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2026年8月19日 (水)

B級娯楽映画 第139位 「窓」

Thewindow1 1949年・アメリカ   73分
日本公開:1950年
製作:RKOラジオ・ピクチャー
配給:セントラル映画社
原題:The Window
監督:テッド・テズラフ 
原作:コーネル・ウールリッチ 
脚色:メル・ディネリ 
撮影:ウィリアム・スタイナー
音楽:ロイ・ウェッブ
製作:ドア・シャリー

あまり(ほとんど?)知られていない作品ですが、個人的にはとてもよく出来たサスペンスの秀作だと思います。隠れた名作、と言ってもいいでしょう。

これも当ベスト141位の「飾窓の女」と同じく、大阪・九条のシネ・ヌーヴォの「フィルム・ノワールの世界」特集のVol.5で鑑賞しました。

原作がヒッチコックの秀作「裏窓」やフランソワ・トリュフォー監督「黒衣の花嫁」などで知られるコーネル・ウールリッチ。この人は別名のウィリアム・アイリッシュ名義でも、やはりトリュフォー監督で映画化された「暗くなるまでこの恋を」(原作「暗闇へのワルツ」)や、江戸川乱歩も絶賛した「幻の女」などのミステリー小説を書いています。どれも映画公開時話題になったのに、本作はなんで話題にならなかったんでしょうか。

ヒッチコックが監督した「裏窓」(1954)とタイトルが似ていますが、「裏窓」でも主人公が殺人があったのではと警察に言っても信用してもらえなかったり、殺人犯人にあわや殺されそうになったりと、本作と似ている点は多いです。


冒頭の字幕に出て来ますが、発想の元はイソップ童話「オオカミ少年」です。嘘ばっかりついていた為に、本当の事を言っても信用されない、あれですね。

主人公の少年がある夜、殺人事件を目撃しますが、いつも嘘ばかりついているので、両親に訴えても信じてもらえない。少年は目撃された事を知った犯人から命を狙われる、果たして少年は助かるのか、といったサスペンス映画です。

(以下ネタバレあり)

Thewindow2_20260819172801冒頭、廃墟のようになった建物の中で、子供たちがそこを遊び場にしているシーンが出て来ます(右)。屋上が隣の建物と繋がっており、主人公の10歳の少年トミー(ボビー・ドリスコル)がその廃墟から屋上伝いに移動し、外壁の非常階段を降りて自分の家に戻るシーンがありますが、これがトミーによる殺人の目撃、及びラストのクライマックスの巧みな伏線になっているのが秀逸です。

トミーはいつも軽率に嘘を言ってしまう癖があります。予定もないのに、友達に「もうすぐ引っ越す」と言ってしまい、それが次の住人をアパート貸主が連れて来るという騒ぎになり、トミーは両親から「部屋を追い出されるところだったぞ。年中嘘ばかりついていて、いいかげんにしろ!」とこっぴどく叱られます。

そんなある日の夜、夏の夜の蒸し暑さに、トミーは窓から外に出て、非常階段を伝って一つ上の階の窓際で寝る事にします。
ところが深夜目を覚ますと、すぐ前の家で、そこの住人ケラーソン夫妻が一人の男をハサミで刺し殺す所を窓の隙間から目撃してしまいます。びっくりしたトミーは飛んで帰って母親(バーバラ・ヘイル)にその事を伝えますが、また嘘を言ってるか夢を見たのかどちらかでしょうと相手にしてくれません。この時トミーが非常階段に枕を忘れてしまい、これがいつケラーソン夫妻に見つかるか、というサスペンスもハラハラさせます。

翌朝、トミーは夜勤帰りの父(アーサー・ケネディ)にもその事を伝えますが、父も母と同様いつもの嘘だろうと決めつけます。トミーは今度は警察に行って殺人があった事を伝えますが、警察も信じてくれません。

それどころか、警察に行った事が母に知れ、母はなんとトミーを連れてケラーソン家に謝りに行きます。これでケラーソン夫妻はトミーに殺人を目撃された事を知り、両親が外出した夜、ケラーソンはトミーの家に侵入し、トミーを殺そうと企みます。果たしてトミーの命運は…。と言った具合に、終盤はトミーの命を狙う殺人犯と、彼らから必死に逃げ回るトミーとの息詰まる攻防戦がクライマックスとなります。

Thewindow3

切羽詰まったトミーが逃げ込んだのは冒頭の廃墟です。殺人犯に追われ、階段が崩れたり、何度も危機的状況に陥りながらも、崩れそうな梁を利用して危機一髪、逆転勝利を収めるまでが実にスリリングで手に汗握ってしまいます。最後はトミーが正しかった事も証明され、一件落着のハッピーエンドとなります。

結果として殺人犯の夫を殺してしまう事になるのはどうかなと思わないでもないですが、相手は悪人だし、正当防衛、という事でOKでしょう。


本作が優れているのは、殺人犯に狙われる目撃者を10歳の子供にした事、及びその子供がいつも嘘をついていた事から、誰からも信用されず窮地に追いつめられて行く、という2つのアイデアを利用している点です。
殺人を目撃した人物が殺人犯に狙われる、というサスペンス映画は昔から沢山ありますが、その対象を小さな子供にした映画は多分本作が初めてではないでしょうか。似た作品で思いつくのは1970年に作られた「小さな目撃者」(ジョン・ハフ監督)があります。マーク・レスターが目撃者で、彼は空想癖があるのでまた嘘を言ってると相手にされない、という点も本作と似ています。おそらく本作をヒントにしているのではと思われますが、出来は本作の方がリアリティがあってよく出来ています。マーク・レスターは可愛かったですけどね。

脚本のメル・ディネリは本作の前に、これもサスペンス映画の秀作「らせん階段」(1946。ロバート・シオドマク監督)の脚本も書いています。この作品は製作者(ドア・シャリー)、製作会社(RKOラジオ・ピクチャー)、日本配給(セントラル)とも本作と共通します。「らせん階段」は有名なのに、なんでこっちは冷遇されてるのでしょうね。多分邦題(「窓」)が悪かったのかも。これではどんな映画か判りませんものね。

そして本作の監督、テッド・テズラフはカメラマン出身で、ヒッチコック監督の「汚名」の撮影も担当しています。ですから映像はさすがにキレがあります。
本作でテッド・テズラフ監督は、49年度ベルギー国際映画祭の最高監督賞を受賞しているくらいですから、国際的な評価は高いようです。
また少年トミー役を演じたボビー・ドリスコルは、本作の演技によって、第22回アカデミー賞で特別賞(ジュブナイル賞)を受賞しています。確かに名演技でしたね。

ちなみに1950年度のキネマ旬報ベストテンで、この作品に投票したのは淀川長治さんただ一人!100点満点で80点を付けています(ベストテン25位)。さすがは分かってらっしゃる(笑)。

まあそういった具合に、評価する人は評価している、サスペンス映画の名作だと私は思います。何かの機会にでも再評価の機運が高まる事を期待したいですね。

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