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2025年4月21日 (月)

「セキュリティ・チェック」  (VOD)

Carryon 2024年アメリカ   119分
製作:ドリームワークス・ピクチャーズ
配信:Netflix
原題:Carry-On
監督:ジャウム・コレット=セラ
脚本:T・J・フィックスマン
撮影:ライル・ビンセント
音楽:ローン・バルフェ
製作総指揮:ブライアン・ウィリアムズ、 ホリー・バリオ、 ジャウム・コレット=セラ、 セス・ウィリアム・マイヤー、 スコット・グリーンバーグ

クリスマスイブの空港を舞台に、謎の男に脅迫された運輸保安局員の闘いを描くサスペンス・スリラー。監督は「トレイン・ミッション」のジャウム・コレット=セラ。主演は「ロケットマン」のタロン・エガートン。共演は「ディセンダント」シリーズのソフィア・カーソン、「モンスター上司」のジェイソン・ベイトマン、「ティル」のダニエル・デッドワイラーなど。Netflixで2024年12月13日から配信。

「アンノウン」で注目して以来、ファンとなったジャウム・コレット=セラ監督の新作である。本作もお得意のサスペンス・スリラーである。
と言っても、本作はNetflixによる配信作品で、劇場公開はされない。スピーディかつスリリングな佳作で、劇場で公開すればもっと楽しめる作品なのにもったいない。仕方なく配信で鑑賞。

(物語)かつて警察官を目指していたイーサン・コーペック(タロン・エガートン)は、現在はロサンゼルス国際空港の運輸保安局員として冴えない日々を送っている。クリスマスイブ、搭乗客の手荷物検査を担当することになった彼は、謎の男(ジェイソン・ベイトマン)から脅迫を受け、ある人物が持ち込む危険物を見逃すよう指示される。断れば妊娠中の恋人ノラ(ソフィア・カーソン)を殺すと言う。狡猾な脅迫者をどうにか出し抜こうと孤軍奮闘するイーサンだったが…。

舞台は空港、時期はクリスマス、相手はテロリスト…とくれば、ブルース・ウィリス主演の傑作サスペンス・アクション「ダイ・ハード2」をいやでも思い出す。主人公イーサンの奮闘ぶりもウィリス扮するマクレーン刑事といい勝負だ。但しイーサンは刑事でなく只の運輸保安局員だから、協力を得られる範囲も限られる。腕っぷしも強い方ではない。強みは空港内のセキュリティと地理を知り尽くしている事だけだ。

(以下ネタバレあり)

イーサンは警察官になる夢を持っていたが、警察学校の試験に落ち、今は空港の保安局員に甘んじている。恋人ノラからは、夢をあきらめないでと励まされている。

彼の仕事は空港で乗客の手荷物チェックを行う事。今はⅩ線検査でおかしな物があれば警告表示が出るので楽だ。少しでも不審な荷物があれば中味をあらためさせてもらう。

Carryon2

そんな時イーサンは、不審なイヤホンがあるのを見つける。そこに彼のスマホに、それを耳に入れよとの非通知LINEが。不審に思いながらもイヤホンを耳に入れると犯人から、ある荷物をフリーで通過させよとの指示が。断ろうとすると、仲間がお前の恋人ノラを殺すと脅迫される。

犯人は監視カメラ、サーバーをハッキングして、イーサンの行動を監視し、イーサンや彼の同僚の個人情報も把握している。おそろしくハイテクに熟知し頭がいい。そんな犯人を何とか出し抜き、上司、警察に知らせようとするイーサンとの虚々実々の攻防が展開される事となる。

イーサンは密かに同僚の警察官ライオネルに偽造検出ペンで事情を書いた搭乗券を渡すが、直後にライオネルは急死する。それも犯人の仕業だ。言う事を聞かなければお前も恋人も同じ運命だと犯人は警告する。相手は本気だ。ノラの命を守る為、イーサンは仕方なく要求を呑まざるを得ない。犯人が指示した共犯者・マテオの荷物を、Ⅹ線アラートを無視して通過させる。

犯人が飛行機に積み込もうとしているのは、ロシアから不正入手した神経系の猛毒・ノビチョク。これを機内で発散させれば乗客250人全員が死ぬ事となる。そんな事は許せない。だが断れば恋人ノラは死ぬ。どちらを取るか、イーサンは悩みながらも、犯人と対決しようとする。

イーサンは遂に犯人を見つけるが、爆破タイマーをセットされ、10分以内に解除しないと猛毒が空港内に噴射される、解除方法はリモートで教えると言う。
イーサンは共犯者、マテオを取り調べていた彼の上司のサーコフスキーの元に駆け付けるが、犯人に彼を撃てと命令され、躊躇している内にマテオはサーコフスキーを殺してしまう。
実はマテオも自分の恋人の男を犯人に人質に取られ脅迫されていた事が判る。どこまでも卑劣な犯人だ。

犯人の指示に従い、イーサンはギリギリで解除に成功する。このタイムリミット・サスペンスもハラハラさせるが、ここでイーサンが解除方法を学んだ事が後に生きて来る。なかなかよく出来た脚本だ。

終盤はマテオ及び犯人とのノビチョクを積んだキャリーケースの奪い合いが空港の荷物保管所内で展開される。ここもスリリングだ。しかしあんな広い保管所に誰も係員がいないのかと突っ込みたくなる(笑)。後になって分かるが、イーサンはこの時、キャリーケースをやや大き目のものにすり替えていた

その間、警察も犯人の狙いを嗅ぎつける。飛行機に乗る予定の女性議員をノビチョクで死なせ、それをロシアの仕業だと推察させて米ロの対立を煽り、武器製造業者を儲けさせるのが目的だったのだ。
少人数(3人?)の割に、やってる事はまるで007シリーズにおけるスペクター並みのスケールだ(笑)。

犯人はノビチョクの入ったケースを機内に持ち込もうとするが、持ち込みサイズを超えていたので荷物室に移さざるを得なかった。これがイーサンの狙いだった。

最後は、イーサンが決死の覚悟で出発寸前の機内に潜り込み、荷物室に行って、爆破装置を解除する。それを察知した犯人が荷物室に降りて来て、最後のイーサンとの対決となる。


なかなか面白かった。スリルに次ぐスリル、頭を使った頭脳合戦、空港という巨大な空間の中を懸命に走り回るイーサンの姿、それぞれ見ごたえあり。彼の走り方は「ミッション・インポッシブル」のトム・クルーズを連想させる。偶然だがクルーズの役名もイーサン・ハントだった。

そしてラスト・シーンを、あのバッジで締めくくる演出も粋だ。

途中の本筋とはあまり関係ないカーチェイスも、アクション映画としての監督のサービス精神と考えれば納得だ(あのカメラワークは凄い)。

ツッ込めば、いくらでもツッ込み所はあるのだが(飛行中の荷物室って恐ろしく寒いはずとか、最後のあれじゃ絶対ノビチョク漏れてるよとか)、そんな事を感じさせないくらい緊迫感が持続する演出が見事だし、何より、恋人を守る為に、乗客の命を救う為に、そして、航空機の安全を守るという自分の職務を果たす為に、危険を顧みず行動する主人公の姿には感動を覚えてしまう。

原題"Carry-On"は名詞として「飛行機内に持ち込む手荷物」という意味だが、間のハイフンを抜いた"Carry On"は「困難にもめげずに継続する」という意味もある。両方の意味を兼ねた秀逸な題名だ。邦題は平凡すぎるのがちょっと残念。

ともあれ、ジャウム・コレット=セラ監督の本領発揮の、サスペンス・アクション映画の秀作であるのは間違いない。つくづく、劇場公開して欲しかったと思う。  (採点=★★★★☆

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