「ウォー・オブ・ザ・ワールド」 (2025・VOD)
2025年・アメリカ・ドイツ 89分
製作:ユニヴァーサル・ピクチャーズ
配信:Amazon Prime Video
原題:War Of The Worlds
監督:リッチ・リー
原作:H・G・ウェルズ
原案:ケニー・ゴールド
脚本:ケニー・ゴールド、マーク・ハイマン
撮影:クリストファー・プロブスト
音楽:ジョン・ナチェズ
製作:パトリック・アイエロ、ティムール・ベクマンベトフ
製作総指揮:アダム・シドマン
何度も映画化された、H・G・ウェルズ原作の「宇宙戦争」を現代的にアレンジしたSFサスペンス。監督はミュージックビデオやCMで知られるリッチ・リー。主演は「トリプルX:再起動」のアイス・キューブ。共演は「ボス・ベイビー ファミリー・ミッション」のエヴァ・ロンゴリア、「キャプテン・マーベル」のクラーク・グレッグ、「ダラス・バイヤーズクラブ」のマイケル・オニールなど。Amazon Prime Videoで8月8日より配信中。
(物語)国土安全保障省テロ対策班のウィル・ラドフォード(アイス・キューブ)は、何かの物体が地球に落ちる現象を確認する。中から出て来たのは3本足のロボット・トライポッド。それは異星人による地球侵略の為の兵器であった。すぐさま人類側は反撃するが、学習能力のあるトライポッドはインフラ設備や政府のデータセンターを襲い、人類は劣勢に立たされる。ウィルはハッカーである息子ディヴ(ヘンリー・ハンター・ホール)の助けを借りてコンピュータ・ウイルスを作成し、トライポッドを倒そうと試みるが…。
H・G・ウェルズ原作のSF小説"War Of The Worlds"は、過去数回映画化されており、最近ではスティーヴン・スピルバーグ監督がトム・クルーズを主演に迎えた2005年の「宇宙戦争」が有名だが、1953年のバイロン・ハスキン監督による同名作品(右)も古典的な名作として根強いファンがおり、私はスピルバーグ版よりこちらの方が好き。火星人の姿が凄く怖かった。
その何度目かのリメイク作品がアマプラで観られると知って、早速観たのだが…。
(以下ネタバレあり)
うーむ、なんじゃこりゃである。端的に言って、物語は全編がPCのモニター上のみで展開される。分かり易く言えば、2018年に公開されて結構面白かった「search/サーチ」と同じような作りと言っていい。
「search/サーチ」は、行方不明になった娘を父親がSNSやメール、ネット検索を駆使して探すお話で、ごくパーソナルな家族の物語と、PCモニター映像がうまくマッチして面白い作品に仕上がっていた。
しかし、このパターンで名作「宇宙戦争」をリメイクするという事自体、無謀と言うか作り方を間違えている。あのトライポッドがPC画面上に―それも画面の半分だったり、ノイズの入った質の粗い画像でチラッとしか見せなかったりでは、迫力も怖さもまったく感じられない。チラ見せは偽造卒業証書だけにして欲しい(笑)。
さらに悪い事に、主人公のテロ対策監視員ウィルの顏のどアップが、ざっと見て全体の8割くらいを占めている。顔中ヒゲだらけのむさくるしいアイス・キューブの顔をずっと見せられては、暑苦しくてしょうがない。
変化をつける為か、カメラがPC画面上に固定されているわけではなく、マウスポインターの動きをせわしなく追っかけたり、画面隅のワイプ(小窓)画像にズームアップしたりする。しかし小さなワイプ画像をアップにすればモニター上のドットも拡大されて粗い映像になるはずだが、クリアなままだ。どうせいくつかの画像を合成してるのだろうが。
さらにさらに、ウィルの娘や息子たちがテレビ電話で何度も会話して来るので、トライポッドの攻撃映像が都度中断される。娘の一人は妊娠中で、外出中にトライポッドと遭遇し、逃げ回るが怪我してしまう。ウィルは娘の送る映像を見ながら逃げ道を指示する。娘のボーイフレンドで配達員のマーク(デヴォン・ボスティック)のスマホをハッキングして娘を助けに行くよう依頼する。どうでもいいが、懸命に走る顏のアップが映るスマホの映像がウィルのPCに送られているのだが、スマホのカメラを自分に向けながら全力で走るなんて、そんな余裕ないだろう(笑)。
そんな調子だから、異星人が地球を侵略するという本筋が、PC上の目まぐるしい映像とウィル一家のプライベートな交信に邪魔されて頭に入って来ない。
アイス・キューブの演技も一本調子でメリハリがない。本職は俳優じゃないし。もっと細かい演技の出来る俳優を呼ぶべきだった。
ハッカーでもある息子のディヴが仲間と一緒にコンピュータ・ウイルスを作って、それをトライポッドに送ろうとするが、逆にハッキングされて IPから居所を探知され、仲間はディヴ以外殺されてしまう。
宇宙から地球にやって来た異星人が、なんで地球のコンピュータ・システムを熟知しているのか不思議。それだったら武力攻撃なんかせずに、世界中のコンピュータ・システムをハッキングすれば(核兵器だって自由にコントロール出来るだろうから)、労せずして地球を征服出来るだろう。…とツッ込みどころが満載。
最後はUSBに仕込んだウイルスをAmazonの配達ドローンで直接ウィルのいるセンターに送り届け、ウィルがメイン・システム経由でウイルスを世界中に送った事でトライポッドが感染、次々とトライポッドや異星人の宇宙船が壊滅して行き、地球は救われる。
異星人の侵略から世界を救ったのが、科学者でも軍事力でもなく、ITハッカーとその家族だった、というのもなんだかなあ。スケールがこじんまり過ぎる。
原作の、火星人を倒したのは地球上の生物が免疫になっている細菌だった、という結末を、コンピュータ・ウイルスに置き換えたわけだが、このアイデアは既にローランド・エメリッヒ監督の「インデペンデンス・デイ」(1996)で使われているので二番煎じだ(注)。「インデペンデンス・デイ」自体が「宇宙戦争」のパクリみたいな作品なのだけど。
せっかくウェルズの名作を映画化するのだから、全編PC画面上で展開するという手法を使わず、正攻法で描いていれば、まだ面白い映画になったかも知れない。変に小細工を弄した為にぶち壊しになってしまった。
なんでこんなことになったのかは、プロデューサーの名前を見て判った。
実は本作のプロデューサーは、前述の「search/サーチ」も製作しているティムール・ベクマンベトフである。ベクマンベトフと言えば、全編にわたり主人公の一人称視点で描かれるSFアクション、 「ハードコア」(2016)を製作して名を上げた人だが、2014年に既に、全編PCの画面上でのみ物語が進むホラー映画「アンフレンデッド」を製作している。これは不評だったが、懲りずに「search/サーチ」を製作したら、これが好評で、2023年にはそのパート2、「search #サーチ2」を製作、とひたすら全編PCの画面上でのみ物語が進む映画を作り続けて来たプロデューサーである。本作もそのパターンの1本というわけだ。
こういうアイデアは一発勝負的なもので、同じパターンで何度も作るものではない。実際成功したのは「search/サーチ」1本だけだし。
映画を採点するロッテン・トマトで史上最低の点数だったそうだが、確かに本年度のサイテー映画だった。映画館で金を払って観るシロモノではない。配信だけで正解だった。 (採点=☆)
(注)
「インデペンデンス・デイ」の、「人間が作ったコンピュータ・ウイルス攻撃によって宇宙人が敗北する」、という結末については、ある雑誌で、
「どのようなマシンを使ったとしても、人間が作ったコンピューターによって、エイリアンたちが作ったコンピューターに影響を与えるようなウイルスを首尾よく書き上げる見込みは限りなく小さい。」と指摘している(Wikipediaより)。
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