« 世界名作映画 第145位 「ダイヤルMを廻せ!」 | トップページ | 世界名作映画 第144位 「按摩と女」 »

2026年7月 4日 (土)

B級娯楽映画 第146位 「宇宙人東京に現わる」

Uchuujintokyoniarawaru 1956年・日本  87分
製作:大映東京撮影所
配給:大映
監督:島耕二 
原案: 中島源太郎 
脚本:小国英雄 
撮影:渡辺公夫 
音楽:大森盛太郎 
特殊技術:的場徹、築地米三郎、田中捨一 
色彩指導・キャラクターデザイン:岡本太郎

この作品も、私はリアルタイムで観ています。昭和31年公開ですから、小学校2~3年くらいだったかな。

その2年前に公開され、話題を呼んだ「ゴジラ」1作目も当時観ています。それとか、149位の「宇宙水爆戦」も本作も、自分一人で観に行った記憶はないので、多分親に連れて行ってもらったのかな。私の親、相当SF映画好きだったのかも(笑)。おかげでその後の東宝怪獣映画も含めて、SF映画のファンになりました。

子供だったのでストーリーはよく分からなかったけれど、ヒトデ型の宇宙人は鮮明に覚えていました。後に大人になってテレビで再見して、こんな物語だったんだなと理解しました。

本作は、日本で初めての、総天然色(カラー)特撮映画です。公開は1956年1月(東宝最初のカラー特撮映画「空の大怪獣ラドン」公開は同年12月)。当時カラー作品は製作費が嵩むのであまり作られてはおらず、大映が本作に賭ける意気込みが感じられます。

スタッフ・クレジットを見て驚きました。脚本がなんと!戦前から活躍している名脚本家、黒澤明監督の「生きる」、「七人の侍」等でも知られる小国英雄です。よくこんなB級SF映画を手掛けたものですね。
監督も、戦前に「風の又三郎」(1940)、「次郎物語」(1942)等の秀作を監督している島耕二。いずれもキネマ旬報ベストテンにランクインしてます。
さらに色彩指導としてクレジットされているのが、1970年万博・太陽の塔のデザインで知られる鬼才、岡本太郎。錚々たる一流スタッフです。ヒトデ型宇宙人のデザインも岡本さんが手掛けています。お腹に大きな目玉がある造形は、いかにも岡本太郎らしいデザインですね。

物語を要約すると、
近年地球で原水爆の核実験が行なわれている事を知ったパイラ星人が、その開発を止めさせるべく地球にやって来る。自分たちも核兵器開発競争が元で破滅しかけた事があり、その恐ろしさを知っているからだ。パイラ星人の1人は人間に変身し、原水爆以上のエネルギーを持つ爆発物を研究している科学者に近づき、開発を止めさせようとする。ところがその頃、巨大な新天体Rが地球に接近し、このままでは地球と衝突するので世界はパニックとなる。この危機を食い止めるべく動いたパイラ星人のおかげで、新天体Rは大爆発し、地球は救われ、パイラ星人は地球を去って行く。

つまり、本作の5年前に作られた「地球の静止する日」(監督:ロバート・ワイズ)と同じく、人類に友好的な宇宙人が登場するお話です。そして地球の核兵器開発を止めさせようとするのが目的です。これも「地球の静止する日」と同じですね。
それだけだったらパクリ(笑)になるので、後半は地球に近づいて来る新天体Rを、パイラ星人の協力で爆破させる、という話がメインになります。こちらは後の東宝SF[妖星ゴラス」に影響を与えていますね。Rが近づいて天変地異が起きる辺りも似ています。

Uchuujintokyoniarawaru2 パイラ星人の造形は、ロビーカード(左)では地球人の4~5倍くらいの大きさでフォルムも丸みを帯びていますが、実際に画面に登場する姿(右)は背丈も地球人と同じ、外観も布地を縫製して作ってるようでシワシワが目立ちます(笑)。おまけに、靴を履いています。まあ靴がなけりゃ演じているUchuujintokyoniarawaru4 人は立っていられませんからね(笑)。

パイラ星人は話し合いをしようと地球人に近づきますが、人々はその姿を見て「お化けだ!」と驚いて逃げ惑います。そりゃ一つ目の巨大ヒトデを見たらお化けだと思いますよ。
笑えるのが、パイラ星人たちが地球人の写真を見て「あんな醜悪な顔を持ってるとは、地球人は可哀想な生き物だ」と言うシーン。地球人から見ればあんたたちがよっぽど醜いのにね。

Uchuujintokyoniarawaru7 そこで星人の1人が変身機を使って人間の姿に変身します(右)。オーバーラップ撮影で、ヒトデ型の姿から苅田とよみ演じる地球人に変身するまでをワンカット風に撮っているシーンが見ものです。当時観たこのシーンも鮮明に覚えていました。

変身した彼女は 天野銀子と名乗り、原水爆以上のエネルギーを持つ爆発物ウリュウムの方程式を開発した松田博士(山形勲)に近づき、自分の正体を明かし「そんな恐ろしい兵器は人類の破滅です」と説き伏せ、松田博士はその方程式を焼き捨てる決心をします。

Dscf0108 ところがその後、地球より遥か巨大な新天体Rが、地球と衝突する軌道を進んでいる事が判明し、Rを破壊する為世界中の原水爆が一斉に発射されますが、Rはビクともしません。万事休すです。

そんな時、ある闇組織が松田博士を誘拐し、監禁して方程式を書けと博士に迫ります。
地球がもうじき破滅するかも知れない時に、そんな新型兵器の秘密を奪ってどうするんですかね(笑)。まあ人類はどこまでもエゴイスティックで愚かだという事を強調したかったのでしょうが。

Dscf0111 幸い、銀子やパイラ星人の仲間が博士の監禁場所を急襲し、松田博士は無事解放されます。博士は、地球上には残さない約束で銀子にウリュウムの方程式を渡し、パイラ星人はそれを元にウリュウム核爆弾を作ってRに向け発射し、Rは大爆発を起こして地球は救われます。それを見届けたパイラ星人たちは円盤に乗って去って行く所で映画は終わります。


方程式だけでパイラ星人がそんな短期間に新型爆弾が作れるのか、という疑問はありますが、全体的には「ゴジラ」と同じく、核兵器開発競争への批判がテーマとして込められている点は評価すべきでしょう。終盤は新天体Rの騒動でややボヤけてしまった感はありますが。

思えば脚本の小国英雄は、この前年の黒澤明監督作「生きものの記録」(1955)でも原水爆の恐怖を真正面から取り上げていました(黒澤明、橋本忍と共作)ので、本作はその流れを汲む作品と言えるかも知れません。
そういう意味では、本作は反核をテーマとした日本製SF映画として、もっと評価してもいいかも知れませんね。

特殊効果は、当時の大映としては良く頑張っています。特殊技術を担当の築地米三郎は、この9年後、「大怪獣ガメラ」(1965)の特殊撮影を担当している点も要チェックです。


Dscf0095 蛇足ですが、島耕二監督の演出は、メインタイトル・クレジット終了後、いきなり番傘のクローズアップから始まるのも異色です。その後も畳、襖の純日本家屋がよく登場しますし、右写真のように、まるで小津安二郎作品のようなUchuujintokyoniarawaru5 ローアングルに和服姿の女性も登場したり、近未来SFと純日本的風景とが混在するのもユニークです。成功しているとは言えませんが、島監督なりのこだわりを示したかったのかも知れません。


そんなわけで、本作は私が子供時代に出会った、忘れられない日本製SF映画の1本として記憶に残る作品なのであります。

 ランキングに投票ください → にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

 

 

 

|

« 世界名作映画 第145位 「ダイヤルMを廻せ!」 | トップページ | 世界名作映画 第144位 「按摩と女」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 世界名作映画 第145位 「ダイヤルMを廻せ!」 | トップページ | 世界名作映画 第144位 「按摩と女」 »