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2026年8月10日 (月)

B級娯楽映画 第140位 「紅顔の密使」

Kougannomisshi1 1959年・日本  89分
製作:東映京都
配給:東映
監督:加藤泰
原作:千葉省三
脚色:加藤泰
撮影:吉田貞次
音楽:高橋半
助監督:長谷川安人、鈴木則文、山内鉄也
企画:杉井進

私の敬愛する、加藤泰監督作の初登場です。

とは言うものの、本作は加藤泰監督作品の中では異色の、“波乱万丈冒険大活劇”です。おそらく加藤泰監督のファンの方でも、知る人はあまりいないのでないでしょうか。

なぜこれをベスト150に入れたかと言うと、私はこれを1959年の封切時に、大好きな“東映チャンバラ映画”の1本として、劇場で観ているのです。監督名など、まったく意識していませんでした。
当時の感想としては、美男スターの大川橋蔵がカッコいいヒーローとなって大暴れ、最後に悪の一味を倒す痛快チャンバラ映画として十分楽しめました。

後に社会人になって、加藤泰作品を意識して観るようになって、そのフィルモグラフィーにこの作品がある事を知って驚きました。
その後この作品がテレビで放映された時に、録画して観直してみると、B級娯楽映画として良く出来ており、かつ加藤泰監督らしい要素もあって、私の愛すべき映画の1本となったわけです。


物語の時代は延暦十九年(西暦800年)です。冒頭いきなり富士山の大噴火シーンが登場します。実際にこの年、富士山が噴火しています(延暦大噴火)。

Kougannomisshi3 そして時を同じくして、陸奥の一角で悪路王(吉田義夫)を将とする反乱軍が蜂起し、悪路王はその片腕、出羽の赤鷲(田崎潤)と共に大軍勢で陸奥を席捲、多くの兵士が倒され、死体の山が築かれて行きます。「紅孔雀」に続き、ここでも吉田義夫の顔のどアップ(右)が登場します(笑)。
ここでワンシーンながら、死体の横で小さな子供が呆然と佇んでいる様子が描かれます。深い意味のあるこのシーンについては後述します。

反乱軍は陸奥国に造営されたばかりの胆沢城に攻め込もうとしますが、辛うじて持ち堪えています。平和国家建設に向ったばかりの大和朝廷は、まだ反乱軍を鎮圧すべき官軍の軍勢が整っておらず、このままでは胆沢城も危うい、なんとかせねばと思案中です。

そんな時、一人の若者、小田の武麿(大川橋蔵)が、自分を朝廷の密使として、胆沢城へ遣わして欲しいと願い出ます。実は武麿は、官軍到着まで胆沢城を守り通す目算があると告げます。武麿は陸奥の生まれで、彼の父が胆沢城内に油水を見つけており、これを武器にすれば形成は逆転出来る、と踏んだのです。

かくして武麿は陸奥、胆沢城へと旅立ちます。京の都から陸奥までは相当の長旅です。
Kougannomisshi4途中、逢坂峠の関所で、陸奥まで父を探しに行く狭霧(一条珠実)と知り合い、一緒に旅を続ける事になります。どうやら仄かに武麿に思いを寄せている様子。

道中では何度か、反乱軍側の敵将・赤鷲とその一味と遭遇します。ある宿では傍若無人に暴れ、狭霧にまで手を出そうとする赤鷲の配下と乱闘になった武麿は一味をやっつけてしまいます。この時、武麿は朝廷発行の通行手形を落としてしまい、すぐに拾いますが、それを赤鷲の一味、夜叉姫(故里やよい)に見られてしまいます。

ここで赤鷲が立ち上がり、旅の余興で武麿に腕比べとして斧の投げ合いを申し込むのですが、その都度武麿が勝ちます。だんだん難易度が上がり、遂には壁の前に立った女のすぐ傍に斧を投げる技比べとなり、狭霧が、武麿を信じていると言って壁に立ちます。武麿は見事2本の斧を狭霧の顔の両側に突き立てます。
これ、西部劇でも拳銃を使っての腕比べとしてよく登場するシーンですね。橋蔵がなんともカッコ良くて、女でなくても惚れ惚れします。

その後武麿と狭霧は馬で逃げ、赤鷲たちが二人を追います。その途中、夜叉姫は雷に打たれた木にぶつけられ、谷に落ちてしまいますが、翌朝助けを求める声を聞いて、武麿は夜叉姫を谷から引き上げ助けます。この事で以後、夜叉姫も赤鷲に隠れ、何かと武麿を助けるようになります。

その後も、船の中でまた赤鷲一味と遭遇し、武麿は海に落ちて狭霧は赤鷲に捕えられたり、途中の街で武麿は母・柴木(毛利菊枝)と出会ったものの柴木も赤鷲たちに捕まったりと、物語はめまぐるしく進みます。

何とか逃げた武麿は、戦災孤児の柿丸(宮崎照男)と出会い、柿丸の手助けで敵陣を突破します。この柿丸、この後も何かと役に立ってくれます。

武麿は待ち伏せていた赤鷲一味に捕まり、通行手形を奪われてしまいます。母の柴木は息子をかばって殺され、武麿は火で焼いた剣で目を刺されそうになりますが、夜叉姫が自分でやると言って、焼けた剣を武麿に突きさしたふりをして武麿を助けます。前に武麿に助けてもらった恩返しもあるでしょうが、あるいは武麿に恋心を抱いていたのかも知れません。

一方狭霧は柿丸が牢に穴を開けてくれたおかげで脱出に成功、高台から突き落とされた武麿とも遭遇して、3人で一路胆沢城に向かいます。この辺り、ちょっと都合が良過ぎる気もしますが(笑)。

Kougannomisshi6赤鷲の方は武麿から奪った通行手形を利用して、朝廷の密使に成りすまして夜叉姫と共に胆沢城に入り込みます。もうじき援軍が到着すると安心させ、夜叉姫は気晴らしにと妖艶な踊りを舞います。ほとんどブラ1枚くらいの夜叉姫の姿(右)は、大人の観客は喜んだでしょうが、子供には目の毒です(笑)。サービスに徹した演出は、加藤泰作品では珍しいですね。

明け方、赤鷲は城門を開け、悪路王の軍勢を場内に入れようとしますが、胆沢城に辿り着いた武麿の奮闘で赤鷲の企みは潰えます。この時、武麿の目が見えている事に気づいた赤鷲は、裏切った夜叉姫を斬り倒し、逃げて行きます。

瀕死の夜叉姫は武麿の手を握り、「どうしても私たちは仲間になれなかった」と呟きますが、武麿は「何を言う、我々は仲間にならなければいけないのだ。同じ人間同士だ、血を流し合う事はないのだぞ」と言います。この言葉、いつの時代も続く戦争に対する、加藤泰らしい批判の言葉として胸に沁みます。

そしてラストのクライマックス、襲って来る悪路王軍と、武麿率いる胆沢城軍との大バトルななかなかの迫力です。武麿の父が言っていた、油水(つまり石油)の井戸を苦労の末発見、敵軍に油水をぶっかけ、火をつけた事で形成は逆転、敵は火に包まれ逃げ惑い、悪路王は武麿の射た矢に倒されます。吉田義夫の死に様、カッコいい(悪い?)です。

Kougannomisshi2

最後に生き残った赤鷲と武麿の最終決戦が展開されます。このシーン、延々と続き、なかなかの迫力です。最後に赤鷲も倒され、反乱軍は全滅、朝廷側の大勝利となります。

ラストシーンは、武麿と狭霧の結婚の儀で締めくくられます。まさにハッピー・エンドの大団円。めでたしめでたし。


まったく楽しいスペクタクル大活劇エンタティンメントでした。

胆沢城の攻防シーンは、近くに自衛隊の演習場もある滋賀県の饗庭野の原野に城の大オープンセットを作りロケをしていますが、粘る加藤演出に撮影は長引き、東映京撮の助監督が総出で手伝いに訪れ、中島貞夫は東映入社早々、いきなり長靴を持って現場に行けと言われたと(笑)述懐しています。これも加藤泰らしいエピソードですね。

本作の見どころはそれだけでなく、中盤には胆沢城に篭った兵士たちの眼前に敵軍が果物のいっぱい入った籠を置いて行き、ひもじさに数人の兵士の家族が城を出て果物を食べようとしますが、そこに矢を射られ次々と人が倒れて行くシーンが登場します。
特に小さな子供が果物を握ったまま矢で殺され、その亡骸を抱いた母親も矢に討たれ、その姿を父親はなすすべもなく見つめるシーンは涙を誘います。
冒頭の死骸の側に佇む子供のシーンと併せ、“戦争で犠牲になるのはいつも子供たちなのだ”という加藤泰監督の強いメッセージを感じました。

単純明快な娯楽映画の中にも、こうしたメッセージを挟みこんで来る辺り、本作もまた加藤泰らしい作品だと言えるでしょう。

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