「ビートルジュース ビートルジュース」
2024年・アメリカ 105分
製作:Geffen Company=Plan B Entertainment
配給:ワーナー・ブラザース映画
原題:Beetlejuice Beetlejuice
監督:ティム・バートン
キャラクター創造:マイケル・マクダウェル、ラリー・ウィルソン
原案:アルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラー 、セス・グラハム=スミス
脚本:アルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラー
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
音楽:ダニー・エルフマン
製作:マーク・トベロフ、デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、トミー・ハーパー、ティム・バートン
ティム・バートン監督が1988年に手がけたホラーコメディ「ビートルジュース」の36年ぶりの続編。出演は前作に続いてビートルジュースをマイケル・キートン、リディアをウィノナ・ライダー、リディアの母親デリアをキャサリン・オハラが演じる。またNetflixドラマ「ウェンズデー」のジェナ・オルテガ、「007 スペクター」のモニカ・ベルッチ、「哀れなるものたち」のウィレム・デフォーが新たな出演者として加わった。
(物語)死後の世界で「人間怖がらせ屋」を営む推定年齢600歳のビートルジュース(マイケル・キートン)は、かつて結婚を迫るもかなわなかったリディア(ウィノナ・ライダー)の事をいまだに忘れられずにいた。一方のリディアは自身の霊能力を生かしてTV番組『ゴーストハウス』の司会者として人気を博しているが、一人娘アストリッド(ジェナ・オルテガ)は幽霊の存在を信じておらず、母の霊能力もインチキだと思っており、その関係に頭を悩ませていた。ある日、死後の世界で何世紀にもわたって身体を倉庫に封じ込められていたビートルジュースの元妻ドロレス(モニカ・ベルッチ)が復活し、ビートルジュースに対して復讐を誓って探し回っていた。そして迎えたハロウィンの日、アストリッドがひょんなことから死後の世界に囚われてしまう。娘を救い出したいリディアは最終手段としてビートルジュースに助けを求めるが…。
なんとまあ、ティム・バートン監督の出世作である「ビートルジュース」の、36年ぶりの続編の登場である。マイケル・キートンをはじめ前作の主な出演者がそのまま再登板。バートン監督のファンとしては見逃すわけには行かない。
1作目の「ビートルジュース」は初公開時に観ている。死んで幽霊になった人間が主人公、という設定も異色だが、人間怖がらせ屋で推定年齢600歳のビートルジュースのキャラクターがぶっ飛んでて強烈だった。ビートルジュースを演じたマイケル・キートンがまさに怪演。バートンの演出も、ふざけてると言うか遊んでると言うか、ハチャメチャのブラック・コメディ・タッチ。でも楽しかった。これでティム・バートンのファンになった。以後「シザーハンズ」、「エド・ウッド」と秀作を連打、人気監督になって行くが、その出発点はこの「ビートルジュース」であるのは間違いない。
そんなバートン監督の出世作とも言える作品の続編を、36年も経った今頃作るというのも変わっている。最近は「アリス・イン・ワンダーランド」とか「ダンボ」とか、ディズニー・アニメの実写リメイクを撮っているので、あのクレイジーな作品の世界感が再現出来ているのかちょっと心配だった(でも「アリス・イン-」はさすが、バートン色に染め上げられていたが)。
心配は杞憂だった。キートン演じるビートルジュースは昔のままで相変わらずハジケまくっているし、バートン演出も36年前と作品タッチはほとんど変わっていない。その上、随所に前作も含めた自作のパロディを盛り込んで、さながらティム・バートン作品の集大成とも言える快作になっていた。さすがである。
前作を観ていなくても十分面白いが、前作の名シーンの反復ギャグやパロディがふんだんに登場するので、前作を観ていれば余計楽しめる。
(以下ネタバレあり)
冒頭からして、前作同様、郊外の街の空中撮影が延々と続く。
前作はその俯瞰映像が実景、と思わせて、いつの間にかジオラマの模型の街に変わっていたが、本作でも途中、あ、模型だな、と思わせるシーンがあり、前作のリピートかと思わせておいて、最後にカメラが丘の上のゴーストハウスに近づくと、窓辺にたたずむリディアを捕える(つまり実景)…と、逆パターンになっていて、ここでまずニンマリさせてくれる。
前作では、多感な少女のリディア(ウィノナ・ライダー)が、義母のデリア(キャサリン・オハラ)との関係に悩んでいたが、本作ではリディアが母親になって、娘のアストリッド(ジェナ・オルテガ)との関係に頭を悩ませている…と、同じような母娘関係が再現されているのも面白い。
それにしても、ウィノナ・ライダーはともかくも、デリアのキャサリン・オハラが前作とほとんど変わらない姿を見せているのには驚嘆させられる。
リディアは前作でビートルジュースと絡んだ事で霊能力を持つようになり、それを生かしてテレビ番組「ゴーストハウス」の司会者として活躍しているが、アストリッドは幽霊の存在を信じておらず、母の霊能力もインチキだと思っている。それゆえ母とはギクシャクした関係が続いている。
ある時、リディアの父チャールズが飛行機事故で海に墜落、サメに食われて死んだとの知らせが入る。この流れをコマ撮り(ストップモーション)アニメで表現しているのも、ストップモーション・アニメーター出身のバートンらしいこだわりである。
チャールズの葬式で、聖歌隊の少年たちが歌う讃美歌がなんと!「バナナ・ボート」。前作でチャールズが友人を呼んだパーティで、全員が「バナナ・ボート」の歌に合わせて踊るシーンがあり、大笑いさせられたので、前作を観てればこのシーン、余計に笑える。チャールズの葬送には確かに適してると言える。
しかし「バナナ・ボート」を讃美歌風に歌っても違和感がないのは新発見だった(笑)。
またリディアは最近、人々の中にビートルジュースの姿を霊視するようになる。もしかしたら、この世界に何か不吉な事が起きる前兆ではないかとリディアは不安な気持ちになる。
その予感は当たり、数世紀前から死後の世界の倉庫に封じ込められていたビートルジュースの元妻ドロレス(モニカ・ベルッチ)が復活してしまう。彼女はビートルジュースに対して復讐を企てているのだ。
バラバラにされていたドロレスが、ホッチキスを使って体を繋ぎ合わせて行くシーンがグロテスクだが面白い。
ちなみにこのホッチキス止めのドロレス、多分バートン製作・原案の「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」のつぎはぎ人形サリーのパロディだろう(右)。
リディアは、自分の番組プロデューサーであるローリー(ジャスティン・セロー)の熱烈な求愛に負け、ついに結婚する事になる。
そんな母に不信感を抱くアストリッドは、結婚式を抜け出し自転車で走るうち、ブレーキが利かずある家の庭に飛び込んでしまう。
その庭の、大木の上の小屋にいた青年ジェレミー(アーサー・コンティ)と親しくなり、アストリッドは彼と一緒にハロウィンを過ごす約束をする。
この大木が、バートン監督作「スリーピー・ホロウ」の不気味に曲がった大木とそっくりのデザイン。この曲がった大木は他のバートン作品にもしばしば登場する。
だが後に、ジェレミーは実は死者の霊だった事が判る。彼はアストリッドを亡き父に会えると騙して霊界に連れて行き、アストリッドを自分の身代わりにして現世に生き返ろうと企んでいる。
死んで霊になっていたジェレミーの姿をアストリッドは見る事が出来たわけだが、多分母の霊能力を部分的に受け継いでいたのだろう。
ここは「シックスセンス」を思わせる。
それを知ったリディアは、娘を取り戻すにはビートルジュースの力を借りるしかないと判断し、その名前を3回呼んでビートルジュースを呼び出す。
ビートルジュースはリディアに結婚誓約書を書かせ、二人でアストリッドを探すべく、霊界に飛び込んで行く。
ここから先はシッチャカメッチャカ、霊界での大冒険と賑やかなドタバタぶりが描かれ、バートン節全開、大いに楽しめる。ソウル・トレインの列車内で踊りまくるシーンは特にテンションが上がる。
アストリッドが見つけた父のリチャード(サンティアゴ・カブレラ)は南米の河で溺死したので、死んでも体にピラニアをくっつけているのがおかしい。祖父チャールズはサメに上半身を食われたので、下半身だけの姿なのもバートンらしいブラック・ユーモア。
リチャードやリディアの努力とビートルジュースの助けによって、アストリッドは無事元の世界に帰れてめでたしとなる。リチャードの娘を思う気持ちには泣ける。
また、幽霊も母の霊能力も信じていなかったアストリッドが、霊界への冒険を通してそれらを信じるようになり、母とも和解する、親子愛の物語としてまとめているのも悪くない。
ビートルジュースは今回もリディアとの結婚は叶わず、ちょっと可哀そう。
ドロレスが思ったほど大暴れしなかったのはちょっと残念。霊界の刑事を演じたウィレム・デフォーは短い出番ながらも怪演で楽しませてくれる。
そしてエンディングにもイタズラが。詳しくは言えないが、怖いシーンがあってリディアが悲鳴をあげると、実は夢だったというオチ。
ここで流れている曲がブライアン・デ・パルマ監督「キャリー」のテーマ曲。まさしくあの映画のパロディをやっている。
まあこんな具合に、古くからのティム・バートン・ファンなら絶対楽しめる作品になっている。前作との繋がりもいくつかあるので、観る前に前作をDVDか配信で予習しておくもよし、本作を観終わってから前作を観て本作を思い返すもよし。いろんな楽しみ方が出来る作品だと言える。 (採点=★★★★)
| 固定リンク
コメント
ティム・バートン・ファンとしては大満足でした。
最近のバートンは妙にオトナになってしまって物足りません。
「アリス・イン・ワンダーランド」や「ダンボ」は良く出来ていますが、バートンの映画に良く出来た感はいらないんだな。
前半は割と地味ですが、霊界に行ってからは楽しめました。
投稿: きさ | 2024年10月20日 (日) 13:10
◆きささん
確かに最近のティム・バートン、丸くなって良作が多いのには私も不満。
本作では初心に帰って、昔の猥雑で下品でがさつなバートン・ワールドに回帰しているのには大いに満足でしたね。次作もこの路線で行ってくれたら嬉しいのですがね。どうなりますか。
投稿: Kei(管理人 ) | 2024年10月20日 (日) 17:03