2017年1月22日 (日)

「まわり舞台の上で 荒木一郎」

Onarevolvingstage
 出版社: 文遊社   2016年10月

  \3,200円(税抜)

 

久しぶりに本の紹介です。

 
歌手、俳優、作詞・作曲家、小説家、プロデューサーと、マルチな活躍をして来た異才・荒木一郎に対して、各分野ごとにロング・インタビューを行い、その人生と軌跡を余す所なく追い求めた労作です。

500ページもあるぶ厚い本ですが、読み応えがあります。一気に読んでしまいました。

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2016年2月28日 (日)

小説 「孤狼の血」

Korounochi 柚月裕子・著

 KADOKAWA/角川書店・刊 2015年8月

 \1,836

本の紹介です。

宝島社の「このミステリーがすごい!」で2015年度の国内編3位に入った、ヤクザと警察との攻防を描いたハードボイルド刑事ものの秀作です。

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2015年5月13日 (水)

小説「フィルムノワール/黒色影片」

Filmnoir 矢作俊彦・著

 新潮社・刊 2014年11月

 \2,484

本の紹介です。

ハードボイルド作家、矢作俊彦さんの、二村永爾シリーズ(注1)の4作目ですが、これがなんと、日活アクション映画への熱烈なオマージュが詰まった、映画ファンにはこたえられない楽しい小説です。
特に、渡哲也主演「紅の流れ星」(1967)ファンなら、絶対見逃せない内容となっております。

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2014年1月28日 (火)

映画本「東映ゲリラ戦記」

Toueigerirasenki 
鈴木則文・著

(筑摩書房・刊 \1,995)

 
本書は、東映で数多くのプログラム・ピクチャーの快作・異色作を作って来た鈴木則文監督の、いわゆる東映ポルノ路線を中心とした回想記である。

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2013年5月 8日 (水)

「ゴジラのトランク」

Godzzilanotrunk

本多 きみ・著 (取材・構成・文:西田 みゆき) 

宝島社・刊

正式タイトル:ゴジラのトランク~夫・本多猪四郎の愛情、黒澤明の友情

 

本の紹介です。

あの世界に誇る傑作「ゴジラ」、そして「ラドン」「モスラ」「地球防衛軍」「海底軍艦」、さらに「美女と液体人間」「ガス人間第1号」の変形人間シリーズ…と、東宝特撮映画の傑作群を作り続けて来た巨匠・本多猪四郎監督の人生を、生涯の伴侶である妻・本多きみさんが綴った、心温まる素敵なドキュメントです。

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2012年5月22日 (火)

「私の映画史―石上三登志映画論集成 」

Watashinoeigashi 久しぶりに、映画の本の紹介を。

(論創社・刊 ¥3,990)

 

 

 

石上三登志氏は、私が最も敬愛する映画評論家である。

氏の評論は、とにかく目のつけ所が実にユニークである。読んで、何度目からウロコが剥がれた事か。
そして、まだ誰も注目していない映画作家、あるいはジャンルにいち早く目をつけ、実に的確にその魅力を紹介してくれる。

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2009年12月19日 (土)

キネ旬発表「オールタイム・ベスト200」について思うこと

Best200_2  キネマ旬報が、創刊90周年を記念して、「日本映画・外国映画オールタイム・ベスト200」を発表しました。

詳細は下記参照。
http://www.kinejun.jp/special/90alltimebest/index.html

 
ベストテンは以下の通り。

<日本映画>

(1)東京物語
(2)七人の侍
(3)浮雲
(4)幕末太陽傳
(5)仁義なき戦い
(6)二十四の瞳
(7)羅生門、丹下左膳餘話・百萬兩の壺、太陽を盗んだ男、家族ゲーム
(10)野良犬、台風クラブ
 
 
<外国映画>

(1)ゴッドファーザー
(2)タクシー・ドライバー、ウエスト・サイド物語
(4)第三の男
(5)勝手にしやがれ、ワイルドバンチ
(7)2001年宇宙の旅
(8)ローマの休日、ブレードランナー
(10)駅馬車、天井棧敷の人々、道、めまい、アラビアのロレンス、暗殺の森、地獄の黙示録、エル・スール、グラン・トリノ

 

まあ、日本映画はこんなものでしょう。「雨月物語」「人情紙風船」「生きる」がテンから洩れているのがやや残念ではありますが。

ちなみに「生きる」は13位、「雨月物語」、「人情紙風船」は23位となっております。

 
外国映画はというと、これがちょっと気に入らない。なんで「ゴッドファーザー」が1位、「タクシー・ドライバー」が2位なんでしょうか。

「市民ケーン」は?、「禁じられた遊び」は?、「風と共に去りぬ」は?、「カサブランカ」は? 「ブレード・ランナー」や「エル・スール」がテンに入って、これらが落選するなんて…納得が行きません。ちなみに「市民ケーン」は19位、「禁じられた遊び」「風と共に去りぬ」は59位、「カサブランカ」はなんと99位です。

日本映画は、過去の直近2回のオールタイム・ベストテン('95年、'99年)と今回も含めて、計3回のベスト3はいずれも「七人の侍」「東京物語」「浮雲」と固定されてますが、外国映画のベスト3は、'95年が「市民ケーン」「2001年宇宙の旅」「天井桟敷の人々」(この年は邦洋混成でしたので、邦画を除いて)、'99年は「第三の男」「2001年宇宙の旅」「ローマの休日」といった具合に、毎回大きく異なります。今回のベスト3はすべて、前2回のベスト3には全く入っていなかった作品ばかりです。違和感があるのも当然です。

選考委員は、映画評論家に、漫画家等の文化人、現役の映画監督、脚本家なども含めた、バラエティ豊かな方々で、これは問題ありませんが、選考方法が、各人が選んだ10本それぞれに、各1点を与えて集計している点が問題ありかと思います。

選考委員の数は114人で、それぞれが個人的に思い入れのある作品まで含めているものですから、広範囲に分散してしまっているのです。
例えば、200本の中には、日本映画では「ゆけゆけ二度目の処女」「現代性犯罪絶叫篇 理由なき暴行」「襲られた女」等のピンク映画とか、外国映画では「ゲアトルーズ」(64)、「そして光ありき」(89)、「血」(89)など、まったく聞いた事のない作品(いずれも日本未公開)があったりします。こういった、映画ファンですら知らないような作品群まで、「映画遺産200」などとして格付けするのはどうかと思いますね。

も一つ不満なのは、ベスト200の集計表が誌面のどこにも掲載されていない点です。いつもこうしたベストテン発表では、必ず集計結果一覧表が発表されていたはずなのに、何で掲載されていないのでしょうか(なお読者選出分はきちんと採点結果が掲載されております)。HPの方には、順位だけが掲載されていますが。

で、気になったので、実際に各委員のベストテンを集計してみました(日本映画のみ)。ちょっと時間がかかりましたが。

まずベスト3
(1)東京物語=28点 (2)七人の侍=25点 (3)浮雲=16点

意外と少ないですね。つまり、「東京物語」、「七人の侍」といったマスターピースですら、114人中、4分の1程度の人しかテンに入れていないのです。

7位以降は、7位で10点、10位で9点、…と、以下順位が下がる毎に1点づつ減って行き、108位(全部で90作品)はなんと2点

で、ベスト200と謳いながら、実際は日本映画は計197本。200本に満たないのです。198位以下はすべて1点ですから、入れようがないわけですね。…洋画は計算しておりませんが、99位の127本も多分獲得点数は2点どまりじゃないでしょうか。

つまりは、たった2人が選んだ作品でも、“映画遺産200”として記録に残ってしまうわけです。どうりで聞いた事のない作品や、ピンク映画までランクインしてしまったわけです。

以前は、1位10点、2位9点…とキネ旬年間ベストテンと同じ方式で採点していた時もありましたが、少なくともその方式なら、選者の思い入れの深い作品ほど上位になるので、幾分かは妥当な結果になったでしょう。
例えば選者によっては、1位の作品は、10位作品より何十倍も愛着があり、上位にしたい作品かも知れないのに、どの作品も一人1点ではその辺の思いがまったく考慮されないことになります。

まあ、どの方式も一長一短で、前記の方法がベストとも言い切れませんが、結果としてなんともしっくり来ないベスト200になった事は否定できないでしょう。

細かい事を言えば、神代辰巳監督作品では、「少女娼婦 けものみち」が入って、「一条さゆり/濡れた欲情」「四畳半襖の裏張り」がなんで入っていない?、とか、山田洋次作品では、「学校Ⅲ」が入ってる一方で、「家族」「幸福の黄色いハンカチ」が何故入っていない?(この人たちのベストと言えば、まずこれらが挙げられると思う)…と疑問が湧いて来てしまいます。

 
それともう一つ問題が。
実は、集計内容にかなりのミスがあるのです。

例えば、上記に紹介した、日本映画ベストテンは、刊行されたキネ旬ムック「映画遺産200・日本映画編」(以下ムック)に掲載されたものを転載したものですが、よく見ていただきたい。7位が4本。―だったらこれで10本のはずですが、10位としてさらに2本挙げてあります。この2本は、正確には11位のはずです。

そこで、上にリンクを貼った、キネ旬のHPを参照すると、7位が「羅生門」、「丹下左膳餘話・百萬兩の壺」、「太陽を盗んだ男」の3本、10位が「家族ゲーム」、「野良犬」、「台風クラブ」の3本となっており、上掲のムックに掲載したものと異なっております。

私の計算では、ムックに掲載の通り、7位は4本が正しい。これはおそらく、最初の集計で間違えて、「家族ゲーム」を10位にしてしまったのでしょう。これをHPに掲載した後でミスに気付いたので、HPはそのままにしたが、ムックを編集する段で「家族ゲーム」を7位に差し替えたものと思われます。よって、何ともヘンテコなベスト12が出来上がってしまったわけです。

これだけではありません。実は11位はもう1本「洲崎パラダイス 赤信号」があります。これも集計ミスで1点少なく集計してしまったのでしょう。

その他、私が集計した限りにおいて、以下の間違いがありました。

①「男はつらいよ」シリーズ 正:37位  誤:59位
②「姿三四郎」        正:60位  誤:106位
③「男はつらいよ・寅次郎忘れな草」  正:圏外(1点) 誤:106位

「男はつらいよ」の1作目を除く単独作品は、「純情編」、「寅次郎忘れな草」、「寅次郎紅の花」が各1点でした。③はどうやら「紅の花」を間違えて「忘れな草」と合算してしまったミスと思われます。

細かい事ですが、「男はつらいよ」1作目が単独で2点獲得し、106位に入っておりますが、「男はつらいよ」シリーズ、としても4点獲得し、37位に挙がっているのもヘンな感じです。こんな場合は合算しても良かったのでは(合算すれば23位)と個人的には思ってしまいます。

重箱の隅をつつくようで申し訳ないのですが、こうしたランキングが、何十年も後まで記録として残る以上は(実際、過去のオールタイム・ベストをHP上に掲載しているサイトがいくつか存在します)、慎重の上にも慎重を期していただきたいものです。

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2008年8月24日 (日)

「超★映画評-愛と暴力の行方」

Choueigahyou 映画本の紹介です。

ただし今回は、お奨めではなく、逆にお奨め出来ない(と言うか買ってはいけない(笑))本である。

その本は、「超★映画評-愛と暴力の行方」(2008・扶桑社刊/著者:奥山篤信)。

タイトルはなんだか、前田有一氏の「超映画批評」とまぎらわしいが(現に、私は最初てっきり前田氏の本だと勘違いしてた)、一応ここ数年の新作映画評をまとめたものである。

で、買おうか迷ったが、とりあえず本屋で立ち読みしてみたら…
なんだなんだこの本は!のっけから「テニヲハ」がなってなく、日本語がおかしい意味が分からない文章多し。おまけに人名表記が不統一、そして明らかに間違いが多い。とにかく校正ミスが無茶苦茶多い。

私はあきれて買う気をなくした。こんなデタラメな本は見たことがない。

インターネット書店で、この本について検索してみたが、驚いたことに、感想、書評がまったくと言っていいほどアップされていない。

おそらくは、私のように買うのを躊躇した人が多いのか、買ってもあきれて感想を書く気も失せたのかも知れない。

やっと、アマゾンに1件だけ感想が書かれていたのを見つけたが、まさに私の感じた通りだったので、そのまま紹介しておこう。
「著者の思想や信条がどうであろうと構わないのですが、まず商業ベースに乗せられる文章ではないと思います。例えば「ヒストリー・オブ・バイオレンス」評の冒頭。「この映画は鑑賞後、数日経っても脳裏から強烈なインパクトが残る」。なんですか、これは? その他にも「てにをは」めちゃくちゃ、主語がどこにも落ちない、意味不明な文章など、校正をしながら読んだら真っ赤になってしまいました(唯一、安心して読めるのは「ブロークン・フラワーズ」評のみ)。こんなレベルの本を1800円で売るなんて、出版社にも責任ありです。再販かかるようなら、きっちりチェックと校閲をお願いします。」―無論、評価は★1つ(笑)である。

大多数の人が同じように思ったに違いない(信じられない人は一度立ち読みしてください(笑))。

しばらくはこの本の事も忘れていたが、たまたま図書館にあったので借りてきた。そして上記感想の方と同じく、校正してみたら、出るわ出るわでたちどころに100箇所以上!の間違いを見つけた(笑)。ざっと読んだだけだから、ちゃんと読んだらもっと出るに違いない。

以下、どんなに酷いか、検証結果を以下に挙げてみる。

①作品評冒頭に、それぞれスタッフ・出演者名が紹介されているが、本文と表記が一致しないものがやたら多い。
例:14P  (紹介)渡謙  →  15P  (本文)渡謙 
  332P (紹介)渡淳一 →   332P  (本文)渡淳一 (正しくは 渡
  122P (紹介)レリア・ゴリノ  →  123P (本文)ヴァレリア・ゴリノ
  (紹介)スティーン・XXX → (本文)スティーン・XXX (多数)
他にもほとんど、紹介:バ ビ ブ ベ ボ → 本文:ヴァ ヴィ ヴ ヴェ ヴォ となっている。―つまりはご本人は、スペルが“”のものは“ヴ”で表記したいのだろう。なら紹介も同じにしたらいいだろうに(そのくせ「ブラックブック」の監督名は本文でも“ポール・ーホーン”で済ませている。ポリシーに沿うなら“ポール・ヴァーホーヴェン”にすべきだろう。実際、はてなダイアリー、キネマ旬報では後者で表記されている)。

②本書の中で、同じ人名、作品名が別の箇所では違う表記になっている。
例:126P 「ディパーッド」   →  7P (目次)、344P (本文)「ディパーティッド」
  53P 「ドリームガールズ」  →   141P 「ドリームガールズ」
  132P 「ドリームガール」 (“ズ”が抜けてる)
  126P  (紹介・本文)マーティン・スコセッシ → 344P  (本文)マーン・スコシージ

③外国人名で、名と姓の間の“・”が省略されているもの多し。
例:28P  アンリー     → アン・リー
  146P エバブラウン   → エヴァ・ブラウン  
  235P アルパチーノ   → アル・パチーノ
作品名でも同じようなケースあり。
例:109P 「ロストイントランスレーション」 → 「ロスト・イン・トランスレーション」
  118P “ダイハード・シリーズ”  →  「ダイ・ハード」シリーズ

ちょっと無頓着過ぎないか。

④人名の誤りも目に付く。 →の後ろが正解。
  27P  リー・マクマートリー  →  リー・マクマートリー
  138P リュックブレッソン → リュック・ベッソン
  ご丁寧に③とダブルミス。
  ロベール・ブレッソン監督と勘違いしてますね(笑)。
  207P ローゼン監督(2箇所)  →  (ロバート・)ロッセン監督
  290P 小爾    → 小
      これも場所によって小になったり小になったり忙しい。
  323P 仲代達    → 仲代達
  
332P 夏八木    → 夏八木勲  (薫…って)

ちょっと酷いのが、 343P 「元岸部シローである岸部一徳」(笑)
テレビも芸能週刊誌も見ない私でも、岸部一徳の元の名前は“岸部修三”で、岸部シローは彼の弟で自己破産した人である事ぐらいは知っている。失礼な話だ。あいた口がふさがらない。

⑤作品名の間違い。
  180P 「硫黄島から来た手紙」 → 「硫黄島から手紙」

⑥ディティールの記憶違い。
 216P 「圧巻はラストシーン、まるであの名画『カサブランカ』の雨に濡れる飛行場の別れの場面と似せて…」
 → 「カサブランカ」のラストに雨は降っていない。霧がかかってるだけ。

⑦用語の解釈違い
 216P 「飛行機のドアが閉じられてサントラのドラマチックなダダダダーンという表現もそのもの。映画ファンにとってはやめられないアイロニーである。」
→「サントラ」とは、「サウンド・トラック」の略で、「映画フィルムの縁にある録音帯」のこと。映画音楽CDなどで、映画に使用された音楽を収めたCDを「サントラ盤」という使い方をする。ここで使う用語としては不適切。「劇伴」、「バックグラウンド・ミュージック」等とすべき(て、なんで私が解説しなきゃいけないのか(笑))。
「やめられないアイロニー」という使い方もおかしい。アイロニーは「皮肉」でしょう?それを言うなら、「映画ファンにとってはこたえられないリスペクト(又はオマージュ)・シーンである。」くらいではないか。

 345P 「黒澤は椿の赤い色を白黒でどう表現するか悩んだといわれ、研究の結果赤をそのまま映写するより、黒く塗ったものを写す方がモノクロでは赤のイメージが強烈にでることが分かったのである。」
→?「映写」じゃなくて、「撮影」、「写す」より「撮る」が正しいと思うが。

⑧そして問題なのが、「テニヲハ」その他日本語の乱れ。あまりに多いので、一部だけ抜粋する。
  17P 「本物の日本人のごと演技であった。」  →  ごとでは?
  19P 「なんとか娘を金持ちに嫁がせようと、お喋りで品格のまるでない井戸端会議のオバタリアンの母親と、(略)父親の無言の中の気高さと優しさ。」 (さっぱり分からん(笑))
  26P  「男性には本来的に暴力があり、それを補うものとして男の優しさと労りがある。その本来的暴力を、戦後絶対的タブーとして去勢化された日本男子が、却って凶悪で陰湿な暴力を生み出しているのである。」
  51P  「新宿までが美しくなるほど新鮮な感覚で中年男と若い女性の愛を見事に描いた。」 →美しく見えるでは?
  130P 「このダイヤを巡っての壮絶なドラマが切り落とされる。」
  ドラマは切り落とすもんじゃないだろう。正しくは「ドラマの幕が切って落とされる」。
  137P 「いくら日本のやくざを描くにも、一家皆殺し放火する悪逆非道を画いており、…」
  文章もおかしいが、後ろは「描いて」に統一すべき。
  145P 「従事しなかっという点で、…」
  211P 「それに一部の美しいバロック風の建物群など、(略)悪いことには焼け野原に建てられたあの低俗な共産主義様式の建築氾濫している」(絶句…)

⑨途中で欠落したのか、意味不明な文。
a) 17P 「SAYURI」評。「超一流芸者になるための手ほどきの場面なども、「荒野の用心棒-七人の侍」などで見られるアメリカ映画的手法であり、誰にでもわかりやすくとても面白いと思う。」
??「アメリカ映画的手法」が何なのか不明。「荒野の用心棒」と何の関係が? “-”の意味は?少しも「わかりやすく」ない。

b)  126P 「それは二十年前幼少だったXXXと△△△の人間の情(なさけ)が重なり合うのである。」
?? 名前が分からず、後で埋めるつもりだったのだろうか?。こんなの、校正で気がつけよ。

c)  127P 「せいぜい、当時ボストンで抑圧されていたアイルランド系ケネディを契機にやっと日の目をみた背景のなかでのアイルランド系マフィアを描いているという点が…」 お手上げ…誰か教えて。

………  
まったく、あきれたもんである。素人のブログの文章でも、ここまで酷くはない。出版社から刊行して金を取って売る以上は、せめて読める文章にして欲しい。これでは欠陥商品である。私がこの人の身内だったら、恥ずかしいから回収してくれと言う所だ。

まえがきによると、これらは「甦れ美しい日本」なるメルマガに掲載されたものだというからなお驚く。読者は誰も指摘しなかったのだろうか。日本の現状を憂えるのはいいことだが、その前に「正しい日本語」を守って欲しい(笑)。

  
それから、本人がどういう思想を持とうが自由だし、その点はとやかく言う気はないが、誤った偏見や認識不足については正しておく必要があるだろう。

29P  「ブロークバック・マウンテン」評。 「男性観客にすすり泣きの声が聞かれたが、日本にもGAYの時代がやってきたのであろうか」
「…ただひたすら同性愛者の権利だけを拡大していく世界的傾向は、人類本来の生態系を破壊する人類環境の破壊と断ずる主張は、人権至上主義では基本的人権の蹂躙となってしまうのであろうか。」

→ 後の方、明らかに日本語おかしいが、それよりも、この映画を観て泣く観客がいるから、日本にゲイの時代がやって来た…と決め付ける短絡思考の方が問題だろう。後の方など、まるで同性愛をCO2かエボラウイルス扱いだ(笑)。
この作品は、本質的には他人に認められずともひたむきに生きた、人間愛の崇高さ、人生の悲しさを描いた秀作と思うし、私はゲイではないけど感動しましたよ。 allcinemaに掲載されているアマチュア批評の方が奥山氏よりよっぽど的確に作品の本質を捉えている(笑)と言えるだろう。
それと、歴史的に間違ってるのは、日本における男の同性愛なんて、今に始まった事でなく、遥か数百年も昔からあったという事。お稚児さんはその代表だし(森蘭丸もそうと言われている)、衆道とも呼ばれていた。映画では「武士道残酷物語」(今井正監督)、「御法度」(大島渚監督)に具体的に登場しているのをご存知ないか。

「アカデミー賞審査委員会がこれを選ばなかった見識を讃えたい。」などとトンチンカンな事を書いてるが、残念ながら本作はアカデミー以外の各賞(NY批評家協会賞、ゴールデングローブ賞、英アカデミー賞etc.)の作品賞を軒並み受賞しており、選ばなかったアカデミー賞が批判されてる事もご存知ないらしい。もうちょっと調べて書いてはいかかでしょうか。

339P 「殯(もがり)の森」評もヒドい。冒頭で素人の人の会話が聞こえるシーンについて、「素人が演技して、それに金を払うのなら映画監督や映画俳優など必要ないのである。」と書いている。

黒澤明監督の名作「七人の侍」には、主に女性の村人に素人を起用している。家族を殺された恨みで、捕らえた野伏りを鍬で殺そうとする老女を演じていたのも、養老院にいたまったくの素人である。「隠し砦の三悪人」の雪姫役にも、短大生だったズブの素人、上原美佐を抜擢している。降板させられた「トラ、トラ、トラ」でも、山本五十六をはじめ重要な役に、財界人や現役会社社長などの素人を起用した(降板後プロ俳優に交代)。
そもそも映画史的に見ても、「戦火のかなた」「靴みがき」「自転車泥棒」等のイタリアン・ネオレアリズモにおいて、素人が演技しているという事実をこの方はご存知ないのだろうか。上記のような思い込みの断言は、黒澤やロッセリーニ、デ・シーカ監督に失礼である。

345P 「椿三十郎」評では、「世界中何処を捜してもリメイクがオリジナルと同一のものを目指したものはない。」と言い切っている。またまた恥の上塗りである。

映画ファンならすぐに思いつくだろうが、ヒッチコックの名作を、脚本からアングル、カット割りまでそっくりそのままに作った、ガス・ヴァン・サント監督の「サイコ」がまさにその代表。
また、市川崑監督の「ビルマの竪琴」(56→85)、「犬神家の一族」(76→2006)は、いずれもオリジナルと同じ脚本を使ってリメイクされている。最近の「按摩と女」「山のあなた 徳市の恋」もまさしくオリジナルそのまんま(「椿三十郎」公開時にはそのニュースも流れていたはずだが)。
この程度が思いつかなくて映画ファンと言えるのだろうか。

 
いったいどんな方が書いたのだろうと奥付をみたら、なんとまあ、“昭和23年生まれ、京都大学工学部建築学科卒、東京大学経済学部卒。三菱商事、米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て平成12年退社。現在、平河総合戦略研究所代表理事”という、錚々たる経歴の方であった。ちょっと信じられない。何度も目をこすって(笑)確認した。

 
そんなわけで、映画本としてはとてもお奨め出来ない。で、何故紹介したかと言うと、欠陥商品と知らずにうっかり買って、「金返せ!」と怒鳴りたくなる人を増やさない為である(笑)。

まあ強いて言えば、「映画検定」と、「日本語検定」の出題テキストとしてなら、利用価値はあるだろう(笑)。

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2008年6月22日 (日)

映画の本「冬のつらさを -加藤泰の世界」

Fuyunoturasawo 私の30数年来の友人で、ヨコハマ映画祭代表を務める 鈴村たけしさんの執筆による、映画監督・加藤泰の全作品についての解説・作品論をまとめた「冬のつらさを -加藤泰の世界」(ワイズ出版・刊)が発刊された。
今回はこの本についての感想を…。

鈴村さんは知る人ぞ知る、日本有数の熱烈な加藤泰ファンである。13歳の時、加藤監督の「瞼の母」(62)を観て加藤泰作品にハマったそうである。錦之助主演「沓掛時次郎・遊侠一匹」(66)を生涯のベストワンと決め、同人誌にその思いを熱く書き綴り、遂に本人に会う為、遠路はるばるヨコハマから京都まで出かけて行ったり、長時間のインタビューを行って同人誌に掲載したり、その熱意には敬服しきり。数年前にはワイズ出版の「日本カルト映画全集」の1冊として、「沓掛時次郎・遊侠一匹」を責任編集している。

そうした、加藤泰ラブコールの集大成(?)として刊行されたのが本書である。

加藤泰に関する書物としては、ほとんどバイブルとも言える、山根貞男編著による「遊侠一匹・加藤泰の世界」(70・幻燈社)をはじめ、リュミエール叢書「加藤泰、映画を語る」(94・筑摩書房)、「加藤泰映画華」(95・ワイズ出版)、三村晴彦著「『天城越え』と加藤泰」(04・北冬書房)などいくつかあるが、いずれも、加藤泰自身が語っていたり、プロの評論家やゆかりの映画作家たちが書き記したものばかりで、1人で、加藤泰の全作品について作品論を展開したものはこれが初めてであろう。
それを、プロではなく、1熱烈映画ファンが作り上げてしまったのである。しかも堂々、映画関係書を多く刊行しているワイズ出版・刊…である。空前の快挙と言えるだろう。

決して仲間褒めからではなく、これは本当に素晴らしい本である。加藤泰作品に対する、熱い思い入れが伝わって来て、ジンと心に響く。
鈴村さんが最も愛する作品「沓掛時次郎・遊侠一匹」論は、同人誌に掲載されたものも読ませていただいてるが、やはり何度読んでも心うたれる。その他では、「瞼の母」、「みな殺しの霊歌」、「丹下左膳・乾雲坤龍の巻」についての一文も読み応えがある。これほど熱意のこもった作品論は、評論家の文章にも類を見ない。
鈴村さんが、加藤泰本人からお聞きになった事もうまく織り込まれており、加藤泰研究家にとっても資料的価値は大きいと言えるだろう。

褒めてばかりだと贔屓の引き倒しになってしまうので、一つだけ不満を。

加藤泰が、生前映画化が適わず、幻の企画となった「好色五人女」についても書かれてあるが、加藤泰に協力し、この作品の映画化に執念を燃やしていたもう一人の映画人について触れられていない。

その人は、奇しくも先般亡くなった映画評論家の水野晴郎氏。

水野さんは、余程の映画通以外には知られていないが、もっとも早い時期に加藤泰監督を評価した映画評論家なのである。

キネ旬はじめ、いくつかの映画雑誌に、本名の水野和夫名義で加藤泰論を発表している。東映任侠映画についても、熱いオマージュを捧げて来た人である。

テレビの解説で有名になってからは、ほとんどそうした活動は見られなくなったが、「好色五人女」の映画化には加藤さんの生前から尽力されており、その証拠として、一部古書店に出回っている、同作品のシナリオには、“脚本/加藤泰、企画・原案/水野晴郎”とはっきりと書かれてある。
→  http://search.newgenji.co.jp/sgenji/D1/?000105830600/

水野さん自身も、いくつかのインタビューで、「好色五人女」を映画化したいと熱く語っていた。市川崑に監督を依頼しようともしたらしいが実現しなかった。

体調を崩されてからも、「『好色五人女』を映画化するまでは、絶対に死ねない!」とも語っている。
→  http://auctions.yahoo.co.jp/html/entget/200401/sibeex/interview1b.html

この事も、是非書いて欲しかった。そうすれば、この本の出版日(6月17日)の丁度1週間前に亡くなった水野さんの、絶好の追悼にもなった事だろう。

まあそれは私の無いものねだり。この本の価値が下がる事はいささかもない。

映画ファン、特に加藤泰ファン、古い日本映画ファンには是非お奨めしたい1冊である。

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2008年1月16日 (水)

「そして誰も観なくなった」(著者:重政隆文)

Sositedaremo_3映画の本を紹介します。

著者の重政隆文さんは、大阪芸大の教授で、別の肩書は「映画館主義者」。―要するに、映画は映画館でしか観ない、ビデオやDVDでは絶対に観ない…と決めている人である。

私もその主義は同感で、映画批評でも、映画館で観た作品を中心に書いており、ビデオで初めて観た作品は例えいくら感動しても、映画館で観るものとは別物であり、ベストテンの選考には加えないポリシーを貫いている。

しかし重政さんは、絶対にビデオ・DVDで観ないばかりか、“映画に携わる人や、映画について文章を公にしている人が、映画をビデオ・DVDという代用品で済ませている場合”に、これを徹底糾弾するのである。そういう人を、ちゃんと実名を挙げて非難している。いろんな本に書かれている事を丹念に調べ、軒並み厳しくやり込める。立川志らくも槍玉にあげられているし、押井守が映画をほとんど自宅のモニターで見ている事を取り上げ、「映画館で映画を観るという感覚の欠如が『イノセンス』のふがいなさに繋がっているのではないか。もう初心に戻るわけがないから、私は今後もこの監督にはあまり期待しない」と、言いたい放題(笑)である。

これには私も耳が痛い。極力映画館で観ているとは言え、劇場で見逃した作品はDVDで観るし、また昔の名画のDVDを購入する事もあるからである。

重政氏は、旧作を劇場で見る事にも異を差し挟む。「当時の空気を知らずに過去の名画に浸るくらいなら、その時間を同時代の映画を映画館で見ることに使うべきだ」と進言する。つまり、映画はその時代の空気を反映し、その時代と共に生きるものであるから、リアルタイムで観れなかった映画を後から追いかける行為は正しい鑑賞法ではないと言っているのである。確かに正論であるが、私は、古い映画を沢山観る事が、映画をより楽しむ手段…と思っているのでちょっと同意はしかねる所はある。しかし傾聴に値する意見として頭に入れてはおくべきであろう。

氏はまた、映画館の上映環境についても苦言を呈している。スタンダード・サイズの映画をビスタ・サイズで上映したりしていると、文句を言いに行く。それだけでなく、以後も監視しているという。私もこれは実践している。今はTOHOシネマズ梅田に組み込まれているが、OS劇場と呼ばれていた頃、市川雷蔵特集が催された時、「新・平家物語」がビスタ・サイズで上映された。雷蔵の頭がちょん切れ観づらい事この上ない。すぐに劇場に抗議し、次回から必ずスタンダード上映する事を確約させた。

あと、全体の半分を占める、今は無くなったものを中心に、大阪の映画館のついての紹介が読み応えがある。私もほとんどお世話になった場所ばかりである。懐かしさが蘇えり、感慨に耽った。考えれば、シネコンが出来たおかげで、新世界の一部を除き、これらはほとんど消えてしまったのである。大毎地下、戎橋劇場などの素敵だった名画座についても書かれてある。

あと、後半には、映画館について書かれた本についても紹介している。これもなかなかポイントをついた名文である。

映画ファン―特に大阪の映画ファンには必読の書である。定価が税込2,730円とちょっと高いが、それだけの値打ちはある。お奨めです。

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