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2026年3月19日 (木)

「ウィキッド 永遠の約束」

Wicked-for-good 2025年・アメリカ   137分
製作:The South Australian Film=ユニヴァーサル・ピクチャーズ
配給:東宝東和
原題:Wicked: For Good
監督:ジョン・M・チュウ
原作:グレゴリー・マグワイア
原作ミュージカル(作詞・作曲):スティーブン・シュワルツ
脚本:ウィニー・ホルツマン、デイナ・フォックス
撮影:アリス・ブルックス
音楽:ジョン・パウエル、スティーブン・シュワルツ
製作:マーク・プラット、デビッド・ストーン
製作総指揮:スティーブン・シュワルツ、デビッド・ニックセイ、ジャレッド・ルボフ、ウィニー・ホルツマン、デイナ・フォックス

「オズの魔法使い」に登場する魔女たちの物語を描いた大ヒットブロードウェイ・ミュージカル「ウィキッド」を実写映画化した2部作の後編。監督は前作に引き続き「クレイジー・リッチ!」のジョン・M・チュウ。出演も前作の魔女役シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデをはじめ、ジョナサン・ベイリー、ミシェル・ヨー、ジェフ・ゴールドブラムなどお馴染みの出演者が続投。

(物語)オズの国に隠された真実を知り、それぞれの道を歩むことになったエルファバ(シンシア・エリヴォ)とグリンダ(アリアナ・グランデ)。“悪い魔女”として悪名を着せられ民衆の敵となったエルファバは、言葉を奪われた動物たちの自由のために戦い続けていた。一方“善い魔女”となったグリンダは、希望の象徴として名声と人気を手にするも、エルファバとの決別が彼女の心に暗い影を落としていた。和解の言葉も届かず、2人の溝が深まっていく中、オズの国に突如現れた“カンザスから来た少女”によって運命は大きく動き出し、2人はかつてのかけがえのない友と向き合う事となる…。

前作「ウィキッド ふたりの魔女」の作品評にも書いたが、元ネタのMGMミュージカル「オズの魔法使い」(以下旧作)が大好きな私にとっては、なんとも複雑な気分になる作品だった。

「オズの魔法使い」では、西の悪い魔女(本作のエルファバ)はとんでもなく憎たらしい悪役で、最後にドロシーに水をぶっかけられて死んでしまうシーンではスカッとさせられ、ザマミロと言いたくなったほどだ。

それが舞台版「ウィキッド」、及びそれを映画化した本作では、エルファバは本当は善人であり、ジェフ・ゴールドブラム扮するオズの魔法使いの方が悪人で、知性を持ち言葉を喋る動物たちを檻に閉じ込め迫害する独裁者だった、という、旧作の設定をまるごとひっくり返した展開に驚き、どうも馴染めなかった。

それでも前作は、ミュージカル・シーンがとても素晴らしく、特にラストのエルファバが宙を飛びながら歌い踊る"Defying Gravity"は圧巻で、そういったミュージカル・ナンバーだけは充分に見応えがあって楽しめた。

さて物語の後編となる本作は、どういう決着を迎えるのか、期待半分、不安半分で観る事となったのだが…。

(以下ネタバレあり)

冒頭から、動物たちが奴隷となって黄色いレンガ道工事に駆り出され、ムチで叩かれ虐待されるシーンがあり、そこに空を飛んでやって来たエルファバが、たちまち役人たちをコテンパンにやっつけ、動物たちを解放する。

まさに“スーパーマン”並みの正義のヒーロー扱いである。ここはカッコいい。が、スカッとしたのはここだけだった。

オズの魔法使いが、絶対的な権力を持つ独裁者で、マイノリティである動物たちを絶対的服従下に置いて差別し、排斥する、という設定は、明らかに現在世界にはびこる、大国の権力者(その代表がトランプ大統領)の傲慢かつ強引な政治手法のカリカチュアだろうし、動物たちは差別され迫害される、かつての黒人、現在の移民たちを思わせる。

そういう風刺、皮肉、体制批判を映画に盛り込む事を私は否定しないが、あの名作「オズの魔法使い」の世界にそれを採り入れるのは個人的にはどうも納得できない。無論「ウエスト・サイド物語」など、社会情勢を盛り込んだミュージカル作品はあるけれど、あの明るく楽しい夢のような「オズの魔法使い」の世界には盛り込んで欲しくなかったと今でも思う。

それと、ミュージカル・シーンについても、前作ほど感動的なナンバーは本作には見当たらない。
そもそも、エルファバとグリンダと、本来エルファバの敵であるオズの魔法使いとの3人が仲良く歌い踊るシーンはどう考えてもヘンである。
ミュージカルの歌い踊るシーンは、そのほとんどが歌っているうちに互いに心を通わせ合い、親密さを深めて行くものではないだろうか。敵対者同士が仲よくハモって歌ってる場合じゃないでしょう。
ただこのシーンで、オズが大きな丸いゴム風船を指先で跳ね上げる、「チャップリンの独裁者」のオマージュをやってるのには笑った。本人がまさに独裁者だけに。

中盤、エルファバの妹、ネッサローズ(マリッサ・ボーディ)が、竜巻で飛んできたドロシーの家の下敷きになって死んでしまうシーンでも、本来エルファバが悲しまなければいけない場なのに、ネッサほったらかしでグリンダとほっぺ殴り合ったり、互いに歌いだしたり。ここ、笑える場じゃないでしょと呆れてしまった。

他にも、なんだかワケの判らないシーンが多い。ネッサローズが、ボック(イーサン・スレイター)の心を繋ぎ止める為に唱えた呪文が失敗し、そのせいでボックが“ブリキの木こり”に変身してしまう。あれれ、旧作でドロシーのお供となる、“心を欲しがってるブリキの木こり”って、ボックだったのか。でも旧作では、作ってくれた鍛冶屋がうっかり心を入れ忘れたせい、という話だったはず。この改変も意味が分からない。

ウィンキーの王子、フィエロ(ジョナサン・ベイリー)はグリンダと婚約し、結婚式を挙げる直前に(結果的に)エルファバに邪魔されるわけだが、そこからフィエロがエルファバに心変わりして、エルファバと一緒に逃げるという展開も意味不明。最後にフィエロが何故だかカカシに変えられてしまうのも、これまた意味不明。その姿も、カカシとも人間ともつかぬ中途半端なものだ。
エルファバの出生の秘密も、とって付けたようで意味不明。

こんな具合に、話が取っ散らかっている上に、訳の分からないエピソードが多過ぎて頭が混乱てしまう。旧作では主人公のドロシーが、本作では全く顔も見せない雑なキャラクター扱いなのも旧作ファンには不満が募ってしまう。あげくに、エルファバに水をかけて殺してしまう。まるでドロシー、悪役だ(笑)。

このラストも、私はエルファバが自分の身を犠牲にする事で、グリンダが自分の遺志を継いで、善の魔女としてこの国を良くして行くよう、未来を託したのだ、と思っていた。
それなら泣けるのだが、なんと実は地下に隠れて生きていた、というオチにはズッこけた。まるで「木挽町のあだ討ち」並みのどんでん返しオチだ(笑)。
せっかく感動しようと思ってたのに、ぶち壊しだ。

最後は、エルファバとフィエロが手を取り合って去って行く後ろ姿で終わるが、それで終わり?どうもスッキリしない。ミュージカルなのだから、最後は全員で歌い踊るような明るいフィナーレを見たかった。


というわけで、いろいろと不満点、ツッ込みどころも満載で、前編「ふたりの魔女」より、かなり落ちる出来と言わざるを得ない。

舞台劇の方は評判になってロングランとなってるようなので、舞台劇とは違う内容になっているのかも知れないが。どうなんだろうか。
少なくとも、旧作のMGM作品「オズの魔法使い」に対する敬意は私には感じられなかった。残念である。

映画「オズの魔法使い」を未見の方は、DVDも出てるし、アマプラ等の配信でも見られるので、是非鑑賞する事をお勧めする。何度見ても心が温かくなる、本当に素敵な作品である。   (採点=★★☆

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コメント

私自身はとても感動しました、と断った上で、ご指摘のとおりドロシーが騙されやすい軽い女子、ネッサが亡くなったところはもう少し余韻があっても、と私も確かに思いました。舞台は未見なのですが、ドロシーは魔女を殺すところで影だけ登場のようです。なので、オズの魔法使いをがっつり出しすぎたかな?あと個人的興味としては、これ監督、きっとロードオブザリングやりたかったんだなと。なので賛否ある今回のテイストも私は嫌いではありません。もう一点、アカデミー賞、アリアナグランデの助演はせめてノミネートあってもと思うのですが。

投稿: オサムシ | 2026年3月19日 (木) 23:45

◆オサムシさん
賛否は人それぞれで、感動した人もいれば私のようにガッカリした人もいるでしょうね。でも全体的には、前作に比べて否定的な声が多いように感じます。
アカデミー賞でも、前作は作品賞、主演、助演各女優賞など10部門ノミネート、2部門受賞(美術賞、衣装デザイン賞)という結果だったのに、本作は見事にノミネート・ゼロ。この結果が作品の出来を証明しているように思います。

でも第83回ゴールデングローブ賞(2026年)ではアリアナ・グランデの最優秀助演女優賞など5部門にノミネートされてますから、これで溜飲さげてくださいね(受賞はなし)。

投稿: Kei(管理人 ) | 2026年3月20日 (金) 18:56

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