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2026年4月26日 (日)

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」

Project-hail-mary 2026年・アメリカ   156分
製作:Pascal Pictures=Lord Miller Production
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
原題:Project Hail Mary
監督:フィル・ロード、クリストファー・ミラー
原作:アンディ・ウィアー
脚本:ドリュー・ゴダード
撮影:グレイグ・フレイザー
音楽:ダニエル・ペンバートン
製作:エイミー・パスカル、ライアン・ゴズリング、フィル・ロード、クリストファー・ミラー、アディッティア・スード、レイチェル・オコナー、アンディ・ウィアー

「オデッセイ」の原作者として知られるアンディ・ウィアーによる同名SF小説の映画化。監督は「LEGO® ムービー」のフィル・ロード&クリストファー・ミラー。主演は「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴズリング。共演は「関心領域」のザンドラ・ヒュラーなど。

(物語)未知の原因によって太陽エネルギーが奪われる異常事態が発生。このままでは地球の気温は低下し、全人類は滅亡してしまう。この未曾有の危機を回避しようと、世界中の叡智が集結し調査を開始。その結果、この現象は宇宙に散らばる無数の恒星に及んでいることが判るが、唯一、11.9光年先に無事な星を発見。人類に残された策は、宇宙船でその星に向かい、太陽と全人類を救うための謎を解くことだけだった。ヘイル・メアリー(イチかバチか)と名付けられたこのプロジェクトの為宇宙に送り込まれたのは、かつては優秀な科学者でありながら学会を去り、今はしがない中学校の科学教師ライランド・グレース(ライアン・ゴズリング)。地球から遠く離れた宇宙でたった一人、自身の科学知識を頼りにミッションを続ける彼だったが、そんな時、思いもよらない出会いがグレースの運命を大きく変えて行く…。

またいろいろと、田舎の家に関する難題が起きて没頭されており、なかなかブログを書く時間がない。そんなわけで今回はやや短めの文章で。


太陽に異常が起きて人類が危機に見舞われ、回避する為の地球規模プロジェクトが発動する
…という映画はこれまでも何本か作られている。1990年製作の「クライシス2050」(リチャード・C・サラフィアン監督)、2007年の「サンシャイン2057」(ダニー・ボイル監督)等が有名な所。
どっちの作品も、太陽に新型爆弾や核弾頭を撃ち込んで太陽を再生させようとする荒っぽい計画。しかも最後はどっちも誰かの自己犠牲で計画は成功する、という似たような内容。まあはっきり言ってどっちもつまんなかった。核弾頭撃ち込みゃなんでも解決する、というのも当時のハリウッド作品には多かった気がする。

本作も、またかよ、と最初は思ったが、原作が「オデッセイ」のアンディ・ウィアーと聞いて、それならと観る気になった。

(以下ネタバレあり)

原作は未読。ちょっと解りづらいのは、“アストロファージ”とか“ペトロヴァ・ライン”とかの用語の意味。原作には詳しく説明されているそうなので、原作は先に読んでおく方がいいかも知れない。まあ観ているうちに、何となくぼんやりと解って来るので問題はない。

要するに、太陽が“アストロファージ”と呼ばれる宇宙微生物によって侵食されていることが判り、太陽の光が衰えれば人類滅亡の危機となる。この現象は太陽系だけでなく宇宙全体に及んでいる。唯一、11.9光年先にある星だけが無傷な事が判り、探査船でその星に向かい謎を解く為の計画が“プロジェクト・ヘイル・メアリー”という訳だ。

計画名がヘイル・メアリー=イチかバチか、というのもどうかと思うが。まあ成功する可能性がほとんどない、とにかく行ってみなけりゃ分からん、という事なのだろう。
そんなトボけたタイトルと、主演が「バービー」「フォールガイ」など、コメディ・タッチの作品が多いライアン・ゴズリングという事もあって、前述2作品のような悲壮感はあまり感じられない。これがラストでうまく生きて来る。

そして本作が前述2作品と大きく異なるのは、ゴズリング扮する主人公グレースが、異星人と遭遇するという点だろう。しかも友好的である。

友好的な異星人との遭遇という内容の作品は、スティーヴン・スピルバーグ監督の「未知との遭遇」(1977)、「E.T.」(1982)が2大傑作だし、ロバート・ゼメキス監督「コンタクト」、最近ではドゥニ・ビルヌーブ監督「メッセージ」がある。いずれも映画史に残る名作である。

宇宙船に同乗していたクルーは、人工冬眠中の事故で全員死亡。つまりグレースは宇宙で独りぼっちになってしまう。そんなグレースだから、異星人に出会うなり、仲良くなりたいと思うのは当然。向こうも目的は同じで、グレース同様やはり独りぼっちだから、双方は次第に打ち解け、やがて友情が芽生えて来る。
笑えるのが、グレースが相手の異星人とのコンタクト手段として、「未知との遭遇」の有名な5音階を使う所。こうしたさりげないユーモアは随所に登場する。

その異星人のデザインが秀逸。全身が四角い岩のブロック体で、指もないし顔もどこに目鼻があるのかも分からない。グレースは彼に「ロッキー」という名前を付ける。岩(Rock)みたいなボディだからだろうか。グレースはさらにロッキーの発する言葉を解析し、AIを利用して英語に翻訳、双方が会話を交わせるようにまでなる。

映画は、このグレースとロッキーの友情が物語のメインとなる。太陽消滅回避のヘイル・メアリー計画はむしろサブと言ってもいいくらいだ。

だから、目的の星タウ・セチに着いての、さまざまな危機に際しても、両者は互いに助け合い、時には命を賭しても助けようとする。このシークェンスはホロッとさせられる。
最初は見慣れなかった岩の体のロッキーも、終盤にはとても可愛らしく見えて来る。

両者は遂にアストロファージを捕食する生命体を見つけ、グレースはロッキーから地球に帰還する燃料を分けてもらって帰途に就くのだが、途中でロッキーの危機を悟ったグレースは地球への帰還を諦め、地球にはアストロファージの捕食体だけを無人の船で送った後、彼はロッキーを救いに戻って行くのだ。

このシーンはとても感動的だ。終盤グレースは、実は本人の意思に反して、眠らされて無理やり宇宙船に乗せられた事を思い出すのだが、その事もあってか、地球にはもう未練はないと思い至ったのだろう。

ラストシーンがとてもいい。グレースはロッキーの星で暮らす事を決意する。ロッキーと二人で海辺を歩くロングショットも、いい気分にさせられる。エンディングのワンシーンも心がなごむ。


SF映画と言うよりは、本作はファンタジーとして観た方がいいだろう。SFとするなら、11.9光年も彼方の星に向かうにしては宇宙船が光速で飛んでいるようには見えないし、光速でも往復24年近くかかるなら間に合わないんじゃないかとか。酸素マスクも付けずに走り回るシーンも無理があるし。
だがファンタジーと考えるなら、そこらは気にならなくなる。

本作のテーマはむしろ、“住んでいる生活環境も、言語も異なる異星人同士の間でも、友情は成立する”という点にあるのだろう。この事に、とても感動した。

それに引き換え、地球人は同じ星に住んでいながら、憎み合ったり、戦争をしたり、殺し合ったり。ここ数年のロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ侵攻、アメリカのイラン攻撃を観るにつけ、悲しくなってしまう。
互いを理解し合い、尊重し合い、心を通わせ、絆を深めて行けば、きっと戦争も争いごともなくなるだろう。そんな事も考えてしまった。

この終盤に流れる、ビートルズのヒット曲「Two Of Us」もいい選曲だ。まさにグレースとロッキーは"Two Of Us"(我々二人)だし、歌詞の最終節"We're on our way home, We're going home"は「我々は家に帰る道の途中だ」という意味で、それぞれ故郷の星に帰って行く二人にぴったりだ。ここでもジンとさせられた。

一連の“友好的異星人との遭遇”ジャンルの中でも、また新しい方向性を見つけた、これは素敵な秀作である。   (採点=★★★★☆

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コメント

 良い映画です。原作は未読(積読です)なので当初は、分かりにくいのですが、流れに任せるとだいたい理解できます。原作・映画ともベースに、トランプのような寛容さのない現状への危機感があるのでしょう。そんな堅苦しいことより、ロッキーが段々と可愛らしくなるのがうれしいです。サイレント・ランニングのロボットを彷彿とさせる動きも懐かしい。

投稿: 自称・歴史家 | 2026年4月26日 (日) 22:51

原作は読んでいます。
映画も面白かったのですが、原作が素晴らしく映画には期待していました。ちょっと期待しすぎたかな。
映画が面白かった人もそうでなかった人もぜひ原作は読んでほしいです。
映画は原作に割と忠実なのは好感が持てます。割と映像向きでない話に果敢に挑戦しています。
ラストの謎の解決の盛り上がりが映像ではなかなか盛り上げが難しいんですね。
原作ファンとしては迷うところですが、もっと思い切って脚色しても良かったかな。
制作も兼ねるライアン・ゴズリングはじめ俳優は好演していました。
特にある意味悪役のザンドラ・ヒュラーは素晴らしい。
映画も原作もお勧めです。

投稿: きさ | 2026年4月28日 (火) 11:19

◆自称・歴史家さん
「サイレント・ランニング」のロボットも可愛いかったですね。好きな映画です。
ロッキーはCGでなく、ロッキーの声も担当しているジェームズ・オルティスが操演するパペットだそうです。絶妙の動きでした。オルティスには助演賞を差し上げたいですね。


◆きささん
原作を先に読んでいるのですか。ぶ厚い原作なので映画にするとかなり端折らざるを得なく、先に読んだ方は映画に不満を感じるかも知れませんね。「木挽町のあだ討ち」同様、映画を観た後で原作を読む方が正解かも。
私も原作読みたいと思ってるのですが、上下2巻、文庫本でも計3千円もするので、図書館に予約入れました。やはり予約が殺到で数ヵ月待ちです。うーん早く読みたいな。

投稿: Kei(管理人 ) | 2026年5月 4日 (月) 15:30

たしかに映画が先の方がいいかもしれませんね。
原作はお勧めなのでぜひ。
上下巻で3000円ですか。
文庫も高くなりましたね。

投稿: きさ | 2026年5月 5日 (火) 21:20

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