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2025年4月27日 (日)

「ベテラン 凶悪犯罪捜査班」

Beteran2 2024年・韓国   118分
製作:C.J.エンタティンメント=Filmmakers R&K
配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス
原題:베테랑2 (英題:I, the Executioner)
監督:リュ・スンワン
脚本:リュ・スンワン、イ・ウォンジェ
撮影:チェ・ヨンファン
音楽:チャン・ギハ
製作:カン・ヘジョン、チョ・ソンミン、リュ・スンワン
プロデューサー:イ・ジュンギュ

2015年に韓国で大ヒットした刑事アクションドラマ「ベテラン」のシリーズ第2作。監督は前作や、最近では「密輸 1970」で知られるリュ・スンワン。主演は「ソウルの春」のファン・ジョンミン、共演は「D.P.-脱走兵追跡官-」のチョン・ヘイン、「オールド・ボーイ」のオ・ダルス、「三姉妹」のチャン・ユンジュ、ドラマ「梨泰院クラス」のアン・ボヒョンなど。

(物語)法では裁かれない悪人を標的にした連続殺人事件が発生。不条理な司法制度に不満を抱えていた世論は、私刑を下す犯人を、善と悪を裁く伝説の生き物“ヘチ”と呼び、正義のヒーローとしてもてはやすようになる。熱血ベテラン刑事ソ・ドチョル(ファン・ジョンミン)と凶悪犯罪捜査班、さらにドチョルに心酔する新人刑事パク・ソヌ(チョン・ヘイン)も捜査に加わり、事件は解決に近づくかに見えた。しかし犯人は刑事たちをあざ笑うかのように、次の標的を名指しする予告をインターネット上に公開する…。

評判がいい韓国製刑事ドラマのパート2。2015年公開の前作は見逃していたが、タイミングよく1作目がAmazon Primeで配信されていたので、予習の意味で先に鑑賞した。

Beteran1 これが予想以上になかなか面白かった。5人の犯罪捜査班のチームワークがよく、メインとなるベテラン刑事、ソ・ドチョル(ファン・ジョンミン)が、中年男で家庭では妻に頭が上がらず、子育てに悩んでいるなど、生活感が滲み出ていたのも出色。ドチョルは腕っぷしもあまり強くないが、正義漢に溢れ、警察上層部からストップがかかっても突き進む辺りは、「あぶない刑事」の中年版といった感じ。悪役が財閥の御曹司で、公開前年に発生した有名なナッツ・リターン事件で、財閥への批判が高まっていた時期というのも絶妙のタイミングで、笑いあり、社会性あり、アクションありの見事なエンタティンメントの快作であった。当時見逃していたのが惜しい。

ドチョルを演じたファン・ジョンミンは、昨年の「ソウルの春」で、悪名高い全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領役を快演していた。ドチョルとはまるで別人に見え、凄い役者だと思った。

そこで本作の登場である。前作から9年も空いたが、チーム長オ・ジェピョン(オ・ダルス)以下、前作のチーム5人が全員再登場である。9年のブランクをまったく感じさせない、前作と甲乙付け難い力作である。

(以下ネタバレあり)

冒頭、タイトル前の捕り物劇があるのも前作同様。今回は大がかりな違法カジノの現場を急襲する。屋上に逃れた敵との格闘もやっぱりコミカル。前作でも飛び蹴りに失敗していた紅一点の ミス・ボン(チャン・ユンジュ)が、相変わらず飛び蹴りをミスるシーンは、前作を観ていれば余計笑える。

前作ではまだ小学生だったドチョルの息子ウジンは高校生になっていて、学校で苛められているいるようだ。ドチョルの家庭の悩みも前作同様である。

タイトル後の本編になって、ここで描かれるのは、法で裁けなかった悪人を標的にした連続殺人事件である。

相手を突き飛ばしたり暴力を振るった事で相手を死なせてしまった悪い奴が、罪が不当に軽かったり、無罪になったりした事に対して世間が憤り、SNSなどで非難を浴びせたりする。
さらに「正義部長」と名乗るユーチューバー、パク・スンファン(シン・スンファン)がSNSでその悪人を追求する。するとその悪人を殺害する事件が続発する。しかも殺し方まで被害者の死に方と同じである。一種の報復殺人である。

これに対して世間は喝采、やがて世間はその犯人を、善と悪を裁く伝説上の生き物“ヘチ”と呼び、正義のヒーローともてはやす。
だが警察は、殺人は殺人、立派な犯罪であると、ドチョルたち凶悪犯罪捜査班は犯人逮捕に全力をあげる事となる。

SNSで特定の人間を大勢で叩いたり批判する事は近年多くなっている。それによって精神的に追い込まれる人も増えている。ユーチューバーが報酬稼ぎでそんな話題を採り上げる事も多い。“歪んだ正義”が蔓延している。本作はそこにズバリ斬り込んでいる。タイムリーな社会問題をテーマにする作風は前作と同じである。


ある時ドチョルたちは、“ヘチ”に狙われているとされる元受刑者、チョン・ソグ(チョン・マンシク)の身辺警護をする事になる。そのソグを狙う男が現れ、ドチョルたちが追うが、交通整理をしていた若い警官、パク・ソヌ(チョン・ヘイン)が容疑者を捕まえる。ヘチではなかったが。
ソヌの俊敏な身のこなしを見たドチョルは、チームに彼を加えてはどうかとチーム長に進言し、ソヌもドチョルに心酔していた事もあって、一緒に事件を捜査する事となる。

(以下重要ネタバレあり、注意)

 

 

後半、次第に明らかになるが、“ヘチ”の正体は実はパク・ソヌだった。捜査班チームに加わる事で内部情報を得たり、チョン・ソグをわざと保護されている警察の一室から脱出させ、殺害したりするのである。警官である事が隠れ蓑になっている。

彼の行動原理は、“正義の遂行”である。ソグのように、軽い刑で社会復帰した元犯罪者に天誅を加えよ、といった正義部長や世間の空気を読んで、正義の鉄槌を下したと思っている。
だがそれは、行き過ぎた正義、誤った正義である。

一方で、ドチョルも正義感が強く、時にやり過ぎる事もある。リミッターが振り切れる一歩手前でかろうじて自制しているが、そのリミッターを超えてしまったのがパク・ソヌである。両者は似た者同士なのである。

正義とは何か、警察はどうあるべきか…考えさせられるテーマである。

終盤は、ソヌの正体を見破ったドチョルとソヌの対決となる。頭の切れるソヌは、ドチョルの息子ウジンを別の場所に監禁し、手を引かなければ息子は死ぬとスマホの動画を見せて脅迫する。ウジンを助けに行けば、ソヌがこれから行おうとしている殺人を見逃す事になる。どちらを取るか、ドチョルは悩む。

危ない所に、チームのメンバーが駆け付けて、ウジンも救出され、逃げようとしたソヌは車の事故で心肺停止となる。このときドチョルは必死で心臓マッサージを行い、そのおかげでソヌは蘇生する。ソヌを死なせまいとするドチョルの行動も印象的である。

最後がいい。事件が解決し、ドチョルは家に帰るが、妻はもう寝ている。ドチョルは自分でラーメンを作るが、そこに息子ウジンが起きて来て、二人は無言でラーメンを分け合う。親子の愛情が感じられ、ちょっとジーンとした。


アクション刑事ドラマとしても十分面白く出来ているが、現代を象徴するさまざまな社会的テーマ…司法制度の不条理、SNSが孕む危険性、大衆の歪んだ正義心、正義とは何なのか…などが採り入れられており、アクションだけに留まらない、考えさせられる作品になっているのが秀逸である。

アメコミ風イラストによる楽しいエンドロールも前作同様。なおエンドロール後にも映像があるので最後まで席を立たないように。あれを見ると、パート3もありそうだ。期待して待ちたい。
…しかし、また9年も待たせないように願いたい(笑)。   
(採点=★★★★

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(付記)
Magnumforce 本作を観て思い出すのは、クリント・イーストウッド主演「ダーティハリー2」(テッド・ポスト監督)である。若い警官チームが、生ぬるい法律では悪を裁けないと、悪党どもを次々と殺して行くというお話で、若い警官が誤った正義心から、悪い奴らに私刑を加え、主人公の刑事がそれを阻止しようとする、といった具合にストーリー展開がよく似ている。出来は無論こちらの方が上である。
奇しくも、どちらも評判が良かったシリーズの2作目である。

 

 

 

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