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2025年5月24日 (土)

「パディントン 消えた黄金郷の秘密」

Paddington-in-peru 2024年・英=仏=米=日本  107分
製作:スタジオカナル=ヘイデイ・フィルムズ
配給:キノフィルムズ
原題:Paddington in Peru
監督:ドゥーガル・ウィルソン
パディントン創造:マイケル・ボンド
原案:ポール・キング、サイモン・ファーナビー、マーク・バートン
脚本:マーク・バートン、ジョン・フォスター、ジェームズ・ラモント
撮影:エリック・A・ウィルソン
音楽:ダリオ・マリアネッリ
製作:ロージー・アリソン
製作総指揮:木下直哉、 アナ・マーシュ、 ロン・ハルパーン、 ダン・マックレー、 ポール・キング、 ジェフリー・クリフォード、 ロブ・シルバ、 ティム・ウェルスプリング

イギリスのロングセラー児童小説「パディントン」を実写映画化したシリーズの第3作。監督は本作が長編監督デビューとなるドゥーガル・ウィルソン。パディントンの声は1、2作に続きベン・ウィショー、その他の出演者も前2作に引き続きヒュー・ボネビル(父)、マデリーン・ハリス(ジュディ)、サミュエル・ジョスリン(ジョナサン)、ジュリー・ウォルターズ(バードさん)が続投、母メアリーのみ「マイ・ブックショップ」のエミリー・モーティマーにチェンジ。その他オリビア・コールマン、アントニオ・バンデラスなど実力派俳優が彩りを添える。

(物語)ロンドンでの生活にもすっかりなじんだパディントン(声:ベン・ウィショー)だが、ある日故郷ペルーにある老グマホームで暮らすルーシーおばさん(声:イメルダ・スタウントン)の様子がおかしいとの手紙を受けた。心配したパディントンはルーシーおばさんを訪ねるため、ブラウン一家と一緒にペルーへ家族旅行に出かける。しかしおばさんは、眼鏡と腕輪を残して失踪してしまっていた。パディントンたちはルーシーおばさんが残した地図を手掛かりに、インカの黄金郷があるというジャングルの奥地へ冒険の旅に出る。だがそこには、家族の絆が試されるパディントンの秘密が待ち受けていた…。

「パディントン」シリーズは、1作目(2015)は見逃したが2作目(2017)は劇場で観ている。感想はブログに書かなかったせいもあるが、7年も前なのですっかり内容は忘れている。採点は4.5だったので面白かったのは間違いない。

幸い1、2ともNetflixで配信されているので、予習も兼ねて鑑賞した。

Paddington 1作目「パディントン」は、パディントンが初めてロンドンを訪れ、ブラウン一家のお世話になって、失敗を繰り返しながらも段々と街の暮らしに馴染み、後半は悪役ミリセント(ニコール・キッドマン)によって剥製にされかけたパディントンをブラウン一家が力を合わせて救出するまでを描いていた。これはなかなか面白かった。
右も左も分からないパディントンが失敗し、それを修復しようとしてますます大きなトラブルになって行くギャグが、ミスター・ビーンを思わせて大爆笑。
最初はパディントンを快く思っていなかった父のヘンリーが、最後にはパディントンを救う為大活躍する姿を通して、ブラウン一家の絆が強く結ばれて行くプロセスには心がホッコリさせられた。
いろんな映画のパロディも随所に登場。「ミッション・インポッシブル」ネタをトムと一時期結婚していたニコール・キッドマンが演じるのも笑える。

Padington2 2作目「パディントン2」は、すっかりブラウン一家や街の人々にも愛されるようになったパディントンが、悪役ブキャナン(ヒュー・グラント)のせいで窃盗犯と疑われて刑務所に入れられるが、刑務所でも囚人たちの人気者になり、彼らの助けで脱獄し、ブラウン一家と一緒にブキャナンを列車で追いかけ、最後に冤罪を晴らすまでが、アクションも交えテンポよく描かれる。
終盤の列車追跡シーンは、何度も危機一髪に見舞われハラハラさせられる。メアリー夫人も大活躍。ラストのサプライズには思わず涙。
エンドロールの後日譚やブキャナンの刑務所内ミュージカルも楽しい。1作目を上回る出来の楽しい快作。

1作目にもあったが、序盤の小ネタや、ブラウン一家4人の特技が終盤の伏線になっているのが秀逸。
今回も映画のパロディが満載。歯車の間を通過する「モダン・タイムス」やら、刑務所シーンの「グランド・ブタペスト・ホテル」ネタなど。列車追跡シーンはいちいち挙げきれないほどいろんな映画から引用。猛スピードで並走する列車間を移動するくだりは最近リブート映画化された50年前の「新幹線大爆破」を思わせる。映画を多く観ているファンほど余計楽しめる。

というわけで、1、2を十分楽しんで、いよいよ新作の鑑賞となる。

(以下ネタバレあり)

冒頭、木のオレンジを取ろうとした子グマのパディントンが河に落ちて濁流に流され、あわや大瀑布に落ちる寸前、上から伸びた手が彼を掴む。
2を観ていれば、これが2の冒頭に繋がっている事が判る。彼を掴んだのがルーシーおばさんだった。
1作目では、パディントンがルーシーおばさん、パストゥーゾおじさん(声:マイケル・ガンボン)と一緒に暮らしているシーンから始まっていたが、1作ごとに遡って、パディントンがおじさん、おばさんと暮らすようになる経緯が明かされるという仕組みだ。1作目、2作目を観ておいて正解だった。

それにしても、前作から7年も経っている。間が空き過ぎて、前作の冒頭シーンなど忘れている人が多いのではないか(私自身がそう)。

レギュラー出演者は、3作を通じてほぼ同じ俳優が演じているが、メアリー夫人のみ前作までのサリー・ホーキンスからエミリー・モーティマーに交代。

ジュディを演じたマデリーン・ハリスやジョナサンを演じたサミュエル・ジョスリンが続投しているが、1作目ではまだ小さかったジョナサンが、9年の間にすっかり大人っぽくなっていた。

Paddington2

パディントンはパスポートも取得して、立派なイギリス国民になれた。相変わらずドジだけど。

子供たちも成長して、それぞれに独自の道を歩み始め、どことなく一家の絆がぎくしゃくしかけている。ジョナサンは部屋に閉じこもって発明三昧。これが終盤生きて来る。

そんな時、パディントンの故郷ペルーから、「老グマホーム」で暮らすルーシーおばさんが最近あまり元気がないとの手紙が届く。心配になったパディントンがペルーに戻りたいと言うと、父のヘンリーは家族みんなでペルー旅行しようと提案。かくして一家は全員でペルーヘ。

しかし老グマホームに着くと、ルーシーおばさんは眼鏡と腕輪を残して行方不明になっていた。おばさんの部屋にあった地図を手がかりに、パディントンとブラウン一家はインカの黄金郷があるというジャングル奥地へと向かう。しかしその背後には、黄金郷の財宝を狙う老グマホーム院長・クラリッサの悪だくみがあった。

老グマホーム院長を演じるアカデミー賞女優オリビア・コールマンがいつもと違って悪役を楽しそうに怪演。ギターを手に歌い踊るシーンまである(ここは「サウンド・オブ・ミュージック」オマージュ)。

もう一人、船で一行を現地まで案内してくれる船長のハンター・カボット役を演じるアントニオ・バンデラスもいい。やはり黄金郷の財宝を狙っているのだが、娘のジーナ(カルラ・トウス)からは、「欲にかられないで普通の生活を」と諫められている。しかし7代に亘るご先祖の亡霊(これを全部バンデラスが演じている)にも責められ、板挟みになって悩む(最後はおいしい所を持って行くいい役だったが)。

Paddington-in-peru2

いろいろスッタモンダがあって、やっと着いた黄金郷の入口のカギは、おばさんが残した腕輪にあった。そこに飛行機で乗り込んで来た院長クラリッサと、ハンター、ブラウン一家との三者の対決シーンがクライマックスとなる(財宝を狙っての三つ巴の対決「続・夕陽のガンマン・地獄の決斗」ですな)。

黄金郷の正体は映画を観てのお楽しみ。パディントンの生まれ故郷も判ったり、ルーシーおばさんとも再会出来て万事めでたし。

ここでパディントンがブラウン一家にある決断を伝えようとする。一時は、これで一家とパディントンは離ればなれになるのか…と心配させるが、そうじゃなかって一安心。
やっぱり、ブラウン一家とパディントンは固い絆で結ばれていたという事だ。ブラウン一家の絆も強まって、爽やかなエンディングまで楽しめた。クラリッサ院長の結末は…まあ自業自得だね。

エンドロール途中と最後に、あの人がサプライズ登場するので最後まで席を立たないように。これは2を見逃していたら何の事やらなので、シリーズ1、2作のおさらい鑑賞をお勧めする。


いやーこんなに面白いシリーズとは知らなんだ。1作目を見逃していたのが悔やまれる。配信で観る事が出来たのは有難い。

今回はロンドンを出て海外に行った事で、アドベンチャー的要素も加わってスケール大きな作品になっている。

何より素敵なのは、笑いながらも、人との繋がり、家族というものの大切さを改めて気付かせてくれ、最後に胸の中に温かいものが広がる、感動的な作品になっている点である。

パロディに関して言えば、巨大な丸い岩がゴロゴロ転がって来るシーンは誰でも分かる「レイダース・失われた聖櫃」のパロディ。倒れて来た壁の窓部分にいて命拾いするシーンはバスター・キートンの「キートンの蒸気船」(ジャッキー・チェンもパロってたね)と、前掲も含めて今回は前2作にも増してパロディ、オマージュ盛りだくさん。熱烈な映画ファンほど楽しめる面白い作品になっている。
他にももっとマニアックなパロディが仕込まれているので、いくつ見つけられるか、ファン同士で探しっこするのも楽しいだろう。

これが長編デビュー作となるドゥーガル・ウィルソン監督、なかなか達者な演出で前2作とも引けを取らない出来である。今後にも期待したい。      (採点=★★★★☆

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DVD「パディントン」1作目
Dvdpaddington
Blu-ray「パディントン」
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ブルーレイ+DVDセット「パディントン2」
Dvdblupaddington2


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