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2025年9月 7日 (日)

「大長編 タローマン 万博大爆発」

Taroman 2025年・日本   105分
製作:NHKエデュケーショナル=豪勢スタジオ
配給:アスミック・エース
監督:藤井亮
脚本:藤井亮
撮影:藤本雅也
音楽:林彰人
企画・プロデュース:竹迫雄也
プロデューサー:加藤満喜、桝本孝浩、倉森京子、柳本喜久晴、佐野晴香

芸術家・岡本太郎の言葉と作品をモチーフに、“1970年代に放送された特撮ヒーロー番組”というコンセプトのもと、2022年にNHK・Eテレで放映された特撮ミニドラマ「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」を劇場版として映画化。脚本・監督はCM、MVなどの映像作家で、テレビ版も手がけた藤井亮。出演はテレビ版と同じ岡村渉、森野忠晋、小笠原皆香、べーやん、北村直大、川端英司などの他、テレビ版でも解説を担当したミュージシャンとしても活躍する山口一郎が本作でも解説を手がけている。

(物語)万博開催に沸き立つ1970年のある日、未来からやってきた恐ろしいが奇獣が万博会場に襲いかかる。CBG(地球防衛軍)は正義のタローマンと共に対抗しようとするが、でたらめな奇獣にはCBGもタローマンも苦戦するばかり。そこで、でたらめな奇獣に対抗するにはでたらめな力が必要という事で、CBGは万博を守るため、タローマンとともに2025年の未来へと向かう…。


自宅が1970年開催の旧万博会場(吹田市)に近い事もあり、'70年万博にも何度か訪れた経験もある私にとって、この作品には早くから興味を抱いていた。5分のミニドラマ「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」が2022年に放映された時には深夜という事もあってつい見逃したが、後に再放送で数話を鑑賞した。
明らかに「ウルトラマン」をパロディにした内容だが、タローマンの顔(太陽の塔と同じ顔だ)も、毎回新登場の怪獣ならぬ奇獣のデザインもまるまる岡本太郎作品から拝借、奇獣との対決シーンも、ほとんど「ウルトラマン」と同じパターン。ただ、5分の放送の間にタイトルクレジットや山口一郎の解説もあるので、実質ドラマ部分は3分にも満たない。それでも、まさしくデタラメなパワーに満ちた、岡本太郎オマージュの快(怪)作だった。全部で10話しかなかったのが残念。最終回には“太陽の塔”まで奇獣となって動き出したのには大笑い。なお最近(先月末)にもテレビで再放送されていた。

Taroman1

その「タローマン」が長編劇場版となって登場。105分もの上映時間が持つのだろうか心配したが、まずまずよく出来ていた。

スタイルはテレビ版とほぼ同じ。冒頭、岡本太郎本人の写真に「なんだこれは!」のテロップが被るのも同じ。出演者もテレビ版とほぼ同じだが、ストーリーは劇場版オリジナルである。冒頭と最後に山口一郎の解説がある。

素晴らしいと思ったのは、映像の質感。わざと1970年代にテレビで放映されたような、黄色味がかった、当時のテレビと同じく16ミリフィルムで撮影したかのようなザラつき具合がリアル。しかもスタンダード・サイズ。知らなければ55年前に作られたテレビ作品かと勘違いしそうだ。
藤井監督によると、撮影した映像をスクリーンに投影、それをまたカメラで撮影したのだそうな。なんと手間のかかる方法を使っているのかと感心する。

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さて、映画の方だが、時は大阪万博で賑わう1970年。当時の万博のニュース映像と合成しているので懐かしい気分になる。

そんな時に、2025年の未来からCBG隊員のアンドロイドがやって来た。顔を銀色に塗っているのはアンドロイドという事を強調する為だろう。
アンドロイド隊員によれば、2025年には日本で宇宙大万博が開催されているのだが、突然現れた奇獣によって会場は大変な事になっている。未来の宇宙大万博が失敗すると、タイムパラドックスで過去の大阪万博も失敗するらしい。それを防ぐ為に、タローマンを未来に送って奇獣を退治して欲しいとの事だった。

タイムパラドックスは普通、過去を変えた影響で未来が変わるというもののはずだが、この世界では逆らしい。でたらめでべらぼうな岡本ワールドらしい所だ。

タローマンの性格もヘソ曲がりで、行けと言われたら逆に行かない。なんとかタイムマシンにタローマンを押し込んで、いざ未来へGO。
ここから画面サイズが横長のシネスコサイズとなるのも凝っている。

さて、2025年の未来映像だが、これがまた“1970年代頃に想像されていた2025年の未来”という事で、昔の未来を描いた絵本などに載っていた、カラフルで玩具のようなデザインの建物があったり、透明チューブの中を自動車が縦横に走っていたり。リアルな2025年とは全く違う未来世界を構築しているのも見事だ。

Taroman2

テレビ版にもあったが、何かが起きる都度、「…と岡本太郎も言っていた」とナレーションが入るのも面白い。本当に岡本太郎が言っていた言葉からの引用なのだろう(多分)。

タローマンは一応活躍するが、基本でたらめだから戦い方もでたらめだ。縄文土器をあしらった縄文人奇獣が現れると、それに感動したタローマンが、粘土を捏ねくって縄文土器を作ったりするのも笑える。


全体として、岡本太郎リスペクト愛にあふれ、70年代特撮ヒーローものへのオマージュ(円谷英二オマージュとも言える)あり、笑える脱力ギャグあり、楽しませてもらった。

何より、2025年という現代に、古き良き昭和の時代の空気感を、レトロチックな映像を交えて作り上げている所に、作者の現代批判が感じられた。

昭和の時代、子供たちは絵本で見た未来世界に目を輝かせ、心躍らせていたはずなのだが、現実の2025年に、そんな夢溢れる未来は到来していない。これはそんな夢なき現代社会への痛烈な批判が込められた問題作なのである。

私が本作を鑑賞したのは、万博記念公園の真ん前にある109シネマズ大阪エキスポシティ。すぐ目の前には「太陽の塔」が見えているので、本作鑑賞には最適の環境だ。

劇場内には、本作の大看板があったり、水差し男爵やタローマンの等身大フィギュアが置かれていたり、これも楽しい。

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観客もよく入っていてほぼ8割の入りだった。岡本太郎ファン、70年万博ファンにはお奨めである。私の年末ベストテンで、「おバカ映画賞大賞」ベストワンは確定である(笑)。    (採点=★★★★

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