B級娯楽映画 第147位 「紅孔雀」(5部作)
これも「笛吹童子」と同じく、NHKで放送された北村寿夫原作の「新諸国物語」シリーズの第2弾です。正式タイトルは「新諸国物語 紅孔雀」。
こちらも、福田蘭童作曲の♪まだ見ぬ国に住むと言う 紅きつばさの孔雀どり♪で始まる主題歌がラジオで大人気となって、映画化が待ち望まれていました。
※第二篇以降のポスター。 左上から順に2→3↙4→完結篇

実は54年4月公開の「笛吹童子」(以下“前作”)と本作との間に、前作のサブキャラクター、霧の小次郎を主人公にしたスピンオフ作品「霧の小次郎」三部作(監督:佐伯清)が同年8月に公開されています(ポスターには「笛吹童子・姉妹編」と表記)。前作の霧の小次郎(大友柳太朗)、妹の胡蝶尼(高千穂ひづる)、提婆(千石規子)が同じ配役で再登場、なんと前作の悪役、赤柿玄蕃まで登場、但し月形龍之介ではなく青柳龍太郎が扮しています。中村錦之助は登場せず、東千代之介が小次郎の敵、三日月童子として登場。
さらに同年10月には、その東千代之介扮する三日月童子を主人公にした再スピンオフ「三日月童子」三部作(監督:小沢茂弘)が公開。共演は三度登場の提婆に扮した千石規子、千原しのぶ、三条雅也、藤里まゆみと、作る度に配役が小粒になって行きます(笑)。最後に倒される悪役を吉田義夫が演じています。
まあこんな具合に、大ヒットした映画の何匹目かのドジョウを狙った作品を次々出す辺りがいかにも東映らしい所。しかも人気スター、中村錦之助は登場させず、飢餓感を煽った所で、同年12月27日に満を持して真打登場、錦之助主演の「紅孔雀 第一篇・那智の小天狗」が公開されます。
前作が1編50分前後の中編3部作だったのに比べ、本作は1編53~57分の5部作とスケールアップしています。
物語は、前作が戦国時代を舞台にしたお家再興ものであったのに対し、本作は江戸時代の南紀州が舞台の、巨万の宝物の有りかを巡っての正邪入り乱れての宝探し冒険活劇です。映画の冒頭には、「紅孔雀の宝は、鍵と地図がなければ得る事が出来ない」と字幕が出ます。
錦之助は、今回目出度く単独主演、那智の小四郎役でほぼ出ずっぱりの大活躍を見せます。刀を持ってのチャンバラ・シーンも多く、中盤では刀2本持っての二刀流で活躍するシーンもあります。子供たちは大喝采、大喜びです。
共演は前作に引き続き大友柳太朗、東千代之介、高千穂ひづる、悪役として三条雅也、吉田義夫が登場します。
時代は前作よりずっと後ですが、「笛吹童子」の敵チームだった「されこうべ党」の妖術師、信夫一角(三条雅也)、元海賊の網の長者
(吉田義夫)が紅孔雀の財宝の有りかを示す鍵を探して暗躍します。吉田義夫の顔の濃い事、どう見ても悪役です。しかも冒頭からドアップで登場します(笑)。
右の写真手前が吉田義夫、左が三条雅也。
小四郎は、信夫一角の妖術に苦しめられます。そんな時、フラッと助けに現れる謎の人物、五升酒の猩々(大友柳太朗)、実は小四郎の兄・主水がいい所で活躍します。
紅孔雀の鍵は、小四郎の父・代官那智の嘉門(有馬宏治)が持っていたのですが、一角に奪われ、嘉門は捕えられます。一方、網の長者の娘・久美(高千穂ひづる)は小四郎と恋仲になります。
第一篇の終盤は、久美から小四郎に渡った鍵を巡って、断崖絶壁の上での小四郎と一角の鍵の奪い合いが延々と続きます。鍵が崖下に落ちた所で第一篇が終了。この続きは来週公開の第二篇で、…といった具合に、いつもいい所で次回に続く、という流れはまさしく連続活劇の呼吸ですね。
第二篇では、久美は海賊どくろ丸に攫われますが、新たに登場の風小僧(山手弘)と名乗る少年が久美を助け、二人は浮寝島という島にたどり着きます(写真の右が風小僧)。この島には盲目の剣士・浮寝丸(東千代之介)がいますが、彼は妖術使いの老女・黒刀自(毛利菊枝)の呪いに操られています。以後浮寝丸は久美たちに味方しようとするも、黒刀自の呪いから逃げられず、第4編では遂に小四郎と剣の対決をする事となります。
盲目、総髪の東千代之介扮する浮寝丸がなかなかクールでカッコいいです。彼は笛の達人でもあり、笛を吹くシーンが何度か登場します。「笛吹童子」の錦之助を思い出させますね。
なお風小僧こと風の小六は、やはり東映によって本作からスピンオフして1959年より放送の30分テレビドラマ「風小僧」で活躍します。山城新伍がこの作品でデビューしました。
物語は第5部・完結篇で、黒刀自の呪縛から解放された浮寝丸の両目が開き、正義に目覚めます。実は小四郎も浮寝丸も、「白鳥党」の子孫であった事が分かります。「笛吹童子」も「白鳥党」と「されこうべ党」の戦いだったわけで、つまり本作は前作から繋がっていたという事なのですね。

そして終盤は、秘密の地図と鍵を手に入れた一角たち悪党が、山奥に隠されていた宝の有りかを見つけるのですが、欲に目のくらんだ悪人たちが仲間割れとなって殺し合いを始めてしまいます。
そこに小四郎、主水、浮寝丸たちが到着し、一角、網の長者、黒刀自たち悪人とのチャンバラが開始されます。最後には小四郎たちが悪人たち全員を斬り倒し、紅孔雀の宝も手に入れて大団円のハッピー・エンドとなります。
今から考えると、5部作にしたせいか、似たようなシーンが繰り返されたり、やや間延びした印象を受けますが、私も含めて当時の子供たちは、錦之助や千代之介、大友柳太朗たち正義のヒーローが大活躍する物語にすっかり魅了されていました。
本作は正月映画と言う事もあり、前作を上回る特大ヒットとなります。凄いのは、子供やその付き添いの大人などが劇場に押し寄せ超満員となり、座席に座れなかった観客は立ち見となり、壁際に留まらず、通路に新聞紙や雑誌を敷いて座り込んだり、中にはスクリーン手前の壇上にも上がり込んだりと大変な騒ぎ。そんな角度ではまともにスクリーン見れないと思うのですがね。
当時は自由席制で入れ替えもなく、一度入ったら何時間でも居れるので、満員で場内に入れなかった観客はロビーで時間を潰し、上映が終わると出て来る観客と入れ替わりに座席に座るという事も日常茶飯事でした。後には、あまりに客が入り過ぎて場内に入るドアが閉まらなくなり、ドアが開いたまま上映する事もありました。
本作がどれほどヒットしたかと言うと、1955年の配給収入成績で、本作がなんと配収ベストワンになったのです。添え物の中編B級映画が興行ベストワンとなったのは後にも先にも本作だけです。5部作の合計という事もありますが、前年のメガヒット作「君の名は」や「七人の侍」がこの年にはなかったことも幸いでした。
まあそんな具合に、日本映画が東映を中心に行け行けの時代に映画を観始め、その魅力に憑りつかれた事は私にとって本当に幸運でした。ああいう経験は、あの時代でなかったら味わう事は出来なかったでしょう。
そうそう、劇場の裏手にあったゴミ箱の中に、フィルムの切れ端がたくさん棄てられてて、私は「ニュー・シネマ・パラダイス」のようにそれらを持ち帰って飽きずに眺めていた事も懐かしい思い出です。いい時代でしたね。
(「紅孔雀」5部作 参考資料)
サブタイトル 公開日 上映時間
第一篇 那智の小天狗 - 1954年12月27日 57分
第二篇 呪いの魔笛 - 1955年 1月3日 55分
第三篇 月の白骨城 - 1955年 1月9日 53分
第四篇 剣盲浮寝丸 - 1955年 1月15日 54分
完結篇 廃墟の秘宝 - 1955年 1月21日 53分
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(付記)
もう一つ、この作品で特筆しておきたいのは、冒頭の会社マークのバックに、いわゆる“荒磯に波”の映像が登場する点です。

「笛吹童子」の時は、右のようにザラついた壁をバックにしているシンプルな物だったので、「紅孔雀」で初めてこの会社マークを観た時には、「おおおカッコいい」と喜びました。雲間から太陽光が射しているのも絶好のアングルです。
スタンダード・サイズの本作では、後のシネスコ版とは岩の形状が異なる上、波もあまり迫力はありませんが、それでもインパクトはありましたね。まさにこれから、怒涛の展開のチャンバラ映画が始まる事を予感させるものでした。以後“荒磯に波”のオープニングは何度か撮り直されながら、現在に至るまで続いております。
ただ、いろんなネットの情報では、“荒磯に波”が最初に登場したのは、内田吐夢監督の「血槍富士」だとしているものが多いのですね。
この作品の公開は1955年2月27日ですので、本作より2か月も後です。これは謎ですね。もしかしたら「血槍富士」の方が本作より先に完成したものの、公開が遅れた、という事なのかも知れません。何か情報知ってる方がいれば教えてくださいね。
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