B級娯楽映画 第138位 「原子怪獣現わる」
ストーリーは、“水爆実験の影響で太古の眠りから覚まされた怪獣が、海を渡って大都会に上陸、破壊の限りを尽くすが最後に人類によって倒される”というもの。
それって「ゴジラ」じゃん、と誰もが思うでしょうが、実は「ゴジラ」製作の前年1953年に、こちらの方が先に作られています。東宝のプロデューサー、田中友幸氏が、おそらく本作をどこかで観たか、あるいは作品情報を見聞して、それをヒントに「ゴジラ」を企画したものと思われます。
そして「ゴジラ」の企画当初の仮題は、「海底二万哩(マイル)から来た大怪獣」でしたが、本作の原題も、"The Beast from 20,000 Fathoms"と、よく似ています。ヒントにしたの丸分かりですね(笑)。
結果的には、わが「ゴジラ」が世界的にも有名になって、本作は余程の映画ファンでない限り、忘れられた存在となっているのがちょっと残念です。
なお本作は、コマ撮り特殊撮影の第一人者、レイ・ハリーハウゼンの本格デビュー作という点でも注目すべき作品です。
さて本題。
北極圏の米軍の秘密基地で、水爆実験が行われます(ビキニ環礁での水爆実験の記録映像が使われてます。さすが凄い迫力です)。
実験は成功、物理学者のトム・ネスビット教授(ポール・クリスチャン)が関係者と共に成功を祝います。
この時同僚が「実験をやる度に、新時代の第一章だと思ってる」と語るのですが、それに対しネスビット教授は「旧時代の終章でなければいいが」と返します。この言葉は意味深ですね。
翌日ネスビット教授は、同僚のリッチーと共に現地調査に出発します。ところが風吹が強くなり、引き返そうとしたリッチーは突然現れた怪獣に驚き、雪原の割れ目に落ちてしまいます。助けようとしたネスビットはその時風吹の向こうに、やはり怪獣を見てしまいます。「ゴジラ」と違って出し惜しみせず(笑)、早々と怪獣が現われます。

その直後怪獣の動きで雪崩が起き、リッチーは雪の下に埋もれ、ネスビット教授も危ない所を救助隊に助けられますが、うわ言で「怪獣だ」と言ってます。
ニューヨークの病院に収容されたネスビットは「怪獣を見た」と言いますが誰も信用してくれず、精神科医から「同僚を失ったショックによる精神錯乱だ」と言われる始末です。
しかしその後、海上で漁船が怪獣に襲われる事件が起き、漁船の生存者が怪物を見たとの新聞報道を見てネスビットは病院を抜け出し、古生物学者エルスン教授(セシル・ケラウェイ)を訪れます。教授ははじめ相手にしませんでしたが、女助手リー・ハンター(ポーラ・レイモンド)はネスビットがアイソトープ治療の研究者と知っていたので興味を持ちます。これは終盤の伏線にもなっています。
リー助手の協力のおかげで、怪獣に襲われた船員も見つけ出し、襲った怪獣はネスビットが見たのと同じであることが判り、エルスン教授もようやくネスビットの話を信じ、その怪獣は1億年前に絶滅した恐竜リドサウルスである事を突き止めます。
ある夜、恐竜はメイン州沿岸の燈台を襲います。燈台の霧笛につられて、仲間かと思って燈台に抱き着いたせいで燈台は崩壊します。シルエットで浮かび上がる映像が幻想的でファンタスティックでさえあります。
このエピソードが原作のレイ・ブラッドベリが書いた短編「霧笛」のお話しです。たったこれだけの短い話から本作を企画したプロデューサーは偉いですね。
これらの経路と、以前にハドソン川でリドサウルスの化石が見つかった事から、エルスン教授は恐竜が南下しており、ハドソン川に向かっているのではと推測します。
エルスン教授は自ら潜水球に入って海底に潜り、遂に恐竜を発見しますが、その直後恐竜に襲われ教授は亡くなります。
よく考えれば恐竜のリドサウルスは、水棲恐竜でもないのに長時間海底にいるのはおかしいですが(笑)。まあゴジラもラストでずっと海底に潜っていましたね。
そしていよいよ、恐竜はニューヨーク、マンハッタンに上陸します。ここからが本作のハイライト、群衆が逃げ惑う中、恐竜はビルを壊し街を破壊して行きます。
ニューヨークの街でロケを行ない、そこに恐竜の動きを合成していますが、多少ギクシャクしているものの、見事な迫力です。

警官隊が銃撃しますが、歯が立たず、軍隊が出動します。バズーカ砲で狙いますが、負傷した恐竜がまき散らした血には謎の病原体が含まれていて、兵士や市民がバタバタと倒れて行きます。これで恐竜に砲弾を撃ち込むのは危険だと言う事になり、軍隊は恐竜対策に頭を悩ませます。
(注:Wikipediaでは「謎の病原体」となっていますが、KINENOTEでは「強烈な放射能」となっています。普通に考えて「放射能」が正解でしょうが、何かの政治的配慮で変更されたのでしょうかね)
そこでネスビットが思いついた手段は、アイソトープ弾を恐竜の傷口に撃ち込むという戦略です。これだと恐竜の血を流さずに致命傷を与える事が出来ます。
夜になって恐竜はコニー・アイランドの遊園地にやって来ます。ここが最後の決戦の場となります。
軍隊の狙撃手、ストーン伍長(リー・ヴァン・クリーフ)が呼ばれ、アイソトープ弾を装填したグレネードランチャーを携えて恐竜と対峙し、恐竜の傷口にアイソトープ弾を撃ち込む事に成功します。恐竜はのた打ち回った後、遂に息絶えて、映画は終わります。
まさに典型的なB級映画です。有名俳優は出ていないし、製作費もかかっていません。ハリーハウゼンのインタビューによると、製作費はなんと20万ドルだとか。
しかしこの映画が優れているのは、“原水爆実験、並びに核兵器の開発が、人類にとって災厄をもたらす”というテーマを、おそらくSF映画としては初めて描いた作品である、という点です。
本作が契機となって「ゴジラ」が作られただけでなく、アメリカでも本作がヒントとなって、「放射能X」(1954)や「海獣ビヒモス」(1954)、「水爆と深海の怪物」(1955)、「原子怪獣と裸女」(1956)等の“放射能で巨大化、あるいは変異した怪物が暴れる映画”が次々作られる事となりました。なお「水爆と深海-」の特撮もハリーハウゼン担当です。
また怪獣ものだけでなく、「性本能と原爆戦」(1962)をはじめとする、“核戦争が起きれば、人類は滅亡する”というテーマの作品も以後多く作られています。すべて低予算B級映画です。
(ちなみに、ハリウッドのメジャー会社が作る、真面目な反核映画が登場するのは、1959年のスタンリー・クレイマー監督「渚にて」まで待たねばなりません)。
また終盤、恐竜にアイソトープ弾を撃ち込む伍長役で、後にマカロニウエスタン「夕陽のガンマン」シリーズで活躍するリー・ヴァン・クリーフが出演している点も見逃せません。
レイ・ハリーハウゼンの特殊効果は、本格デビュー第1作、また低予算という事もありカクカクとぎこちないですが、「キング・コング」(1933)よりはかなり動きがスムースになっています。
ストーリー展開も、後の日本製も含めた怪獣映画のパターンが網羅されている点でも、本作は画期的なB級SF映画の秀作だと言えるでしょう。
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