「トロン:アレス」
2025年・アメリカ 119分
製作:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ=Paradox
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題:Tron: Ares
監督:ヨアヒム・ローニング
原案:デビッド・ディジリオ、ジェシー・ウィガトウ
脚本:ジェシー・ウィガトウ
撮影:ジェフ・クローネンウェス
音楽:ナイン・インチ・ネイルズ
製作:ショーン・ベイリー、ジャレッド・レト、エマ・ラドブルック
製作総指揮:トレント・レズナー、アティカス・ロス、ラッセル・アレン、ジョセフ・コシンスキー
1982年に長編映画として世界で初めてCGを全面的かつ本格的に導入し、その革新性で一世を風靡したSF映画「トロン」のシリーズ第3弾。監督は「パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊」のヨアヒム・ローニング。出演は「モービウス」のジャレッド・レト、「アメリカン・アニマルズ」のエヴァン・ピーターズ、「アフター・ヤン」のジョディ・ターナー=スミス、「パスト ライブス/再会」のグレタ・リー、それに前2作でもフリンを演じたジェフ・ブリッジスなど。
(物語)ディリンジャー社のCEO、ジュリアン・ディリンジャー(エヴァン・ピーターズ)は、AIプログラムの実体化に成功し、AIの兵士を現実世界で戦わせる事が出来ると発表する。だが実際には彼らが現実世界で生存できるのはわずか29分間だけ。それを過ぎれば消滅してしまう。そんな時ジュリアンは、ライバル会社エンコム社のCEO、イヴ・キム(グレタ・リー)が29分の壁を超える“永続コード”を見つけた事を知り、AI兵士のアレス(ジャレッド・レト)とアテナ(ジョディ・ターナー=スミス)に命じて永続コードを奪おうとする。だが激しい戦いの中で人間を知ったアレスにある異変が起き、ジュリアンの命令に背いてイヴたちを助けようとする。一方どこまでも命令に忠実なアテナは次第に制御不能となり、暴走を始める…。
1982年公開のシリーズ1作目「トロン」はリアルタイムで観ている。当時パソコンの分野で開発途上のCG(コンピュータ・グラフィックス)の存在は知っていたが、まだまだ初歩的な段階で、PCのモニター上ならともかくも、劇場の大画面ではアラが目立つのではと心配した。
結果として、画質は悪くなかったが、今で言う(実写と区別がつかない)CGとは違って、“滑らかな動きのアニメーション”、あるいは“テレビゲームの大画面版”程度のものだった(左)。
それでも、シド・ミードやジャン・“メビウス”・ジローが製作デザインに参加している事もあって、見た事もない未来型ビジュアルの美しさに驚嘆した。映画の歴史が変わった事を実感した。
以後ジェームズ・キャメロンが「アビス」(1989)、「ターミネーター2」(1991)で、スティーヴン・スピルバーグが「ジュラシック・パーク」(1993)で、実写と見紛う精緻なCG映像を作り出すに至るが、その出発点はこの「トロン」にあった事は間違いない。
そして2作目「トロン:レガシー」(2010)を経て、3作目となる本作の登場である。私は2作目も観ているが、1作目ではまだシンプルだったCGが、2作目では進化した3D映像の中でデジタルと現実世界がさらに近づき、3作目となる本作では、デジタル界のAI兵士や兵器が現実世界を浸食する、といった具合に、「トロン」三部作の歴史は、そのままデジタルの進化、CGの進化の歴史と重なり合うと言っていいだろう。
本作については、前2作を観ていなくても問題はないが、エンコム社とディリンジャー一族との因縁や、1作目の主人公だった天才プログラマーのケヴィン・フリン(ジェフ・ブリッジス)が、2作目でシステム内に理想の世界“グリッド”を創り上げた経緯などは、知っておいた方が本作の理解が進むと思うので、出来ればDVDか配信で1、2作目を予習しておく事をお奨めする。
(以下ネタバレあり)
今ではエンコム社とライバル関係にあるディリンジャー社のCEO、ジュリアンは製作発表会で、AIプログラムを実体化する画期的な発明品、AI兵士、AI兵器等のデモンストレーションを行う。
まるで3Dプリンターのようなメカで、見る間にAI兵士のアレスやAI戦車が作られて行く。ジュリアンは鼻高々だが、発表会が終わり聴衆が帰った後、それらはたちまち分解消滅する。
実はAI創造物は技術的に未完成で、29分しか持続できないないのだ。それを隠して発表会を行ったジュリアンを母のエリザベス(ジリアン・アンダーソン)は叱責する。ジュリアンはなんとか29分の壁を越える方法はないか模索していた。
一方その頃、エンコム社のCEO、イヴ・キムは、その29分問題を解決する“永続コード”を見つけ出していた。
それを知ったジュリアンは、AI兵士のアレスとアテナに命じて、イヴの隠し持つ永続コードを奪おうとする。かくして、逃げるイヴ対AI兵士アレス、アテナとの壮絶な追跡劇が現実世界において展開される事となる。
アレスたちは執拗にイヴを追いつめて行くが、あと一歩の所で29分のタイムリミットが到来して消滅、再生してはまた追いかける、というアクションのテンポがいいし、アテナたちの乗るライトサイクルがデジタル界と同じく光の航跡を残しながら走るシーン(右)が、1作目を観ているファンにはニヤリとさせられる。このシーンはなんとも美しくシュールである。
大友克洋の「AKIRA」も「トロン」の影響を受けているらしいが、ライトサイクルが横滑りで急停止するシーンが、その「AKIRA」のオマージュになっているのも楽しい。
だが追跡と消滅、再生を繰り返すうちに、アレスにある変化が訪れる。29分しか生きられない自分の運命に煩悶し、自分に与えられた任務は正しい事なのかと疑問を持ち始めるのだ。
AIは当然学習機能を持つわけだから、アレスたちを使い捨てにする身勝手な主人・ジュリアンと比べて、イヴの方が正しいのではないかと考え始めるのも当然だ。
かくしてアレスは主人の命令に逆らってイヴに味方し、イヴを守って行動するようになる。
学習機能と言えば、J・キャメロン監督の「ターミネーター2」でも、アンドロイドのT-800(A・シュワルツェネッガー)がジョンやサラ・コナーと触れ合う事で学習し、人類の為にわが身を犠牲にするシーンがあった事を思い出す。考えれば「ターミネーター2」もCGを大きく進化させた革命的作品だった。
後半、永続コードを探しにアレスが「グリッド」の世界に入って行くシーンでは、懐かしい1作目のシンプルCG世界が現出し、さらにそこでグリッドの創設者、ケヴィン・フリン(1作目、2作目と同じジェフ・ブリッジス)と出会うシーンも、ファンとしては感動的だ。あれから43年経って、いい具合に老けたジェフ・ブリッジスを見るだけでも涙腺が緩んでしまう。
永続コードを得て現実世界に戻ったアレスとイヴの前に、執拗に彼らを狙うアテナが、AIプログラムで作った巨大なゲート型空中浮遊戦車を使って立ちはだかる。
この終盤のバトル・シーンもなかなかの迫力だ。次々と街を壊して行くゲート型戦車と、逃げ回るイヴ、そのイヴを助けて活躍するアレスと敵との攻防戦は本作最大の見どころ。
最後はエンコム社のスタッフの協力で敵の攻撃を遮断し、アテナは時間切れで消滅する。
ただアテナの行動時間、どう見ても29分を越えてるように思えるが(笑)。
エンディングで、イヴは永続コードを人類の平和の為に活用したいと願い、アレスは現実世界で、人間として生きて行く事を決意して映画は終わる。
ただ、アレスの体はデジタルで作られた金属体のはずなので、人間としてずっと暮らして行けるのか疑問である。エネルギー源の問題もあるし。まあ「ターミネーター:ニュー・フェイト」でもシュワちゃん扮するT-800が人間として永年暮らしていたので、深く考えないでおこう。
というわけで、本作はSFアクションとしても十分楽しめる作品になっていたし、「トロン」1作目に感動した映画ファンなら懐かしさと、この40数年間のCG映画の驚異的進化を実感出来た事でも記憶に残る作品になったと言えよう。
俳優では、イヴを演じたグレタ・リーが、梶芽衣子とよく似ていたのが印象的(右)。ジャレッド・レトは可もなし不可もなし。ナイン・インチ・ネイルズの音楽も映画によく合っていた。
エンドロール後で、ジュリアンはまだしぶとく生き残ったので、ひょっとしたら4作目も何年か後に作られるかも知れない。でも15年も待っていられるか、こちらの寿命が先に来てるかも知れないが(笑)。 (採点=★★★★)
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コメント
ご無沙汰しております。
私は子供の頃に第1作を劇場鑑賞し、
「トロン」のライトサイクルミニゲームを
親に買って貰う程ファンになってました。
40代で第2作、そして56歳で新作鑑賞!
本作だけでも分かりますが過去作好きな
私にとっては嬉しい場面も多く満足でした。
映画の思い出って多ければ多い程
本当に良いですね。
また妻の写真と劇場鑑賞に出掛けます。
投稿: ぱたた | 2025年10月28日 (火) 18:41
◆ぱたたさん
ぱたたさんも1作目をご覧になっているのですね。子供の時に観れば、そりゃ感動するでしょうね。
そういう思い出を持っている人には、本作は間違いなく楽しいはずです。映画体験って、本当にいいものですね(と水野晴朗さん風に(笑))。
投稿: Kei(管理人 ) | 2025年10月29日 (水) 23:04