「ミニオンズ&モンスターズ」
2026年・アメリカ 90分
製作:イルミネーション=ユニヴァーサル・ピクチャーズ
配給:東宝東和
原題:Minions & Monsters
監督:ピエール・コフィン
共同監督:パトリック・デラージ
脚本:ブライアン・リンチ、ピエール・コフィン
音楽:ジョン・パウエル
製作:クリス・メレダンドリ、ビル・ライアン
米イルミネーション制作の「怪盗グルー」シリーズからスピンオフした人気キャラクター・ミニオンズの活躍を描いた長編アニメーション。監督は「怪盗グルーのミニオン大脱走」のピエール・コフィン。声の出演は監督のピエール・コフィンがミニオンを、その他トレイ・パーカー、アリソン・ジャネイ、クリストフ・ヴァルツ、ジェシー・アイゼンバーグ、ジェフ・ブリッジスなど豪華な顔ぶれ。日本語吹替版は松平健、千葉雄大、鈴木愛理、山寺宏一、銀河万丈など。
(物語)原始時代から最強最悪のボスを求めて旅を続けるミニオンズが辿り着いたのは、映画の都ハリウッド。ひょんなことから映画スタジオに入り込み、人気俳優として活躍する。だが時代はトーキーとなり、英語が喋れないミニオンズはお払い箱に。それでも物語作りに熱心なジェームズは、自分たちでモンスター映画を作ろうと大はりきり。呪文で最強のモンスターを呼び出すが、現れたのはミニオンよりもさらに小さく可愛らしい緑色のモンスター“グーミー”だった。果たして“最強のモンスター”は見つかるのか…。
イルミネーション・スタジオ製作のアニメ「怪盗グルー」シリーズは、1作目「怪盗グルーの月泥棒」(2010)及び「ミニオンズ」(2015)「怪盗グルーのミニオン大脱走」(2017)、の3本を観ている。そこそこ面白かったが、段々飽いて来て最近の作品は観ていない。
近年は劇場で映画を観る機会も減っており、本作もパスするつもりだったが、“映画ネタのパロディがいっぱいある”との噂を聞きつけ、観てみる気になった。
(以下ネタバレあり)
冒頭から思いっきり笑った。まず地球の周りをユニヴァーサルの文字が取り巻く会社ロゴが途中で止まり、逆回転して、過去の会社ロゴが時代を遡って登場する。1930年代作品からユニヴァーサル映画を観て来た私なんかはもうこれで大喜び。全部見覚えがある。飛行機が地球の上を一周する奴もあったね。
本編が始まると、映画の原初である、ただ何枚かの絵を回転させてるだけのエドワード・マイブリッジの「動く馬」(1878)、リュミエール兄弟の「工場の出口」、「ラ・シオタ駅への列車の到着」(1895)などの映画創世記の映像が流れ、その画面の隅に必ずミニオンたちが登場しているのにも笑った。いずれも映画に関するドキュメンタリーなどで見覚えのある映像だ。その映像にCGでミニオンズを合成している。もうこれだけで古い映画ファンの私なんぞは感動でウルウルして来る。
リュミエール兄弟の「水をかけられた散水夫」(1895・右)は、散水夫が水を撒いている所に一人の少年がいたずらでホースを踏んで、水が止まったので散水夫がホースを覗いた時に少年が足を離し、散水夫がずぶ濡れになるという有名なギャグなのだが、この少年をCGで消してミニオンを代わりにはめ込むという手間のかかる事をやっている。
そして最悪のボスを探す放浪の旅を続けるミニオンズが登場する本編となるのだが、ここにもいろんな映画オマージュが登場する。
まず列車強盗を働いて馬で逃げる男を追う警備団の群れ。明らかに映画創世記の「大列車強盗」のワンシーンを思わせる。ミニオンズはこの列車強盗男こそ最悪のボスだと思い込み、列車を奪い取って追いかけるうちに列車が暴走、映画スタジオに突入して当るをなぎ倒しぶち壊し、大混乱となる。
この暴走の途中で、工場内でオートメーションの歯車に巻き込まれ(チャップリンの「モダン・タイムス」)、時計塔の針にぶら下がり(ハロルド・ロイドの「要心無用」)、倒れて来た家の壁で潰されるかと思いきや窓の位置にいたおかけで無事だったり(「キートンの蒸気船」)と、サイレント時代の三大喜劇王の名シーンが次々出て来るのにも笑い転げた。列車暴走シーンには「キートンの大列車追跡」も混じっていたような。
実はこの列車強盗との追跡劇シークェンス、マックス(声:クリストフ・ヴァルツ)が監督する映画の撮影シーンだった。撮影はメチャクチャになるのだが、撮り直す余裕もなくミニオンズが写り込んでいる映画を、重役たちのいる試写室で映写する羽目となる。
ところが試写を観ていた映画会社の大物プロデューサー、フランク&エルウッドのブライト兄弟(声:ジェフ・ブリッジス)が「面白い!」と絶賛、あいつらを主演にした映画を作れとマックスに命令する。かくしてミニオンズは映画に出演する事となるのだが、作る映画がどれも面白くて映画は大ヒット、ミニオンズは一躍ハリウッドの大人気スターとなるのである。
フランク&エルウッドのブライト・ブラザース・ピクチャーはワーナー・ブラザース・ピクチャーのパロディか。
映画撮影の途中にも、いろいろと名作映画パロディが飛び出す。ジョルジュ・メリエスの「月世界旅行」の、月に向かったロケットが人間の顔をした月面にぶつかる有名なシーン、その月面の顔がミニオンになってるのには大笑い。
フランク&エルウッド兄弟の会話の途中、黒人のピアニストに「サム、あれを弾いてくれ」と声をかけると、「カサブランカ」の有名な主題歌「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」の演奏と歌を始めるシーンも楽しい。
ところが時代はトーキーに移り、俳優は自分の声でセリフを喋る事となる。その為外国から来た訛りが酷い俳優や、滑舌の悪い俳優は職を失う、という事態は実際にハリウッドであった事なのだが、これもうまくパロディにしている。
ミニオンたちも英語で喋らなくてはならないのだが、ミニオン語しか喋れないので何度やってもNGとなる。
ここで登場するのが、「市民ケーン」の冒頭シーンのパロディで、ケーンに扮したミニオンが、どうしても「バラのツボミ」と言えなくて、とうとう役を下ろされてしまう。凝ってるのはその直前、雪の中の家のミニチュアが入ったガラス玉をケーンが落とすシーンまで出て来る所。「市民ケーン」を観てなければ何の事やら判らないだろうに。やりすぎ(笑)。
とうとうミニオンたちは干されてしまい、やがてハリウッドからお払い箱となる。みんなは意気消沈するが、1人ジェームズだけはまだ映画への夢を諦めきれない。
そんなジェームズに、マックスがこれまでのお礼にと、撮影カメラをプレゼントするシーンはちょっと泣ける。ジェームズはこのカメラで映画を作ろうと決意する。
自分で絵コンテを書いたりしているうちに、ジェームズはモンスターを登場させる事を思いつく。魔術の本を見て、最初は小さく可愛らしい緑色のモンスター、グーミー(声:トレイ・パーカー)を呼び出すが、やがてグーミーは巨大なスライム状の怪物、アイリーンを呼び出してしまい、またもハリウッドの街は大混乱となる。このスライム状の怪物は「マックィーンの絶対の危機」に登場するブロブのパロディだろう。
途中で、宇宙からやって来たというロボットのドート(声:ジェシー・アイゼンバーグ)も登場して、人間の少女デビー(声:ゾーイ・ドゥイッチ)と恋仲になるエピソードも登場するが、このドート、その名前とデザインから見ても、ロバート・ワイズ監督のSF「地球の静止する日」(右)に登場するロボット、ゴートのパロディである。うーむ、こんなマイナーな映画を観てる人、どのくらいいるだろうか(笑)。
(以下重要ネタバレあり、注意)
アイリーンが街を破壊し、絶体絶命、と思えた時、ドートが率いるミニオンズも乗った大編隊の空飛ぶ円盤がやって来てアイリーンを倒し、街に平和が訪れる。
…と思ったら、これらはすべてジェームズが作った映画のシーンだった事が判る、というメタ構造オチも面白い。
こうしてジェームズは見事、映画監督として大成功を収めた、という話を、映画博物館のガイド、オリビア(声:アリソン・ジャネイ)が子供たちに聞かせてあげるシーンで映画は終わる。
この博物館の館内にも映画ネタがいっぱい。「大アマゾンの半魚人」やフリッツ・ラング監督の「メトロポリス」のロボット(SWのC3POと勘違いする人もいるだろうが)等のフィギュアも陳列されていて、何故かジョージ・ルーカス本人も陳列?されているのが笑える。
まあこんな具合に、本作は全編、映画創成期からのいろんな古典映画オマージュてんこ盛りの、古くからの映画ファンには実に楽しい映画だった。
逆に小さい子供たちには訳の分からないシーンでキョトンとするかも知れない。でも元ネタを知らなくても、全体的にはミニオンズの活躍シーンが楽しいので、それなりに楽しめる映画にはなっている。パロディの元ネタを知ってればもっと楽しめるけれど。
探せば、まだまだ私の知らない映画のパロディがあるかも知れないので、DVDが出たら買ってじっくり観たいと思う。
(採点=★★★★☆)
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