「ツイスターズ」
2024年・アメリカ 122分
製作:アンブリン・エンタティンメント=ユニヴァーサル
配給:ワーナー・ブラザース映画
原題:Twisters
監督:リー・アイザック・チョン
キャラクター創造:マイケル・クライトン、アン=マリー・マーティン
原案:ジョセフ・コジンスキー
脚本:マーク・L・スミス
撮影:ダン・ミンデル
音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ
製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、トーマス・ヘイスリップ、アシュリー・ジェイ・サンドバーグ
1996年の「ツイスター」の続編となる、巨大竜巻に立ち向かうストームチェイサーたちの活躍を描いたアクション・アドベンチャー。監督は「ミナリ」のリー・アイザック・チョン。出演は「ザリガニの鳴くところ」のデイジー・エドガー=ジョーンズ、「トップガン マーヴェリック」のグレン・パウエル、「トランスフォーマー ビースト覚醒」のアンソニー・ラモスなど。
(物語)ニューヨークで自然災害を予測し被害を防ぐ仕事をしている気象学の天才ケイト(デイジー・エドガー=ジョーンズ)は、竜巻に関して悲しい過去を抱えていた。そんな時、故郷オクラホマ州で巨大竜巻が多数発生していることを知り、また学生時代の友人ハビ(アンソニー・ラモス)からの懸命の依頼で、竜巻を倒すために故郷へ戻る事にする。そして新たに出会ったストームチェイサー兼映像クリエイターのタイラー(グレン・パウエル)と共に、前代未聞の竜巻攻略計画を立て、巨大竜巻に立ち向かって行く…。
1996年のスティーヴン・スピルバーグ製作、ヤン・デ・ボン監督の「ツイスター」は、その3年前の「ジュラシック・パーク」で躍進を遂げたCG特殊効果をさらに発展させたディザスター・ムービーの秀作だった。その迫力はまるで本物の竜巻と遭遇したドキュメンタリーを見ているかのようだった。このヒットで、以後DVDスルーのバッタもんも含めて無数の「ツイスター」亜流作品が作られる事となった(映画サイトで「ツイスター」で検索してください)。
酷いのになると、「シャークネード」のように、巨大竜巻がサメを巻き上げ、陸地に降って来る(笑)という、サメ映画と合体した作品まで作られた。いやはや。
そして前作から28年、「ツイスター」の本家はこちらだとばかりに、遂にその続編の登場である。あれからCG技術も格段に進歩し、前作を上回るスケールの大きな映像を楽しむ事が出来る。
(以下ネタバレあり)
続編と謳ってはいるが、前作に登場した人物は本作には登場しない。ただストーリー展開は前作と似通っているので、前作の現代的リブートと言うべきかも知れない。
但し、冒頭に前作でも活躍した竜巻観測装置“ドロシー”が登場するので、その点のみ続編的作品とは言える。
主人公のケイトは5年前、学生仲間たちと竜巻の研究をしていたが、竜巻の威力を過小評価していた為、竜巻に巻き込まれ恋人も含めた仲間を死なせてしまい、辛うじてケイトと、離れた場所にいたハビの2人だけが助かった。そのトラウマが心に重くのしかかっている。
前作でも主人公のジョー(ヘレン・ハント)は竜巻で父を失っており、竜巻で愛する人を失ったという辛い過去は前作とも共通する。
ケイトは、今は竜巻から距離を置いているが、故郷オクラホマで竜巻が異常発生している事、5年前の生き残り仲間ハビから力を貸して欲しいとの依頼を受けた事で、再び竜巻との戦いに参加する事となる。しかしトラウマもあって深く関わるのを躊躇し、1週間だけの短期参加とする。
さすがに28年も経つと、ハイテク技術もレベルアップしてて、3地点立体レーダーだとか、ドローンも出て来るし、前作では不可能だった、“竜巻消滅装置”も登場する。現実にはまだ実用化は無理だが。
ケイトたちが出会うストームチェイサーのタイラーは、登録者数100万人を超す人気YouTuberというのも時代を感じさせる。
前作でもライバルチームとの衝突などは描かれていたが、本作はちょっと捻りを効かせて、お気楽なYouTuberかと思っていたタイラーが、実はグッズ販売や配信で得た収入を竜巻被害者支援に充てていたり、ケイトの仲間だったハビが竜巻被害者を食い物にする不動産業者と結託していたり、と最初の印象とは逆の展開となる。
まあハビの真意は別にあった事が後に判るのだが。
結局最後は、ケイトがタイラー、ハビとも力を合わせ、竜巻の被害を食い止めるべく、ケイトが竜巻消滅装置を積んだ車で竜巻に突入して行く怒涛のクライマックスとなる。
結末は予定調和で、竜巻は消滅し、ケイトはトラウマを克服し、どうやらタイラーともいい関係になる事を匂わせハッピーエンドとなる。
竜巻に飛ばされないよう、ドリルを地面にめり込ませて車を固定する装置が面白い。これがラストにも効果的に使われている。
「ミナリ」という地味な人間ドラマの秀作を作ったリー・アイザック・チョンが、こんなVFXフル活用のエンタティンメントを監督したとは意外だが、「ノマドランド」のクロエ・ジャオもマーベル・コミック・アクションの「エターナルズ」を監督したように、ハリウッドで活躍するアジア系監督は懐が広いのかも知れない。
ケイトが実家に久しぶりに帰り、母と言葉を交わすシーンはリー・アイザック・チョンらしさが出ていたが。
CGによる竜巻来襲シーンはさすがの迫力、火を巻き上げるファイヤー・ストームも登場したり、スケール的には前作を凌ぐ。私は通常スクリーンで観たが、IMAXで観たなら興奮するだろうな。
ただ前作と比較すると、、主要人物のキャラクターは既視感があるし、物語自体も前作とあまり変わり映えしない。VFXを現代的にバージョンアップしたリメイク、という印象が拭えない。
そんなわけで、観ている時には映像を楽しんだが、観終わった後で振り返ると、作品的には前作より落ちる、というのが私の評価である。 (採点=★★★☆)
(付記)
映像面でちょっと気になったのは、竜巻が来襲しているのに、所どころで人物に太陽光が当っているシーンがあった。撮影時、雲が隠れるまで待つ余裕がなかったのか、あるいは曇り空で撮影中、晴れてしまったのかも。
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コメント
1996年『ツイスター』の続編。
実は前作は見逃しているので比較できませんが、面白く見ました。
主人公のデイジー・エドガー=ジョーンズがなかなか魅力的です。
アメリカ人の役ですが、イギリスの女優。
過去のトラウマもうまく表現していました。
グレン・パウエル、アンソニー・ラモスら周りの俳優も好演していました。
お話もよく出来ていてラストの竜巻に立ち向かう所がよく出来ていて盛り上がりました。
投稿: きさ | 2024年8月14日 (水) 10:59
◆きささん
前作を見ていなければ、十分面白いと思いますよ。
前作は「スピード」のヤン・デ・ボン監督だけあって、スリリングかつダイナミックな演出は本作より勝っていると言えます。
そう言えば、最近デ・ボン監督の名前あまり見ませんね。復活して欲しい監督の一人なんですけどね。
投稿: Kei(管理人 ) | 2024年8月15日 (木) 18:28