2008年2月15日 (金)

市川崑監督 死去

Photo_2  映画監督の市川崑氏が、13日、肺炎の為、92歳で亡くなられました。

実は、私の父も、昨年、同じ92歳で亡くなりました。しかも死因も肺炎で市川氏と同じ。

それだけに、訃報を聞いた時、他人とは思えない気がし、感慨に耽りました。

 

市川崑監督作品は、多数観ています。監督作品は約70本余り。よく比較される黒澤明監督は30本ですから、巨匠の割には、頼まれれば気軽に撮っていた感があります。有名な、金田一耕助シリーズは、角川春樹に依頼され、大ヒットした為に次々と手掛けました。

テレビ作品も多数あります。有名なのは「木枯し紋次郎」ですが、刑事ものもあったはずです。

CM演出も多数手掛けています。ライオン歯磨、サントリーなどが主ですが、私が大好きなのが、雨が降る京都の街中を、一匹の子犬が彷徨う、トリスウイスキーのCMです。
 ↓ これがそうです。
http://jp.youtube.com/watch?v=XDEzFPzUfUM&feature=related

youtubeは画質が良くないのでいまいちですが、フォトジェニックで、詩情に溢れていて、CMでありながら、芸術の域に達しているのではないかと思います。終り間際の、瓦屋根の路地を駆け抜ける子犬を俯瞰で捕えたショットは、そのまま引伸ばして額に入れて飾っておきたいほどです。

カメラは、名手宮川一夫さん。絵作りも宮川さんの映像感覚による所が大きいと思います。

映画に戻って、市川崑監督作品で是非お奨めしておきたいのが、次の作品群です。

「炎上」(58)
「おとうと」(60)
「黒い十人の女」(61)
「私は二歳」(62)
「東京オリンピック」(65)

「おとうと」「私は二歳」はいずれもキネマ旬報ベストワン。他にも、この時期には「鍵」「野火」「ぼんち」「破戒」など、秀作が目白押し。

つまり、市川崑のピークは、この昭和30年代だと言えるでしょう。以降もコンスタントに作品は作っていますが、このピーク時の作品は傑出しています。
観るたびにその斬新な映像感覚、歯切れいいカッティング、情感溢れる演出に唸りたくなります。

Itikawakon2 カメラマンは、「炎上」「おとうと」「鍵」「ぼんち」「破戒」が宮川一夫。「東京オリンピック」も宮川さんが参加しています。
…つまりは、前述のCMも含め、その映像の冴えは、宮川さんによる所が多大であると言えましょう。

無論、宮川さんが参加していない後期の作品でもフォトジェニックな映像は見られますが、元々持っていた映像感覚が、宮川さんによって更に研ぎ澄まされ、完成されたと見るべきでしょう。素敵なコラボレーションだったと思います。
(テレビ作品「木枯し紋次郎」の、市川監督が演出したタイトルバックもフォトジェニックな美しさに溢れています)

脚本に関しても、善き伴侶でもあった和田夏十さんの存在を抜きにしては語れません。また「東京オリンピック」や、サントリーCMにも参加している、詩人の谷川俊太郎さんの協力も忘れてはならないでしょう。

そういう意味では、素晴らしき人材に恵まれた、幸福な映画人生だったのではないかと思います。

 
遺作は、リメイク版「犬神家の一族」が長編としては最後ですが、オムニバスの「ユメ十夜」の1篇(第2話)が実質上の遺作でしょう。サイレント風の、まさに市川崑タッチ健在の佳作でした。

本当に、たくさんの素晴らしい作品を有難うございました。謹んでご冥福を祈りたいと思います。

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2007年12月31日 (月)

日本インターネット映画大賞外国映画部門 投票

外国映画部門も投票いたします。

[作品賞投票ルール(抄)]

 ・選出作品は5本以上10本まで
 ・持ち点合計は30点
 ・1作品に投票できる最大は10点まで
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『 外国映画用投票フォーマット 』

【作品賞】(5本以上10本まで)
  「善き人のためのソナタ」     7 点
  「パンズ・ラビリンス」        5 点
  「ボルベール<帰郷>」      4 点
  「バベル       」        4 点
  「ヘアスプレー   」        3 点
  「ドリームガールズ 」        2 点
  「ブラックブック   」        2 点
  「ボビー       」        1 点
  「あるいは裏切りという名の犬」  1 点
  「シッコ        」        1 点
【コメント】こうやって見ると、本年の上位4作品、すべてアメリカ以外(それも2~4位はスペイン・メキシコ系)の、ズッシリ腹にこたえる人間ドラマの秀作ばかり。下位4位も重たい問題作。で、真ん中に陽気なミュージカルが挟まる…という、なかなかバランスの取れたテンでありました。

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【監督賞】              作品名
   [フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク] (「善き人のためのソナタ」)
【コメント】2~4位のデル・トロ、アルモドバル、イニャリトウも、どなたも甲乙付け難い才人ばかり。迷ったけど、結局「善き人の-」のあのラストにやられた。それにしても、長い名前だ(笑)。

【主演男優賞】
   [ウルリッヒ・ミューエ] (「善き人のためのソナタ」)
【コメント】これはミューエで決まり。圧倒された。今年亡くなられたとのこと。冥福を祈りたい。

【主演女優賞】
   [カリス・ファン・ハウテン] (「ブラック・ブック」)
【コメント】「善き人-」のマルティナ・ゲデック、「ボルベール」のペネロペ・クルスも候補だったが、○ン○まみれで熱演した(笑)ハウテン嬢に1票。

【助演男優賞】
   [セルジ・ロペス  ](「パンズ・ラビリンス」)
【コメント】冷酷なビダル将軍を怪演。「善き人-」、「ブラック・ブック」のセバスチャン・コッホにもあげたかったけど…。

【助演女優賞】
   [カルメン・マウラ ] (「ボルベール<帰郷>」)
【コメント】彼女も無論いいけど、カンヌで女優賞を受賞した、ペネロペを除く全員にあげたいですね。

【新人賞】
   [イバナ・バケロ  ] (「パンズ・ラビリンス」)
【コメント】少女オフェリアの見事な演技に対して。…あれあれ、気が付いたら受賞者全員ヨーロッパ系になってしまった。

【音楽賞】
  「ヘアスプレー」
【コメント】正確には、歌曲賞…でしょうけど、とにかく楽しい歌の数々に魅了されました。

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【勝手に○×賞】
   [うまくダマされたで賞 ] (「ラッキーナンバー7」)
【コメント】どんでん返しのある映画は大好きなのですが、これは見事にやられました。なまじ「パーフェクト・ストレンジャー」のように大げさに宣伝してない分だけ、コッチの方が後味スッキリでした。

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日本インターネット映画大賞日本映画部門 投票

昨年に続き、「日本インターネット映画大賞」に投票いたします。

私自身のベスト作品選考も毎年、私のHPでやってまして、近日中にアップする予定ですが、とりあえずはこちらを先に投票することとします。

[作品賞投票ルール(抄)]

 ・選出作品は5本以上10本まで
 ・持ち点合計は30点
 ・1作品に投票できる最大は10点まで
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『 日本映画用投票フォーマット 』

【作品賞】(5本以上10本まで)
  「河童のクゥと夏休み」        7 点
  「それでもボクはやってない」     6 点
  「天然コケッコー」           4 点
  「ALWAYS 続・三丁目の夕日」  3 点
  「キサラギ」               2 点
  「夕凪の街 桜の国」         2 点
  「自虐の詩」               2 点
  「めがね」                2 点
  「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」  1 点
  「パッチギ LOVE & PEACE」     1 点
【コメント】上位3本は、どれが1位になっても構わないが、も一つ苦戦するだろう「河童の-」をエコヒイキで上位に。爽やかで心温まる作品が並んだので、下位2本を過激で笑える異色作でまとめてみました。

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【監督賞】              作品名
   [山下敦弘     ]  (「天然コケッコー」「松ケ根乱射事件」)
【コメント】「松ケ根-」だけでも選ぶつもりだったが、「天然-」で完璧にやられた。お見事です。

【主演男優賞】
   [阿部寛      ]  (「自虐の詩」「バブルへGO!!!」)
【コメント】「それボク」の加瀬亮も考えたが、阿部ちゃんのパンチパーマのインパクト大。「バブルへGO」のカルい演技にも笑えた。

【主演女優賞】
   [麻生久美子   ]  (「夕凪の街 桜の国」)
【コメント】短い出番だったけど、印象的な名演技だった。

【助演男優賞】
   [小日向 文世  ]  (「それでもボクはやってない」「ALWAYS 続・三丁目の夕日」)
【コメント】「キサラギ」「ジャンゴ」の香川照之も候補だったけど、昨年度、ここで受賞済なのであえてはずしました。

【助演女優賞】
   [もたいまさこ   ]  (「めがね」「ALWAYS 続・三丁目の夕日」)
【コメント】「めがね」のたそがれ感は彼女の存在あってこそ。不思議な女優さんですね。

【新人賞】
   [中村 ゆり    ]  (「パッチギ! LOVE&PEACE」)
【コメント】試写会場の告白は泣けました。沢尻、出なくて正解だよ(笑)。

【音楽賞】
  「夕凪の街 桜の国」
【コメント】静かで心に沁みる作品にふさわしい、いい音楽でした。担当したのは村松崇継。他にも「オリヲン座からの招待状」「魍魎の匣」を手掛けている。いい仕事をしました。

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【勝手に○×賞】
   [おバカ映画大賞] (「XX エクスクロス 魔境伝説」)
【コメント】ホラーに見せかけて、実はパロディ、オマージュ満載、大笑いおバカホラー・アクション・コメディでした。ゴスロリ娘の巨大ハサミVSチェーンソーの対決には涙流して笑いました。日本映画でこういう珍品が作られるとは嬉しい誤算。深作健太監督、アッパレです。

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2007年12月23日 (日)

またまた「椿三十郎」

12月4日、同5日に続いて、三たび「椿三十郎」について書かせていただきます(しつこいって?まあそう言わずに(笑)。いろいろ発見がありましたので)。

まず、黒澤版のオリジナル「椿三十郎」をビデオで再見(以前録画しておいたもの)。

Sanjurou1_2

で、じっくり見て気が付いた事。
(1) 三船扮する三十郎の着物が、おっそろしく汚い。袖口や首筋はほつれてボロボロ。襟元に至っては擦り切れてるうえに、鼻水でもこすり付けてるのだろう、テカテカに光っている(笑)(写真1参照)。

そりゃ確かに、一文無しで旅してると、あのくらいになるだろう。「ここんとこ水腹でな…」と言ってるし。
お話は荒唐無稽であっても、細部はとことんリアルに作り込む―のが黒澤流の映画作りなのである。

Sanjurou2_2ハカマも糸が撚れてるし、さらにはラストの決闘後に、カメラが足元を写すと、足袋も穴だらけで白地が見えている(写真2参照)。

もうほとんど橋下のルンペンと同じ(笑)。臭って来そうである。

「七人の侍」でも、着物も建物も、徹底的にリアルに汚していたし、スタッフもよく分かっていて、「赤ひげ」では画面に写らない薬棚の引出しの中も汚したうえに薬包みも入れていたという。
そういう、厳しい完璧主義だからこそ、画面の隅々まで一分の隙もなく神経がピンと張り詰められ、何度見直しても見応えがあるのである。

Sanjuurou_2 そこで、森田監督の新作を観ると、織田裕二扮する三十郎の着物は小ざっぱりとして綺麗である。不精ヒゲだって申し訳程度である。
別に黒澤作品くらいまで汚せ…とは言わないが、食うや食わずで旅している浪人の着物にしてはきれい過ぎると思わないか。

織田裕二は2枚目ヒーローなのだから、汚すわけには行かない…と言うのなら何をか言わんや…である。それならオリジナルのシナリオをそのまま使う意味さえない事になる。天国の黒澤が見たら激怒するだろう。

(2) 中盤の若侍たち4人が捕えられ、それを逃がす為に、17人を一気に斬りまくる例のシーン。

ここは、1人たりとも生かしてはまずい上、外に逃げられても計画が水の泡になるわけだから、その点もよく考えてある。

まず、門番に閂(かんぬき)を閉めさせ、中庭に全員を集めさせたうえ、一気に斬りかかる。とにかく無茶苦茶早い。
十人くらいまでを一気に斬り捨て、唖然と見ていた門番が、やっと我に帰って閂を開け、逃げようとした所を、後ろから躊躇なく斬りつける
その悪鬼のような仕業に、残りの侍たちは恐怖にかられ、逃げ惑う。窓から逃げようとする者、門の陰に逃げ込む者、それらも容赦なく切り倒す…。
時間を計ったら、全員倒すまで、わずか40秒! 1人2秒強である。

これは、1人残らず逃がさずに全員を倒すには、まさにこれ以外に手はない…と計算した上での戦略なのである。実にムダがなく合理的である。

それに引き換え、森田版はと言えば、モタモタしてる。リアリズムだとかで、三十郎が疲れ、ヨタヨタして来る描写があるが、あれだと、門番はラクラク逃げられそうである(笑)。
…て言うか、外へ逃げようとする描写さえなかった気がする。あれだけ三十郎に誰も敵わなかったら、何人かは逃げて知らせに行こう…とする描写があってこそリアリティがあると言える。何がリアリズムなんだか。だから私は中途半端と指摘したのである。

黒澤監督のオリジナル版を観る機会があったら、私が指摘した前記のような箇所も、是非注目していただきたい。

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いろいろな評判が出揃って来たようだが、やはりというか、プロ、あるいは目利きの方々からは厳しい意見が出ているようである。

黒澤監督の研究家である評論家の西村雄一郎氏(近著「黒澤明-封印された十年」)のHP(12月8日付)で、森田版を観ての感想を書いている(こちらを参照)。抜粋すると、
「三船敏郎演じる〝三十郎〟を知っている身には、織田裕二では役不足。どんな時でも冷静に頭が働く知将にはとても見えない」
「首魁の西岡徳馬はもっと腹黒でなくては。家老の藤田まことはもっと阿保面でなくては…」

などと、私とほとんど同意見である。日付を見れば分かるが、私の方が4日早い(笑)。

12月22日付の朝日新聞娯楽欄「サザエさんをさがして」は、「三船敏郎」がテーマであるが、執筆の保科龍朗氏に、 
「リメーク版をサザエに見せるわけにはいかない。腰砕けになって、台所でおサカナくわえたドラネコと出くわしても、呆然と見逃してしまうはずである」と皮肉られている。
三十郎に扮した三船については「殺気を察知するとためらわずに人を切れるのだから、狂気を宿して血に飢えた孤高の獣を身中に飼いならしている危うさがある」と指摘しておられる。奥方が三十郎を「ギラギラしている」と表現したのは、そういう意味に近い。
まあ織田裕二にそれを求める気はさらさらないが、リアルタイムで黒澤版を観た人の感想は、それが平均的であった事を付け加えておく。

今月発売の雑誌「月刊・シナリオ」1月号に、「柏原寛司の映画館へ行こう―創り手たちの映画評」というコーナーがあり、ゲストの成田裕介氏(お二人とも「あぶない刑事」等の脚本・監督を担当)との対談で、「黒澤映画のリメイク作品『椿三十郎』の観方」と題し、新作についての感想を述べているが、ここでも森田版について辛辣な言葉が飛び出している。ほぼ私も同意である。興味ある方は一読のこと。

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さて、私も森田監督は永年のファンだし、あまり責めたくはないのだが、最後にこれだけは言っておきたい。

オリジナル版を知らなければ、確かに森田版も面白いと思う。役者もみんな頑張っていると思う。
だが、なにかが微妙に違うのである。
今の時代、黒澤明のような監督も、三船敏郎のような役者も、もう2度と現れないだろう。それは仕方のない事である。ないものねだりしても詮無い事である。
だが、やはり何かが足りない…。

それで思い至ったのだが、最近問題となっている、老舗菓子舗、高級料亭の偽装問題
実はあれと、根の所は同じではないかと思うのである。

高級料亭の創業者は、味にこだわり、食材、ダシから、食器に至るまで、すべて一流、本物を志向し、味にうるさい食通をも満足させて来た。見えない所にも細心の気配りをして来た。

先代が亡くなり、時代が変わり、それと共に本当の味が分かる人間も減って来た。
多少、材料の質を落としても、誰も分からなくなった。作る方も、手間のかかる方法を面倒くさがり、だんだん手抜きするようになって来た。

その結果が現在の姿である。

だが、味は落ちてるのに、ブランドだけを信用して、不味いものでも味が分からず、ありがたがる客の方にも問題があるのではないか。

これを、映画界に置き換えても同じ事が言える。

黒澤監督は、言わば食材も、食器も本物にこだわった頑固職人である。タレも、コトコト何日も煮て、おいしさを究極まで求め続けた。

森田版の作品は、“もう昔のような比内地鶏(=役者)が手に入らないので、ブロイラーを使いました。ただレシピ(=脚本)だけは昔のものをそのまま使いました”と言ってるようなものである。まあ偽装してるわけではないが(笑)。
しかし問題は、レシピだけ同じものを使っても、昔のような、本物のおいしさには及ばないと言う事である。じっくり、時間をかけて煮込んでもいないし、比内地鶏だからこそ生きたレシピであって、今のブロイラーには合わない。おいしくする為には、今の材料に合った調理をこそ研究しないといけないのである。

それでも、昔の味を知らない若い人は、「これ、おいしい」と喜んでいる。
しかし、昔の味を知っている食通は、「見た目は昔とそっくりに見えるが、煮込みが足りない。食材もいいものを使ってない。先代よりは大分味が落ちている」と文句を言っている。

・・・まあそういった所だろう。
後者の言い分が全面的に正しい…とは言わない。ただ傾聴に値する…と思っていただければいいだろう。

幸い、もう昔のものは存在しない料理と違って、映画は45年前に作られたものがそのまま残っている。昔の職人はこんないいものを作っていた…という事を是非知って、認識を新たにしてもらいたいものである。

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2007年10月 7日 (日)

出張先で見つけたミニシアター・その2

先日紹介しましたミニシアター、津大門シネマにまた行って来ました(10月6日)。

Daimoncinema1 作品は、新藤兼人原作・脚本・出演「陸に上がった軍艦」(監督:山本保博)。戦争の狂気をブラックな笑いで描いた、いかにも新藤兼人さんらしい佳作でした。

観終わったら、やっぱり前回と同じく、支配人の方が出口で丁寧に頭を下げておられました。

それで、思い切って支配人に声をかけ、いろいろお話を聞くことが出来ました。以下はその報告です。

Daimoncinema4 支配人は、谷口さんという年配の方です。とても気さくで、物腰の柔らかい、そして映画に深い愛着を抱いている方でした。

この大門シネマは、まだオープンしてから3年足らず。

それ以前は東宝系の封切館だったそうです。
ご多分に漏れず、シネコンが出来て観客が減り、閉館していたのを、谷口さんが後を引き継ぎ、アート系のミニシアターとして再発足したのだそうです。

番組を見れば分かる通り、(→ http://tsudaimoncinema.fan.mepage.jp/schedule/flameschedule.htm
かなりシブい、しかし映画ファンなら必見のミニシアター系の秀作が並んでいます。観客動員はあまり望めないようなラインナップです。

失礼ながら、経営的には大変なのでは…と聞くと、会員制を採用しており、既に会員は200名ほどになるとか(会員になると大人1,100円で観れます)。

そんなわけで、「シッコ」のような話題作になると結構な入りになるそうで、なんとか赤字にならずに行けているそうです。

そう言えば、前回観た「夕凪の街 桜の国」は私が観た回はまずまずの入りでした。

作品によっては、厳しい数字になる事もあるでしょう。

しかし、谷口支配人の温かい人柄と熱意は、きっと来られた観客に伝わるものと思います。1人でも多くの映画ファンが、このラインナップに目を留め、遠くからでも劇場に足を運んでくれる事を期待したいものです。及ばずながら応援したいと思います。

谷口支配人さま。お忙しい中、丁寧にお答えいただき、ありがとうございました。津大門シネマが益々発展されることを祈りつつ…。

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2007年9月17日 (月)

出張先で見つけた良心的ミニシアター

今年の1月から続いた単身赴任も、この9月で終りです。

前にも書きましたが、レンタルビデオ屋は全然ないし、映画館も家から遥か遠い所にシネコンしかないしと、映画ファンにとっては住みにくい所でした(いざ去るとなると、ちょっと名残惜しい…)。

しかし偶然、家から10分くらいの所に小さな映画館があるのを知りました。

しかも、大阪で見逃していた、佐々部清監督「夕凪の街 桜の国」が掛かっております。

これは都合がいい、とイソイソと観に行きました。(作品評については別項で)

Daimoncinema1 名前は、「津大門(だいもん)シネマ」
定員140人の、こじんまりとした小劇場です。

場所は、表通りから少し入った、少々目立たない所にありました。

番組を見て驚きました。
先週までが「しゃべれども、しゃべれども」と「あるスキャンダルの覚え書き」(入れ替え制)。
今週が「夕凪の街―」と「プロバンスの贈り物」。

Daimoncinema2_2 以降の予定が、新藤兼人脚本「陸に上がった軍艦」、「それでも生きる子供たちへ」、「シッコ」、「22才の別れ」、「サッド・ヴァケイション」・・・・ と、大阪で言うなら、テアトル梅田シネ・ヌーヴォ九条あたりの名物ミニシアターと同レベルの、格調高い作品が並んでいます。
入場料金も当日 1,600円と、割安です(なんせ、ミニシアター系作品は前売り料金でも 1,500円が普通ですから)。

多分、映画人口が少ないであろう、この街で、こういう地味な秀作を上映し続けて行くという事は、苦労も多い事だと思います。採算が取れているのか、人ごとながら気になります。

それでも上映が始まって後ろを見ると、観客は30人はおりました。ちょっと安心しました。

上映が終り、出口に向かうと、ドアの近くで支配人らしき年配の方(70才くらいに見えました)が、出て行く観客一人一人に「ありがとうございました」と頭を下げていました。

これにも感動しました。こういう光景、あまり見たことはないからです。

声を掛けたかったのですが、次に観に行きたいシネコンの上映時間が迫っていたので、そのまま出てしまいました。月末までには、もう1回は行くと思いますので、出来れば一度お話も聞きたいと思っています。

こういう映画館は、映画愛好家として応援してあげたくなります。頑張って欲しいですね。
(しかし、もっと早く見つけていれば、もっと色々なミニシアター系の秀作を鑑賞出来たかも知れないと思うとちょっと残念です)

映画館の公式HPも貼り付けておきます。  ↓

http://tsudaimoncinema.fan.mepage.jp/

津かその近辺にに住んでいて、映画ファンの方は、是非行ってあげてくださいね。

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2006年10月28日 (土)

日本ハムファイターズの優勝に思う

Nichihamu プロ野球日本シリーズで、北海道日本ハムファイターズが日本一となり、新庄が宙に舞った。喜ばしいことである。

私は特に日本ハム・ファンではないが、プロ野球を見るのは好きだ。
今年は日ハムは44年、中日も52年間日本一から遠ざかっており、どちらも勝たせたいが、強いて言うなら、今年は日本ハムに日本一になって貰いたい…と思っていた

結果は、狙い通りになってとても嬉しい。新庄の涙にはこちらももらい泣きしてしまった。

なぜ日本ハムなのか…それは、私が好きなタイプの映画と同じように、そこに感動のドラマがあったからである。

パ・リーグは、セ・リーグに比べて長い間、観客動員が低迷し、球場には閑古鳥が鳴いていた(あまりの観客の少なさは、テレビでギャグにされてるくらいだ。スタンドで将棋してたり焼肉焼いてたりとか(笑))。球団の身売り話やら、合併話は日常茶飯事、近鉄とオリックスの合併はつい最近だが、日ハム自身も前身の日拓ホーム時代、ロッテと合併直前まで行ったそうだ。

球団の身売りもパ・リーグが圧倒的に多い。この半世紀を見れば、セ・リーグで名前が変わっていないのは、巨人、阪神、中日、広島と4球団あるが、パ・リーグではなんと全球団が入れ替っている。それも、3回、4回と所有親会社が変わった例がある(参考までに、50年前のパ・リーグ球団名は、南海、西鉄、近鉄、東映、阪急、大毎。どれが今はどこか分かりますか?(笑))。

日本ハムの場合は、44年前はオーナー会社が映画会社東映だった…というのも因縁深い。思えば、日本映画全盛時は、映画会社がオーナー…という球団がいくつもあった。大毎オリオンズ大映の永田社長がオーナー、それ以前は、今の横浜ベイスターズが“松竹ロビンス”と言っていた。阪急ブレーブス(今のオリックス)も親会社は東宝系列だった(オーナーは東宝の小林一三)。

映画界の衰退と共に、映画会社はすべて野球界から撤退(偶然でしょうが、早々と撤退した松竹を除いて、みんなパ・リーグなんですね)。

ある意味、低迷を続けてきたパ・リーグの存在(観客が入らない、スターがいない、人気が出ない、お荷物とバカにされる)は、日本映画の低迷とも共通していると言えるだろう。
反対に金満球団・巨人を中心に観客を動員して来たセ・リーグは、アメリカ映画のようなものだろう。金にあかせて大砲を集める巨人は、巨額の製作費と、世界中から集まる才能やスターの魅力で観客を集めてきたアメリカ映画の姿とかぶる。

1昨年には、パ2球団消滅、1リーグ構想まで浮上した。

そんなどん底の状態から、パ・リーグは奇跡的に復活して来た。閑古鳥の代名詞だったロッテが、昨年日本一、今江などのスターも生まれ、観客動員も上昇した。

そして今年、北海道に定着した日本ハムは、新庄というスターを得たこともプラスして、観客動員でもセ・リーグ球団に匹敵するくらいの数字をあげ、遂に44年ぶりの日本一となった。
反対に、常勝を誇っていた巨人は、4年も優勝に見放されたばかりか、観客動員、テレビ視聴率とも低迷し、放映を打ち切られる体たらくである。

これはちょうど、日本映画とアメリカ映画の流れとも似ている。
一時は洋画:邦画の興行収入比率が7:3まで行った時期もあったが、アメリカ映画が、物量作戦が飽きられたのか低迷し始め、逆に日本映画が勢いを盛り返し、興行収入が100億円を超える大ヒット作も生まれて、最近では興行収入比率が5:5になったと聞く。

 

こうした流れは、私が大好きな正統娯楽映画のストーリーとも見事にそっくりである。

例えば、最近の「フラガール」しかり、「シコ、ふんじゃった。」「メジャー・リーグ」しかり。

最初は低迷し、バカにされ、どん底に落ち…、しかし不屈の努力で次第に力をつけ、応援者もどんどん増え、そして選手と観客の心が一つになり最後に栄光を手にする…。

まさに、夢のようなドラマである。42,000人という、最近の巨人の試合より多い観客を札幌ドームに集めるなど、数年前に誰が予測しただろうか。

その夢が現実になった。中日ドラゴンズには、残念ながらそこまでのドラマはない。だから日本ハムには是非日本一になって貰いたかった…私がそう思った理由がお判りいただけるだろう。

人生には、どん底になる時もあれば、スランプで何をやってもうまく行かない時もある。

でも、どんな時でも、夢と希望を失わず、努力を続けてさえいれば、きっといつかはその夢がかなえられる時が来る。…そんなドラマを映画にも、野球にも私は求めたい。そんな夢が実現するドラマを見れば、きっと勇気付けられ、元気を取り戻す人だっているかも知れないからである。

私には、映画「フラガール」の物語が、日本ハムの成功ドラマに重なって見えるのである。

強いチームが当たり前のように勝つ…そんな野球のどこが面白いのだろう。
弱く、低迷していたチームが、苦難の末に強いチームを倒す。…そっちの方が何倍も面白いに決まっている。そういうチームを私は応援したい(3年前の阪神タイガースがまさにその通りだった。あの時は泣けた。日本一になれなかったのは残念だが…。その点では、まだ夢は果たしていない)。

さて、来年はどこのチームが、そんな夢を見させてくれるだろうか。楽しみである。

 

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2006年10月22日 (日)

1~3月鑑賞作品の追加

ちょっとお知らせを・・・。

このブログは、本年4月からスタートしましたが、映画評自体は私のHPでずっと書いてきております。

そろそろ本年度のベスト作品などを選考する時期が近づいており、その為にも、本年度に私が観た作品を一まとめにしておきたいと思います。

そこで、本年度に私がHPの方で書いた批評のうち、本ブログ未掲載分をこちらに移設する事にしました。

移設した作品名は以下の通り。

「フライトプラン」
「THE 有頂天ホテル」
「博士の愛した数式」
「単騎、千里を走る。」
「スタンドアップ」
「ミュンヘン」
「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」
「サウンド・オブ・サンダー」

右欄の「バックナンバー」 2006年1月~2006年3月のリンクバナーをクリックしていただければ読むことが出来ます。

既に私のHPにお越しになって、読まれてる方もおられるとは思いますが、こうしておけば、1年分の私の批評ををまとめて読むことが出来、年間の総括ができると思います。

いずれ、年間掲載作品、及びアイウエオ順のインデックスも作るつもりです。もうしばらくお待ちください。

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2006年8月 9日 (水)

これは宮崎アニメ・フラッシュ?「ゲド戦記」

前回お約束しました、「ゲド戦記」に見る宮崎駿作品からの引用(あるいは両者の関連性)について・・・・

(1)まず、旅に出たアレンが荒野でオオカミに襲われるシーン。
 ここで宮崎ファンなら、宮崎駿が場面設計を担当した「太陽の王子・ホルスの大冒険」(高畑勲監督)を連想するでしょう。なかなか抜けない剣を持っている所も似ている。そう言えば、農耕に精を出すシーンもありましたねぇ。

(2)故郷を捨てて、ヤックルに似た馬に乗って旅をする辺りは「もののけ姫」ですね。もっとも、「もののけ姫」自体が本作と同じく、宮崎駿が20年ほど前に描いた絵本「シュナの旅」を原案としてるわけだから似てるのは当然か。ジコ坊のようなキャラクターも出てるし…。夢の中で、真っ黒なドロドロとした液体に飲み込まれるシーンも「もののけ姫」のタタリ神に取りつかれるシーンを連想させます。
ラストでアレンがテルーに、「また会いに来るよ」と言って別れるシーンもそっくりですね。
ついでに、クモの目の下の縦長のペイント(?)は、サンのメイク(千尋のカオナシだという説もあり)に似てますね。

(3)何より感じたのは、「風の谷のナウシカ」が「ゲド戦記」からかなりインスパイアされてNau014 いる事。ユパは明らかにゲドがモデルだし…。村人がいなくなった村の家を覗いて、「この村もだめか…」とつぶやく所は「ナウシカ」の冒頭とそっくりです。
ついでに、クモと配下のウサギは「ナウシカ」のクシャナとクロトワですね。

(4)柵に縛られたテルーが、もの凄いパワーで杭を引っこ抜き、縄を解くシーンは、「未来少年コナン」ラナがコナンを助ける為、縄を歯で食いちぎるシーを彷彿とさせます。宮崎アニメの少女ヒロインはパワフルなのです(笑)。

(5)ラストの、お城の塔屋での追っかけとアクションは、宮崎アニメでは定番と言っていいでしょう。「ルパン三世・カリオストロの城」、そして宮崎駿が原画とアクション・シーンを担当した「長靴をはいた猫」を見れば一目瞭然です。悪魔を追っかけ狭い階段を駆け上り、そして朝日が射してくる時悪魔は滅びます。まったく「長靴-」そのまんまです(笑)。ついでながら「長靴-」における「朝日よのぼれ」というセリフは、宮崎駿自身が「もののけ姫」でセルフパロディにしてました(笑)。
城がガラガラと崩れ、主人公が落っこちそうになってぶら下がる…というパターンも「カリオストロ-」から「天空の城ラピュタ」に至る宮崎アニメではお馴染みシーンですね。

(6)「ゲド戦記」の原作でも主要テーマであり、本作でも出てきた、真(まこと)の名前に関するくだりは、「千と千尋の神隠し」でも重要なテーマとなっていましたが、あれは「ゲド戦記」からのいただきだったわけですね。
ラストで、○に変身した×××に乗って空を飛ぶシーンもそのまんま「千と千尋-」のラストと同じです。うーん、ここまでやりますか(笑)。
 

・・・といった具合に、宮崎吾朗監督は意識的なのか、無意識なのか、親父さんの作品の名シーンを片っぱしから本作に取り込んでおります。逆に言えばそちらに神経を注ぎすぎて、本編が支離滅裂になっちまったのか、それともジブリ・アニメファンを喜ばそうとするサービス精神が行き過ぎた結果…

なあーんて事はないでしょうねぇ(笑)。

 

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2006年4月26日 (水)

ミュージカル映画の楽しみ方

評判の「プロデューサーズ」を観た。古き良き時代の楽しいミュージカルが見事に再現されていて、満腹気分を味わった。最近のミュージカルでは、私個人としては(宣伝文句そのままになってしまうが)「シカゴ」よりも、「オペラ座の怪人」よりも楽しめた。

ところで、最近、ミュージカルについて、「街中で突然登場人物が歌い、踊り出すのは、非現実的で違和感がある」なんて言う人がいると聞いて、正直唖然とした。ミュージカルがなんたるものか、全然分かっていない。もっと言えば、映画はまずエンターティンメントである―という事すら分かっていない。

映画を見る…という事は、現実を離れて、楽しい気分を味わいたい―と思って映画館に入るのではないのか。
だったら、登場人物がいい気分になった時―ハッピーな気分になった時、歌い、踊り出すのもお約束として了解し、観客も一緒になって楽しんだらいいではないか。楽しい時には歌わにゃそんそん、踊らにゃソンソンなのである。現実世界では、街の中で踊りだしたら確かにヘンな目で見られる。非現実の映画の中では、何でもあり、空を飛んだり、カンフー技で強い奴をバッタバッタ倒したり、サッカーボールが火の玉となって人間をなぎ倒したり・・・すべて現実にはあり得ない。それらがスクリーンの中では実現するから楽しいのである。人々が街中で踊り出すのに違和感を感じるようでは、徳島の阿波踊りやリオのサンバ・カーニバルなんか見ても、きっと違和感があって楽しめないんだろうな。気の毒に…。

ミュージカルは、もともとブロードウェイなどの舞台が発祥である。ショービジネスという言葉があるように、それらは演劇―芝居と言うよりも、ショーである。歌と踊りがメインで、芝居はむしろおマケであった。
分かり易く言えば、新歌舞伎座などで上演される、舟木一夫や川中美幸や北島三郎らの座長公演を想像すればいい。観客の目当ては歌手の歌や踊りであって、芝居なんかどっちかと言えばおマケなのである。舟木一夫が舞台で、歌をまったく歌わずシリアスな芝居をしたって観客は楽しくない。「歌をやらんかい!」と怒られるのがオチである。

かつて一世を風靡した、MGMミュージカルもそんなものだった。お話は実に他愛ない。むしろ、絢爛豪華な舞台装置とスターたちのアクロバットまがいの流麗な踊り、そして歌を楽しむ為に観客は映画館に詰めかけた。・・・・もっとも、現代ではあの頃のフレッド・アステアやジーン・ケリーやシド・チャリシーのような、エレガントでダイナミックな踊りで我々をウットリさせてくれるエンターティナーもいなくなってしまったが…。

Photo その後、「ウエストサイド物語」「サウンド・オブ・ミュージック」などが登場して、ミュージカルもストーリー重視、社会派的視点を持った作品が主流を占めるようになり、陽気なMGMミュージカルは衰退して行く。そして、(ブロードウェイでは盛んだったが)映画としてのミュージカルは次第に作られなくなって来たのである。

ここに来て、「シカゴ」、「オペラ座の怪人」、そして「プロデューザーズ」と、ブロードウェイ・ミュージカルが次々映画化されるようになって来た。ミュージカル・ファンとしてはまことに喜ばしいことである。

これを機会に、ミュージカルになじみのない人、ミュージカルをいま一つ楽しめない人は、古きよき時代のミュージカル映画を一度ご覧になってみてはいかがだろうか。
手始めに、まずMGMミュージカルのアンソロジー「ザッツ・エンタティンメント」シリーズを観る事をお奨めする。入門編としては一番手頃である。

Singinintherain3_2 その後、ジーン・ケリーの「雨に唄えば」、フレッド・アステアの「バンド・ワゴン」、戦前のアステア、ジンジャー・ロジャース・コンビの「トップ・ハット」 「踊らん哉」あたりまで観れば、“ミュージカルって、こんなに楽しいものだったのか”という事がきっと分かって来るだろう。
――実を言えば、「プロデューサーズ」には、これら傑作ミュージカルへのオマージュが沢山登場する。これらの作品を先に観ておれば、「プロデューサーズ」の楽しさはさらに倍加するのである。映画をもっと楽しむには、古い名作を数多く観ればいい。沢山観ていれば観ているほど益々面白く、楽しくなるのである。

「プロデューサーズ」について書くつもりだったが、前置きが長くなり過ぎたのでこの辺にしておきます。「プロデューサーズ」論はまた明日のお楽しみという事で…。

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2006年4月23日 (日)

アリダ・ヴァリ

Alida_valli2

イタリアの女優、アリダ・ヴァリが22日、亡くなったとのニュースが飛び込んで来た。享年84歳。

アリダ・ヴァリと言えば、名作「第三の男」のラストシーンで、並木道をこちらに向かって進んで来る、映画史に残る名シーンが忘れ難い。

「第三の男」は、私にとって、生涯のベスト3に入るくらいの大好きな作品である。年に1度はビデオで繰り返し観ている。何度観ても飽きない。従ってアリダ・ヴァリも好きな女優のうちの1人に入っている。

しかしながら、正直言って、もうとっくに亡くなっていたとばかり思っていた。なんせあの映画は今から57年!も前の作品なのだから。もはやクラシックと言っていい。最近では著作権消滅とかで500円のDVDが発売されているくらいだし。

Thirdman2

また久しぶりに「第三の男」が観たくなった。ヴァリを偲んで鑑賞するとしよう。

「第三の男」があまりにも強烈だった為、その他のヴァリの出演作品がいま一つピンと思い浮かばない。
で、この機会に調べてみた。

もともとはイタリア生まれ。15歳で俳優デビューを果たしているが、有名になったのは戦後、大プロデューサー、デヴィッド・O・セルズニックに招かれ、セルズニック・プロでA・ヒッチコック監督作品「パラダイン夫人の恋」(47)に出演してから。ヴァリはこの作品で、殺人事件の被告として法廷に立つパラダイン夫人を演じている。美しいが、どことなく影のある(まあ殺人事件の容疑者ですからね)、ミステリアスな雰囲気が漂っていた。その2年後、「第三の男」で世界的に有名になるわけである。

その後、数本の作品に出演しているが、あまりパッとしたものはない。が、54年、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「夏の嵐」でまた高い評価を得る。これは観ていない。

Longabsence 私が観た作品では、60年のアンリ・コルピ監督「かくも長き不在」が秀作。戦争に行ったまま帰って来ない夫を待ち続ける女という役。ある日、彼女は夫とそっくりな浮浪者と出会う。しかしその男は記憶を失っていた。ヴァリは男の記憶を蘇えらせるべく必死の努力をするが…。戦争がもたらした心の傷の深さを描いた力作です。ヴァリが浮浪者とダンスするシーン、そして男の頭に回した手が、後頭部に刻まれた傷痕を見つけるシーンが忘れ難い印象を残します。

しかし、この作品以降、正直言ってロクな作品に出演していません。いや、一応名のある作品にも出演はしてるのですが、ほんのチョイ役だったりでほとんど印象に残ってません。

その嚆矢は、「かくも長き不在」の前年、カルト・ホラーとして名高い「顔のない眼」(59)に出演してからでしょう。顔がつぶれた娘の為に、若い女性の顔を剥いで移植する狂気の医者の話で、ヴァリはその博士の助手に扮してます。かなりグロテスクな珍品?です。

この作品からのイメージでしょうか、以後、イタリアンB級、C級ホラー作品への出演が相次ぎます。
題名だけ挙げておきます。
「レディ・イポリタの恋人/夢魔」(74)、「新エクソシスト/死肉のダンス」(75)、「サスペリア」(77)、「レイプ・ショック」(79)、「インフェルノ」(80)、「サスペリア2000」(97)・・・。
あの名優がよりによってなんでこんな映画に…と悲しくなりました。

遺作は「セマナ-血の7日間-」(2002)。 -後年の作品は、劇場公開すらされておらず、ビデオのみ発売です。

栄光と、悲惨とを共に味わった、数奇な人生を歩んだ女優と言えましょう。しかし、「第三の男」のラストシーンだけは、映画ファンの心にいつまでも残り続けるわけですから、ある意味幸せな人生だったのかも知れませんね。冥福を祈ります。

--合掌--

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2006年4月16日 (日)

ブログスタート

こんにちは

映画が大好きで、これまでも個人のホームページでいろいろ好きな事を書いてきました。

(よろしければ覗いてやってください → http://www.geocities.jp/cine_graffiti/

しかし、ブログだと、もっと簡単に(HPは結構更新が手間です)思いついた事を発信できるので、 これからは新作情報も含めて、こちらを充実させて行きたいと思っています。

よろしくお願いいたします。

さて、ブログのタイトルですが、映画ファンなら先刻ご存知の、和田誠さんのコラム(映画の名セリフ)のタイトルのもじりです(実は私のHPにもパロディ版の「お楽しみはこれっきりだ」というのがあります(笑)。和田さんごめんなさい)。

基本としては、映画を単に観るだけでなく、“いろんな角度から見れば、さらに楽しめる”というスタンスで書いて行きたいと思っています。

例えば、掲示板なんかでよく「つまらない」 「どこが面白いのか分からない」 という声を聞きますが、
ちょっと見方を変えれば、面白いところもあったり、意外な発見もあったりと、また違う楽しみ方ができる場合もあります。

せっかく高い入場料を払ってるのですから、楽しまなければ損ですものね。

その他、思いついたこと、身辺雑記的なことも書いて行こうと思っています。

今日はご挨拶だけ。明日からテーマに沿った書き込みを開始いたしますのでお楽しみに。

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