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2022年12月26日 (月)

「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」

Wayofwater 2022年・アメリカ   192分
製作:Lightstorm Entertainment=20世紀スタジオ
配給:ディズニー
原題:Avatar: The Way of Water
監督:ジェームズ・キャメロン
原案:ジェームズ・キャメロン、 リック・ジャッファ、 アマンダ・シルバー、 ジョシュ・フリードマン、 シェーン・サレルノ
脚本:ジェームズ・キャメロン、 リック・ジャッファ、 アマンダ・シルバー
撮影:ラッセル・カーペンター
音楽:サイモン・フラングレン
製作:ジェームズ・キャメロン、 ジョン・ランドー
製作総指揮:デビッド・バルデス、 リチャード・ベイナム

2009年に公開され、全世界歴代興行収入記録を塗り替えた「アバター」の13年ぶりとなる続編。監督は前作に引き続きジェームズ・キャメロン。出演者も前作のサム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガニー・ウィーバー、敵役のスティーブン・ラングらが続投。

(物語)地球から遠く離れた神秘の星パンドラ。元海兵隊員のジェイク・サリー(サム・ワーシントン)はパンドラの一員となり、先住民ナヴィの女性ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と結ばれ、4人の子供たちと平和に暮らしていた。しかし再び人類がパンドラに現れた事でその生活は一変する。神聖な森を追われたジェイクとその一家は、未知なる海の部族の元に身を寄せることになる。そんな美しい海辺の楽園にも、侵略の手が迫っていた…。

前作「アバター」を観た時は感動、興奮した。見た事のない、衛星パンドラの大自然の風景やさまざまな生き物たちが最新のCG技術で、実写と見まがう程のクオリティで眼前に展開する。しかも奥行きのある3D立体映像が、他の3D作品を寄せ付けないほどの圧倒的ビジュアルで眼前に迫って来る。私はI-MAXシアターで観たので余計感動した。映画を観ると言うより、新しい映像体験をさせられたと言った方が正解である。

物語も、先住民族を蹴散らし、圧倒的な武力で彼らを支配し服従を強いるスカイ・ピープル(地球人)側の横暴は、ネイティヴ・アメリカンを虐待して来たり、ベトナム戦争をはじめ強大軍事力で世界の警察として君臨した驕る大国・アメリカへの痛烈な批判がメタファーとして込められていた。自然への畏怖、環境破壊への警鐘テーマも見え隠れしていた。

荘厳なビジュアルだけに留まらず、そうした教訓的なテーマを作品世界に込めた上で、痛快王道アクション・エンタティンメントに仕上げたジェームズ・キャメロン監督は本当に天才だと思った。

さて、その前作から13年ものインターバルを経て、待ちに待った続編が遂に公開された。早速劇場に駆け付けた。無論3D上映シアターで。

(以下ネタバレあり)

映像は相変わらず、というか更に精緻、きめ細かさが増加していた。特に水の表現は圧倒的な素晴らしさで、ほとんど実写と区別がつかない程にレベルアップしていた。相当技術面で研究開発を重ねた事が窺える。
前作から13年かかったのも当然だろう。

物語の方も前作から10年後、ナヴィの女ネイティリと結婚したジェイクはネテヤム(ジェイミー・フラッターズ)、ロアク(ブリテン・ダルトン)、娘のトゥク(トリニティ・ジョリー・ブロス)の3人の子供を持ち、前作で亡くなったグレイス・オーガスティン博士のアバターから生まれたキリ(シガニー・ウィーバー)や幼い時にナヴィに取り残された人間の子供スパイダー(ジャック・チャンピオン)らも養子に迎えた7人家族で幸せに暮らしていた。

ところがそこに又もやスカイ・ピープルが襲って来てオマティカヤ族の森は焼き払われる。

実は前作でジェイクに殺されたクオリッチ大佐(スティーブン・ラング)が、自身のDNAをアバターの身体に組み込み復活し、ジェイクへの復讐に燃えて戻って来たのだ。
クオリッチの目的が自分への復讐だと悟ったジェイクは、オマティカヤ族に類が及ばないように族長の座から身を引き、家族を引き連れて長い旅の末、海の種族メトカイナ族の村に身を寄せる。しばらくは平穏な日々が続くが、執拗にジェイクの行き先を探すクオリッチは、とうとうジェイクの居場所を突き止め、巨大捕鯨船を指揮下に置いてジェイク一家に闘いを挑んで来る…。

といった具合に、3時間以上もある長編ながら、キャメロン演出はほとんどダレる所もなく、まさに緩急自在、圧倒的なCG映像の素晴らしさに酔わされてしまう。

ジェイク一家が海に囲まれた村での生活に、最初は慣れなかったり、メトカイナ族の子供たちといさかいを起こしたりしながらも、少しづつ馴染んで行くプロセスが時間をかけてじっくりと描かれる。
このシークェンスでの、子供たちが数々の海の生物に見惚れたり水中遊泳するシーンは本作の白眉である。まるで我々も一緒に水族館の水中を泳いでいるような錯覚を覚えてしまう。ここだけでも料金分の値打ちはあると言っていいだろう。

とりわけ、次男ロアクが勝手な行動をして父に叱られたり、厄介者扱いされながらも、ふとした事からトゥルクンと呼ばれる鯨に似た巨大な海の生き物と心を通わせ、そのトゥルクンの助けを借りて最後に大逆転勝利を収めるまでの怒涛のクライマックスは、圧巻と言うしかない。凄い。
併せて、長男ネテヤムの死で一時はバラバラになりかけた家族の絆が、ロアクやキリの活躍もあって回復して行く流れもパターンながら感動的である。

沈没する捕鯨船からの脱出シークェンスが、「タイタニック」そっくりであったり、「エイリアン2」に出て来たようなパワードスーツも登場したり、メトカイナ族が乗りこなす翼を持ち水中も泳げるトビウオのような生き物(下)のデザインが「殺人魚フライングキラー」(82)のフライングキラーを思わせたりと、あちこちに自作のパロディのようなお遊びがあるのも楽しい。

Wayofwater2

とまあ、いい所ばかり挙げたが、ややツッ込みどころが散見され、前作ほどの大傑作とまでは行かない出来である。

前作で死んだはずのクオリッチ大佐が、あれから10年も経ってアバターに改造され復活するのだが、10年前の本人の記憶をどうやって保存していたのか、本人が同意してないのに何故アバターの身体に移植したのか、そのプロセスが不明である。

オマティカヤ族の族長だったジェイクが、クオリッチ大佐に村が襲われた事で族長を返上し家族全員で逃げるわけだが、それはちょっと無責任のそしりを免れない。リーダーであるなら、自分の家族だけでなくオマティカヤ族全員を守らなくてはいけないと思うのだが。あの後、残りのオマティカヤ族がどうなったかも完全に無視されている。

クオリッチがジェイクに対する復讐という私怨だけで大勢の部下を引き連れ独断専行してるが、スカイピープルの上層部は何も言わないのだろうか。莫大な経費がかかってるはずだし。

パンドラの大気が人間に有毒という事で、唯一の人間、スパイダーがいつも透明マスクをしているのだが、酸素はどうやって供給しているのか。ボンベを背負っているようには見えないし、何日も補充しなくて大丈夫なのか、ボンベでなく空気浄化装置だとしても、その電源はどう確保しているのかとか。

前作にはほとんどアラは見られなかったし、完璧な出来だったので、本作の細かい難点がどうしても気になってしまう。

まあ3時間以上もある波乱万丈の物語だけに、細かい所を端折らざるを得ないのは仕方ないかも知れない。これだけの超大作を完成させ、感動と興奮を呼ぶのだから、そこらは大目に見るとしよう。
続編となるパート3も既に完成、再来年に公開予定との事で、全部で5部作になるらしい。気が遠くなりそうだが、果たして1、2作のクオリティが持続するか、更なる映像サプライズがあるのか、期待して待ちたい。

そんなわけで、CGを駆使した壮大な映像美に関しては100点満点だが、物語については前作よりやや落ちる。それだけ前作が完璧だったという事だ。総合点では (採点=★★★★☆)という所か。

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コメント

 管理人 様

あけましておめでとうございます。今年も鑑賞の参考にさせてもらいます。宜しくお願いします。
さて、今年最初の鑑賞です。3時間オーバの時間に、寝るだろうなと思いつつも全くの杞憂でした。確かに、ストーリーで気になる点があるものの、最後まで押し切る映像のパワーは流石でした。

投稿: 自称歴史家 | 2023年1月 2日 (月) 19:36

◆自称歴史家さん
当記事が参考になれば幸いです。
ド迫力のSFアクション大作映画をお正月に大画面で観るのは、気分も爽快になっていいと思いますよ。
本年も当ブログをご贔屓に、よろしくお願いいたします。

投稿: Kei(管理人 ) | 2023年1月 3日 (火) 11:37

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