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2026年7月15日 (水)

世界名作映画 第143位 「オズの魔法使」

Thewizardofoz6 1939年・アメリカ   101分
日本公開日:1954年12月25日
製作・配給:MGM映画
原題:The Wizard of Oz
監督:ヴィクター・フレミング
原作:L・フランク・ボーム
脚本:ノエル・ラングレー、フローレンス・ライアソン、エドガー・アレン・ウルフ
撮影:ハロルド・ロッソン
音楽:ハロルド・アーレン
製作:マービン・ルロイ

これは、映画ファンなら誰もが知っている、永遠の名作です。
作られてから、もう87年も経つけれど、何度も再上映されたり、舞台で上演されたり、ブロードウェイでミュージカルになったり。DVDも出ているし、息長く愛されている作品です。

リメイクやスピンオフも数多く、1978年にはブロードウェイ・ミュージカルをオール黒人キャストで映画化した 「ウイズ」(監督:シドニー・ルメット)も作られました。ドロシー役はダイアナ・ロス、カカシをマイケル・ジャクソンが演じています。舞台は現代のニューヨークに置き換えられていますが。
2013年には、魔法使いオズを主人公にした前日譚「オズ はじまりの戦い」(監督:サム・ライミ)も作られました。
そして記憶に新しい所では、昨年と本年に亘り2部作として「ウィキッド ふたりの魔女」「ウィキッド 永遠の約束」が公開されました。こちらは西の悪い魔女(エルファバ)を主人公にした異色ミュージカルでした。

オリジナルが映画史に残る名作でありながら、これだけ派生作品やミュージカル版が数多く作られているのも珍しいですね。でもこれはライマン・フランク・ボームの原作がよく出来ているからだと思います。

本作を最初に観たのはもう40年以上も前ですが、その時に感動したのは、映画が始まってから約20分後に、それまでのセピア調のモノクロ画面から、鮮やかなカラー画面に変わった時ですね。思わずわぁーっと心の中で声を上げました。

カラー映画に馴染んでいた当時ですら感動したのですから、アメリカで初公開された1939年当時の観客はもっと驚いたでしょうね。

原作では、始まってすぐに竜巻が起こってドロシーとトトが空に舞い上がるのですが、映画ではカンサスでのドロシー一家 ―エムおばさん(クララ・ブランディック)、ヘンリーおじさん(チャーリー・グレイプウィン)、農場で働くハンク(レイ・ボルジャー)、ヒッコリー(ジャック・ヘイリー)、ジーク(バート・ラー)の3人との生活ぶりや、ドロシーに助言を与える占い師のマーヴェル教授(フランク・モーガン)、それに意地悪なミス・ガルチ(マーガレット・ハミルトン)などの登場人物を丁寧に描いている為、作品に厚みが増しています。
同時に、この部分がモノクロ映像である為、20分経ってモノクロ画面に慣れた頃に登場するカラフルなオズの国が、余計鮮やかに感じられるわけです。うまい計算ですね。

Thewizardofoz5

カラーで描かれるオズの国におけるドロシーたちの冒険も、とても楽しい。また全体がミュージカルにもなっていて、いくつも楽しい楽曲が歌われます。さすがジーン・ケリーなど主演の名作ミュージカルを沢山作ったM.G.M製作だけの事はあります。

圧巻なのは、ドロシーの家の下敷きになって東の悪い魔女が死んだ事で、マンチキン・ランドに住む何百人もの小びとたちが喜び、歌い踊るシーン。みんなドロシーよりも小さな人たちが演じています。DVDの音声解説によると、この映画の為に世界中から70~140センチ以下の人を集めたのだそうです。それでも124人しか集まらなかったので、遠景や窓の中の子びとは子供が演じています。しかしまあよく集めたものですね。

Thewizardofoz3北の良い魔女・グリンダ(右)から、カンサスへ帰るには、エメラルド・シティに住むオズの大魔王の力を借りなくてはならないとに教えられたドロシーは、黄色いレンガ道を辿ってエメラルド・シティに向かいます。

途中で、脳みそを欲しがっているわら人形のカカシと、鍛治屋が心を入れ忘れた為心を欲しがっているブリキのきこり、臆病な為勇気を欲しがっているライオンが仲間に加わります。

Thewizardofoz4

この3人、よく見るとそれぞれ、カンサスの農場で働いていたハンク、ヒッコリー、ジークと同じ俳優が演じています。西の悪い魔女も、意地悪なミス・ガルチと同じ人ですね。また終盤に登場するオズの魔法使いに扮しているのも、占い師マーヴェルを演じたフランク・モーガンです(モーガンはオズの城の門番役も兼任)。
この事から察するに、オズの国での出来事は、もしかしたらドロシーが眠っている間に見た夢である可能性も示唆しています(原作では実際にオズの国に行く)。この設定は秀逸ですね。

エメラルド・シティに着いた一行はオズの大魔王に面会を許されますが、西の悪い魔女の箒を持って来れば皆の望みを叶えてやると言われ、ドロシーたちは勇気を振り絞って西の魔女と対決する事となります。

西の悪い魔女が何とも憎たらしい。道中でもケシ畑で一行を眠らそうとしたり、手下の猿軍団を使ってドロシーを魔女の城に閉じ込めたり、あらゆる手を使ってドロシーたちを苦しめます。
ミス・ガルチと悪い魔女の二役を演じたマーガレット・ハミルトン、楽しそうに憎まれ役を快(怪?)演してます(笑)。
これだけ憎たらしい悪役ぶりを発揮したからこそ、最後にドロシーに水をかけられ、死んでしまうシーンに観客は“ざまみろ”と快哉を上げるわけです(実は善人だったという「ウィキッド」2部作に私が共感出来ないのもその点なのですね)。

こうした数々の冒険を通して、ドロシーも、臆病だったライオンも勇敢に闘い、自らの手で道を切り拓いて行く事の大切さを学んで行くのです。脳みそがないと言ってたカカシだって、頭を使った行動をしてるし、心を欲しがってたブリキ男も、悲しい時やドロシーとの別れの時には涙を流す優しい心を持っていた事に気づかされます。みんなそれぞれ、オズの大魔王に頼らなくても、試練を乗り越えた事で立派に目的を達しているのですね。これも素敵な事です。

最後に無事カンサスの我が家に帰る事が出来たドロシーは、夢の中であったとしても、さまざまな出来事を経験した事で人間的にも成長した事を示して、映画は終わります。


本当に良く出来た、素晴らしい名作です。感動しました。いろんな派生作品が作られましたが、やはりこの作品が一番出来がいいですね。映画史の上に、燦然と輝いています。

その後もテレビ放映や午前10時の映画祭など、機会あるごとに何度も観ています。DVDも、未公開映像特典のある物や音声解説がある物の2種類を持ってて、何年か毎に鑑賞しています。

観る度に新しい発見もあって、例えば冒頭、ハンクがドロシーに「頭を使うんだよ。脳みそはないのかい?」とか、「頭にわらでも詰まってんじゃない?」と言うシーンがあったり、ジークが「俺なら勇気のあるとこを見せてやる」と言うシーンにはニヤリとさせられます。
また占い師のマーヴェルがドロシーの持ってる写真をこっそり見て、さも占いが当ったかのように思わせる詐欺師的な一面も、後のオズの魔法使いが詐欺で騙していた事への伏線になっていた事に気づかされます。本当に脚本がよく出来ていますね。

Thewizardofoz7 俳優では、ドロシーを演じたジュディ・ガーランドがとても可愛いです。名曲「虹の彼方に」を歌うシーンは惚れ惚れしますね。このシーンでも名演技を見せた犬のトトは、13本もの映画に出演している名犬です。助演賞をあげたいくらいです。

本作の監督、ヴィクター・フレミングは同じ年(1939年)に「風と共に去りぬ」を監督しています。凄い大活躍ですね(実際はジョージ・キューカー等何人かの監督が降りた後を引き受けたわけですが)。

まさに、不朽の名作、と言えるでしょう。また観たくなりました。

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(付記)こんなに素晴らしい名作なのに、日本初公開の1954年度のキネマ旬報ベストテンでは、誰も1票も入れていないのですね。けしからんです。

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