「相棒」 TV版第1回
映画「相棒-劇場版-」公開にタイミングを合わせて、テレビドラマ「相棒」の初回放送分(2000年製作)が放映された(5月3日)。
私は、テレビドラマはほとんど観ないのだが(昨年観たのは黒澤リメイク2本と「点と線」だけ。で、なんとか及第点は「点と線」だけだった)、「相棒」は評判が良かったようなので、映画を観る前の予習として観る事にした(裏番組がビデオ必録の黒澤「椿三十郎」なのがもったいない。どうでもいいが、昨年観た3本もこれも全部テレビ朝日作品ばかり(笑))。
簡単に言えば、2人組の刑事の活躍を描く刑事ドラマ。いわゆる“バディ(相棒)ポリスもの”と呼ばれるジャンルであるので、題名はまさにピッタリ。
刑事ドラマでは定番で、古くはアメリカ・TVドラマ「刑事スタスキー&ハッチ」などがあり、日本では松田優作・中村雅俊「俺たちの勲章」から「あぶない刑事」に至るまで多数ある。映画でも「リーサル・ウエポン」シリーズとか、ジャッキー・チェンの「ラッシュアワー」などが目新しいところ。…しかし原典を辿れば、黒澤明監督の「野良犬」(1949)に行き着く事になる。やっぱりクロサワは偉大である。
本作がちょっとユニークなのは、2人のキャラクターがまったく対照的な事。水谷豊扮する杉下右京は、いつも冷静沈着で頭脳が冴えるクール型。一方の寺脇康文扮する亀山薫は、よくあるタイプの直情型熱血漢で、ややおっちょこちょいのホット型…。言ってみれば、古畑任三郎と、あぶデカの大下(柴田恭兵)がコンビを組んだようなものである。この設定が、これまでのバディ刑事ドラマとは一線を画している。
しかし、黒澤の「野良犬」も、よく考えれば熱血直情タイプの村上(三船敏郎)と、ベテランで沈着冷静な佐藤(志村喬)というコンビだったので、製作側にも、黒澤作品が頭にあったのかも知れない。
そう思っていたら、本作の冒頭、亀山刑事が指名手配中の犯人に逆に捕まり、人質となった時、杉下が携帯で亀山にアイデアを授け、見事犯人を逮捕するシーンがあるが、これは黒澤の「七人の侍」で、島田勘兵衛が人質を取って立て篭もる強盗を見事な策略で退治するシーンを彷彿とさせる。奇しくも、沈着冷静な勘兵衛を演じたのがやはり志村喬。…う~む、やっぱり本作は黒澤オマージュなのかも知れない(笑)。
で、このツカミで2人のキャラクターを際立たせ、亀山が左遷されて杉下のいる“特命課”に配属されるきっかけともなる。この出だしもなかなか快調。
ドラマが本筋に入ると、亀山が殺人事件に巻き込まれ、謎を解明するうちに、杉下の頭脳と見事な観察眼によって、意外な黒幕が明らかになる。この謎解きシークェンスも、古畑任三郎、もしくはその原典である「刑事コロンボ」を思わせる。
亀山の軽妙なセリフ回し、彼と、いつも飄々としている杉下との掛け合いも楽しいし、そして彼らを取り巻く脇役陣もなかなか多彩で、しかも、(1作目を観る限りだが)警察内部の不正・腐敗に対する批判も込められているようで、凡百の「土曜ワイド劇場」ドラマの中では抜きん出た存在である。人気を博して6シーズン、8年も続く人気ドラマ・シリーズとなったのも分かる気がする。見逃していたのが、ちょっともったいない。今からでも追いかけて観たくなる。
ただ、テレビドラマとしては面白いが、映画化しても面白いかどうかは未知数である。淡々とした、渋い人間ドラマが持ち味であるように思われるし、どちらかと言えばテレビサイズでこそ魅力が引き立つ素材のような気がする。その点が懸念材料ではある。―映画化するとすれば、例えば、同じく水谷豊が刑事を演じた、市川崑監督による佳作「幸福」のような味が出れば良いのだが…。
ともあれ、劇場版「相棒」に期待いたしましょう。
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