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2024年4月13日 (土)

「デューン 砂の惑星 PART2」

Dunepart2 2024年アメリカ   166分
製作:ワーナー=Legendary Pictures
配給:ワーナー・ブラザース映画
原題:Dune: Part Two
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
原作:フランク・ハーバート
脚本:ドゥニ・ビルヌーブ、ジョン・スパイツ、クレイグ・メイジン
撮影:グレイグ・フレイザー
音楽:ハンス・ジマー
製作:メアリー・ペアレント、ケイル・ボイター、パトリック・マコーミック、タニヤ・ラポワンテ、ドゥニ・ビルヌーブ

2021年に公開されたフランク・ハーバート原作「DUNE/デューン 砂の惑星」の続編。監督は前作に引き続きドゥニ・ビルヌーブ。出演も同作のティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリンらが続投する他、新たに「エルヴィス」のオースティン・バトラー、「ミッドサマー」のフローレンス・ピュー、「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」のレア・セドゥが参加。

(物語)その惑星を制する者が全宇宙を制すると言われる“砂の惑星・デューン”こと惑星アラキスで繰り広げられたアトレイデス家とハルコンネン家の壮絶な戦いは100年間続いた末に、ハルコンネン家の陰謀によってアトレイデス家は後継者・ポール(ティモシー・シャラメ)を残し一族皆殺しにされてしまった。ポールは砂漠の民チャニ(ゼンデイヤ)と心を通わながら、救世主としての運命を受け入れ、民を率いて行く。そんな時、宿敵ハルコンネン家の次期男爵フェイド=ラウサ(オースティン・バトラー)がデューンの新たな支配者として送り込まれて来る。

Part1の公開から3年。かなり待たされたけれど、無事完成・公開に至った事は何よりである。

前作の批評にも書いたけれど、ストーリーの基本ラインは“悪人によって滅ぼされた一族の末裔である主人公が、仲間を集めて反撃し、最後に勝利する”という王道パターンで、原作はそこに“メランジ”と呼ばれる天然資源の採掘権をめぐっての利権騒動や、フレメンと呼ばれる先住民、宿敵ハルコンネン一派、さらに皇帝シャッダム四世などの多彩な登場人物を配して、全体としては陰謀渦巻く壮大な権力闘争叙事詩になっている。

宇宙を舞台にしながらも、マーベル・コミックや「スター・ウォーズ」のような娯楽大作とは違った、中世宮廷劇に近い文芸大作と言えるだろう。SF的な未来兵器やガジェットが一切登場しないのも、登場人物の服装が中世そのままであるのもその為である。

この原作を、「メッセージ」でも重厚な演出ぶりを見せたドゥニ・ビルヌーブ監督が見事に映画化し、素晴らしい傑作となったのが前作。本作にも期待が高まる。
ただ人物関係がかなり複雑であるだけに、続編である本作を観る前に、最低でも前作をきちんとおさらいしておく事をお奨めする。

(以下ネタバレあり)

前作は逃げ延びたポールとその母・ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)が砂漠の民フレメンと出会い、ポールを予言の救世主と信じるフレメンたちに二人は匿われ、やがてポールはフレメンの少女戦士チャニ(ゼンデイヤ)とも心を通わせて行く所で終わっていた。

本作では、ポールが自身の戦闘能力を高める為の修練、特に巨大なサンドワームを乗り物として使いこなす訓練ぶりや、チャニとの恋模様もじっくりと描かれる。

ちょっと複雑なのは、ジェシカは他人の心を操る特殊能力を持つ女性組織ベネ・ゲセリットの一員だったが、教母に背いて男の子・ポールを産んだという経緯がある。そのジェシカのお腹には新たな生命が宿っている。
そしてジェシカはフレメンの新たな教母となり、ポールに、男が飲めば死んでしまうはずの「命の水」を飲ませ、解毒作用によって未来が見える能力を覚醒させる。そしてポールは救世主となる運命を受け入れるのである。

ポールを演じるティモシー・シャラメが、前作よりも逞しくなり、闘うヒーローとしての存在感を増しているのがいい。

前作同様、SFとしてのアクション・シーンはごく控えめ、荘厳で重厚なビルヌーブ演出は相変わらず。但しサンドワームが姿を現すシーンの迫力は前作以上である。


Dunepart22

そのサンドワームにまたがったポールたちの一群が宿敵ハルコンネン男爵の陣地に攻め入り、ハルコンネンの甥で次期男爵のフェイド=ラウサと一対一の決闘を行うシーンがラストのクライマックスとなる。

スキンヘッドの残忍な性格のフェイド=ラウサ、誰が演じているのか判らなかったが、エンドクレジットでオースティン・バトラーだと知って驚いた。あの「エルヴィス」でエルヴィス・プレスリーを演じた人である。あれで人気が出ても、悪役にも進んでチャレンジしているのはエラい。

そしてポールが決闘に勝利し、皇帝シャッダム四世(クリストファー・ウォーケン)に譲位を迫り、ポールは皇帝の娘イルーラン(フローレンス・ピュー)を妻として迎え入れ、新皇帝となる。

ポールと愛を約束したチャニは残念ながら先住民という出自、皇帝の妻にはなれないのは当然である。チャニは複雑な思いながら、ジェシカの説得もあってこの運命を受け入れる。
ここは「ローマの休日」の逆バージョンみたいだ(笑)。

ラストは、チャニが砂漠で悲しみを怒りと共にぶつけるシーンでエンドとなる。
映画が終わっても、ポールとチャニの物語はまだ続くであろう事を予見させるエンディングであった。


SFと言うよりは、運命に翻弄され、運命を背負って生きる人たちの、壮大な人間ドラマであった。さすがはドゥニ・ビルヌーブ監督、見事な秀作であった。

画面は暗いし、展開は重苦しいので、スカッとしたエンタティンメントを期待した人には物足りないかも知れない。しかし原作の世界観を完璧に映画化したという点では、これ以上望みようがないパーフェクトな出来である。ビルヌーブ監督だからこそ成し遂げたと言えるだろう。

実は予知能力を持ったポールが、ジェシカが将来産むポールの妹アリアの姿を一瞬幻視するシーンがある。演じているのはアニャ・テイラー=ジョイ。
ワンカットの登場だけではもったいないので、Part3もある予感がする。

ビルヌーブ監督はPart1完成後のインタビューで、「デューン」シリーズの二作目「デューン/砂漠の救世主」の映画化も構想にあって、計三部作にするつもりだと語っていたので、何年後か分からないが、Part3を作るつもりなのだろう。期待して待ちたい。  (採点=★★★★☆

 

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コメント

圧倒される映像、複雑なストーリーを上手くまとめた手腕。さすがです。少なくとも第3部までは、製作してくるのを期待して待ちましょう。

投稿: 自称歴史家 | 2024年4月21日 (日) 13:20

◆自称歴史家さん
ビルヌーブが第三部として構想している「砂漠の救世主」は、原作では本作の12年後が舞台のようなので、ポールも30歳代半ばになってるわけですね。ティモシー・シャラメ自身がこのポール役を引き続いて演じるのか、年齢を考えて別の役者に交代するのか。まさか第三部の製作が10年以上後になる、なんて事はないでしょうね(笑)。
まあ気長に待ちましょう。

投稿: Kei(管理人 ) | 2024年4月23日 (火) 20:31

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