後におマケ。冒頭でオーウェンが馬に乗って、投げ縄で恐竜を捕まえるシーンが登場するが、これ多分、レイ・ハリーハウゼンが特殊効果を担当した「恐竜グワンジ」(1969)のオマージュではないだろうか。

「恐竜グワンジ」にも、カウボーイ姿の主人公が投げ縄で恐竜グワンジを捕えようとするシーンがある。

 

Valleyofgwangi2「恐竜100万年」と並んで、ハリーハウゼンの恐竜コマ撮りアニメートが光る作品である。スピルバーグか監督のトレボロウのどちらかが、多分この作品のファンではないかと思う。恐竜ファンにはお奨め。

 

 

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コメント

まあ、ちょっと食い足りない所もありましたが楽しく見ました。
シリーズ初期のローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラム、サム・ニールが出演するのが楽しいですね。
サスペンスが効いていて面白かったです。
悪役がドジなのはお約束。
悪役のキャンベル・スコットは名優ジョージ・C・スコットの息子だそうです。

投稿: きさ | 2022年8月14日 (日) 12:17

◆きささん
私もちょっと文句つけたいところもいくつかありますが、シリーズ最終章という事でいろんなサービスを盛り込んでくれた、賑やかなお祭り作品として楽しめたから個人的には満足です。
>悪役がドジなのはお約束。
悪役の名前が“ドジ”スンなのに引っ掛けてます?(笑)。

投稿: Kei(管理人 ) | 2022年8月14日 (日) 17:26

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