2006年1月 7日 (土)

「キル・ビル Vol.2」

Killbillvol2 2004年・アメリカ
製作:バンド・アパート=ミラマックス
配給:ギャガ=ヒューマックス
原題:Kill Bill vol.2
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
撮影:ロバート・リチャードソン
美術:デイヴィッド・ワスコ、ツァオ・ジュウピン
音楽:The RZA、ロバート・ロドリゲス
製作総指揮:ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン、エリカ・スタインバーグ、イー・ベネット・ウォルシュ
製作:ローレンス・ベンダー

復讐に燃える女性殺し屋の旅を描いたドラマの第2部(完結編)。監督・脚本は「ジャッキー・ブラウン」のクエンティン・タランティーノ。出演は「ペイチェック/消された記憶」のユマ・サーマン、「バード・オン・ワイヤー」のデイヴィッド・キャラダイン、「ウォーク・トゥ・リメンバー」のダリル・ハンナ、「007/ダイ・アナザー・デイ」のマイケル・マドセン、「フル・ブラッド」のゴードン・リュー、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」のマイケル・パークス、「S.W.A.T.」のサミュエル・L・ジャクソンほか。

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「キル・ビル」

Killbillvol1 2003年・アメリカ
製作:バンド・アパート=ミラマックス
配給:ギャガ=ヒューマックス
原題:Kill Bill Vol.1
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
撮影:ロバート・リチャードソン
美術:種田陽平、デイヴィッド・ワスコ
音楽:THE RZA
アニメーション制作:プロダクションI.G.
製作総指揮:ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン、エリカ・スタインバーグ、イー・ベネット・ウォルシュ
製作:ローレンス・ベンダー

復讐に燃える女性殺し屋の活躍を描いたヴァイオレンス映画の第一部。監督・脚本は「ジャッキー・ブラウン」のクエンティン・タランティーノ。出演は「テープ」のユマ・サーマン、「チャーリーズ・エンジェル」シリーズのルーシー・リュー、「007/ダイ・アナザー・デイ」のマイケル・マドセン、「ウォーク・トゥ・リメンバー」のダリル・ハンナ、「バード・オン・ワイヤー」のデイヴィッド・キャラダイン、「風雲 ストームライダース」の千葉真一、「バトル・ロワイアル」の栗山千明ほか。

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2006年1月 6日 (金)

「北の零年」

Kitanozeronen2005年・東映=テレビ朝日、他
配給:東映
監督:行定 勲
脚色:那須真知子
製作総指揮:岡田裕介、坂本眞一

明治初期の北海道を舞台に、運命に翻弄されながらも屈することなく自分たちの国作りに挑んだ人々の姿を、史実を基に描いた歴史群像ドラマ。監督は「世界の中心で、愛をさけぶ」の行定勲。脚色は「DEVILMAN」の那須真知子。撮影を「阿修羅のごとく」の北信康が担当している。主演は、「風の舞 闇を拓く光の詩」の吉永小百合と「ラスト サムライ」の渡辺謙、「丹下左膳 百万両の壺」の豊川悦司。文化庁支援作品。

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「TAKESHIS’」

Takeshis (2005年・松竹=オフィス北野)

監督:北野武
脚本:北野武
撮影:柳島克己
音楽:NAGI
プロデューサー:森昌行、吉田多喜男

売れない芸人の北野と、テレビ界の大物タレントであるビートたけしが出会い、虚構とも現実とも区別がつかないファンタジーの世界が繰り広げられる。監督は「座頭市」の北野武。出演はビートたけしの他、大杉漣、寺島進、渡辺哲、津田寛治、岸本加世子など北野映画の常連が揃った。

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「座頭市」  (2003)

Zatouichitakeshi (2003年・松竹=オフィス北野)

監督:北野武
原作:子母沢寛
脚本:北野武
撮影:柳島克己
音楽:鈴木慶一
企画:齋藤智恵子
プロデューサー:森昌行、齋藤恒久

異才・北野武監督初の時代劇。これはビートたけしの恩人であり、また勝新太郎とも縁が深い浅草ロック座のオーナー・齋藤智恵子さんが、たけし主演で座頭市を映画化したいと希望し、勝新とはまったく違う座頭市になっても構わないという了承を得て北野武脚本・監督作品として映画化が実現したという経緯がある。毎回独特のスタイルを貫く北野武監督、やはりただものではない時代劇の秀作を作り上げた。

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「サマータイムマシン・ブルース」

Summertimemachineblues 2005年・日本   107分
配給:東芝エンタテインメント
監督:本広克行
原作:上田誠
脚本:上田誠
撮影:川越一成
プロデューサー:本広克行、安藤親広

京都の劇団「ヨーロッパ企画」による舞台劇「サマータイムマシン・ブルース2003」の映画化作品。タイムマシンを巡って思いがけない事態に巻き込まれる学生たちの姿を描く青春コメディ。監督は「踊る大捜査線」シリーズの本広克行。舞台劇に惚れ込んだ本広監督が自ら初プロデュースも手がけて完成させた。出演は映画初主演となる瑛太、ヒロインに「スウィングガールズ」の上野樹里、その他ムロツヨシ、真木よう子、佐々木蔵之介らが顔を揃える。

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2006年1月 4日 (水)

「お父さんのバックドロップ」

Farthesbackdrop(2004年・シネカノン/李 闘士男 監督)

軽妙なエッセイや、長編小説「ガダラの豚」で知られる、中島らもの原作小説の映画化。ミニシアターのレイトショーで観たのだが、これは見事な快作である! 楽しくて、微笑ましくて、そして最後に素晴らしい感動が待っている。これぞ、誰が観ても泣けて感動できる、エンタティンメントの王道である。大衆娯楽映画としては、本年屈指の力作である。おススメ。

主人公は2流プロレス団体に所属する中年プロレスラー、下田牛之助(宇梶剛士)。彼には10歳になる息子・一雄(神木隆之介)がいるが、年中巡業で、妻が死んだ時にも帰ってやれなかった為、一雄からは嫌われている。興行が思わしくない所属団体の危機を救う為、髪を金髪に染め、ヒール(悪役)に転向した父の姿を見て、一雄はプロレスも父もますます嫌いになる。そんな一雄の反抗心を見た牛之助は、息子の信頼を取り戻す為、折から来日した極真カラテのチャンピオン、ロベルト・カーマン(エヴェルトン・テイシェイラ)に無謀な挑戦状を叩きつける。年齢的にも、体力的にも、とても勝ち目のない相手にコテンパンに痛めつけられながらも、それでも牛之助は必死で戦いを挑む。その姿を見た一雄は、初めて父を応援する気になり、会場に向う。そして、映画は感動のクライマックスを迎える…。

物語としては、昔からよくあるパターンで、「チャンプ」や、「ロッキー」や、ロバート・アルドリッチの快作「カリフォルニア・ドールス」あたりを立ちどころに思い起こすことが出来る。そして何より、“ショボくれたチームが、明らかに劣勢な状況の中で、最後の最後で大逆転勝利する”―という、私の大好きな、正しい娯楽映画の王道パターンをきちんと踏んでいる点がいい。しかもそこに愛らしくけなげな子供を絡ませ、泣かせる要素をうまく取り入れている。これが娯楽映画のツボである。本作はさらに、舞台を関西に持ってきて、松竹新喜劇ばりの、下町の人情噺の味わいも含ませている。私は主人公たちの行きつけの焼肉屋で、母を手伝い甲斐甲斐しく働く、一雄と同い年の少年(阪本順治監督「ぼくんち」でも好演の田中優貴)を見て、はるき悦己のマンガ「じゃりんこチエ」を思い出した(この少年の役名が、テツであるのは偶然か(笑))。

この映画が泣けるのは、そうした要素をバックに、仕事一筋に打ち込んで家庭を顧みなかった中年男が、勝ち目のない戦いに果敢に挑み、その姿を愛する息子に見せる事によって、父親としての威厳を回復して行く、そのひたむきな姿に心打たれるからである。子供を持つ中年世代にとっては、これはまさに身につまされる話である。打たれても、血みどろになっても、その度に立ち上がって来る牛之助の姿に、リング席の観客の間から“牛之助”コールが巻き起こって来る。これは感動的である。映画の観客である我々も、つい立ち上がり応援したくなるくらい胸打たれ、そして涙が溢れて来るのである。無論私も泣いた。ポロポロ泣けた。パターンだと分かっていても、これは泣ける。そして、我々も、家族のために頑張らなければ…と思うのである。仕事に疲れた人、親子の対話に悩む父親は、是非この映画を観て欲しい。きっと元気になれるはずである。

牛之助を演じた宇梶剛士が、映画初出演とは思えない快演を見せる。一本気で、人情家で、体力の衰えを隠せない年代になっても、プロレスに一途に打ち込む中年男の哀愁を体で表現している。そして息子を演じた神木隆之介クンが素晴らしい。天才である。これほど観客の心を掴む子役が登場したのは何年ぶりだろう。大事に育って欲しい。これが監督第1作となる新人、李闘士男、お見事。今後の活躍も期待したい。なお、脚本を書いたのは「血と骨」などの売れっ子、鄭義信。個人的には本年度脚本賞を与えたい。

原作者の中島らもが、散髪屋の役でカメオ出演している。惜しくも突然の事故で急逝したが、亡くなる前にこの映画を観て、とても感動したとの事であり、何よりである。冥福を祈りたい。

それにしても残念なのは、これほど感動出来る力作(掲示板でも感動の声が多い)が、何故ミニシアターで、細々と公開されなければならないのか。これは全国規模で、是非多くの人に観せるべきである。こうした作品がヒットし、多くの観客を呼ぶようになってこそ、日本映画は面白くなるはずである。    (採点=★★★★☆

(2004年12月3日)

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2006年1月 3日 (火)

「五線譜のラブレター DE-LOVELY」

(MGM=20世紀フォックス:アーウィン・ウィンクラー 監督)

数々の名曲を世に送り出した作曲家、コール・ポーターの伝記映画。

音楽家の伝記映画と言えば一時は盛んに作られていた(ジョージ・ガーシュイン=「アメリカ交響楽」、エデイ・デューチン=「愛情物語」「グレン・ミラー物語」等々)。最近はあまり作られなくなっていたように思う。で、コール・ポーターと言えば、「夜も昼も」、「ビギン・ザ・ビギン」、「オール・オブ・ユー」、そして「インディー・ジョーンズ・魔宮の伝説」の冒頭のミュージカル・シーンに使われた「エニシング・ゴーズ」などで広く知られた作曲家であり、またMGMを中心としたミュージカル映画「踊るアメリカ艦隊」「踊る海賊」「キス・ミー・ケイト」「上流社会」「絹の靴下」などにも楽曲を提供しており、ミュージカル映画ファンには特になじみの深い伝説の作曲家であるとも言える。ちなみに、既に1946年に、「夜も昼も」という題名でコール・ポーターの伝記映画が作られている(ポーターに扮したのはケーリー・グラント)。この時はまだポーターは存命で(没年は1964年)、いわゆる半生記であった。

で、本作は、死を目前にしたポーターが、友人の案内で劇場において彼自身の半生のドラマを眺める…というちょっと変わった趣向。ポーターに扮したのは名優ケヴィン・クライン。最愛の妻リンダを演じたのはアシュレイ・ジャッド。基本としてはポーターと妻の深い夫婦愛をしっとりと描いているのだが、「夜も昼も」と違うのは、ポーターが実はゲイであった事を暴露している点で、このあたりはいかにも今ふうである。しかしまた、妻も深く愛しており、リンダの死を看取るシーンは感動的であった。ラストは、ポーターの孤独感が悲痛で、胸を締め付けられる。

監督のアーウィン・ウィンクラーは、'70年代に「いちご白書」「ひとりぼっちの青春」等の傑作青春映画、そして「ロッキー」シリーズを製作した名プロデューサーであり、最近では「海辺の家」「勇者たちの戦場」等、しみじみとした佳作の監督としても活躍している。本作も見応えのある作品に仕上がっている。

映画ファンとして楽しいのは、舞台や街頭で歌い、踊るミュージカル・シーンがふんだんに登場する場面で、よく考えればこの映画の製作会社はかつてミュージカル映画の傑作を量産していたMGM!。中でも「ピエロになろう」(Be a Crown)という楽しいミュージカル・ナンバーは、MGMミュージカルの大傑作「雨に唄えば」の中でドナルド・オコナーが歌った"Make 'em Laugh"を思い起こさせ、特に感慨深かった。ポーター・ファンや、とりわけMGMミュージカル・ファンは必見であるとお薦めしておく。       (採点=★★★★

(2004年12月7日)

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連句アニメーション「冬の日」

Fuyunohi_2(2003年・IMAGICAエンタティンメント:
川本 喜八郎 総合監修) 

これは、非常に珍しい(と言うより世界初の)連句アニメーションである。

連句とは、複数の歌人が前の人の下の句を受け、自分の句を鎖のようにつなげていく合作の文学形式…というものである(最初に詠まれる「発句」が独立して「俳句」になったといわれている)。中では、松尾芭蕉による七部集「冬の日」が有名であり、本作のタイトルはそこから取られている。

この作品は、その連句の形式で、世界中の錚々たるアニメ作家に、既存の連句を元に短編アニメを作ってもらい、それらを繋げて1本のアニメ作品として完成させたものである。

Fuyunohi2 中心となり、企画・監修したのは、日本のみならず世界的にも名高い人形アニメ作家の川本喜八郎氏。氏の呼びかけに、世界中から35人のアニメ作家が集まり、連句にインスパイアされた映像を競い合っている。集まった作家は、「話の話」などで知られるロシアのユーリ・ノルシュテイン、「老人と海」でアカデミー賞受賞のアレキサンドル・ペトロフ、「火童」が高い評価を受けた中国の王柏栄、「頭山」がアカデミー短編賞にノミネートされた山村浩二、そして名前を聞けば思い当たる日本有数のアニメ作家たち、久里洋二古川タク林静一小田部羊一高畑勲…等々であり、Fuyunohi3 アニメに興味のある人ならこれらの名前を聞くだけでもワクワクして来ることだろう。そして、作品を観たなら、アニメファンのみならず、アニメに関心のない方でも、その豊かなイマジネーションの広がりには感嘆するに違いない。それほど、1本1本の作品は(平均して1分前後のごく短い作品であるにもかかわらず)実に丁寧な作りで見応えがある。

単にアニメと言っても、実にさまざまな手法がある事が作品を観れば分かって来る。普通のセルアニメ以外にも、人形アニメ、切り絵アニメ、クレイ(粘土)アニメ、油絵アニメ、水墨画アニメ、CG、ピンスクリーン(無数の釘を出したり引っ込めたりして白黒を表現する)等々・・・まさに職人芸であり、見事な芸術である。公式サイトの予告編に、ノルシュテイン作品や川本氏の人形アニメがワンシーン出て来るが、風にそよぐ着物の動きだけを見てもその見事さの一端を窺い知る事が出来る(注:現在公式サイトは閉鎖。残念である)

35人による36本(川本氏が2本)のアニメそのものは45分程度だが、後半はそれら作家たちへのインタビューや製作過程を追ったメイキング編となっている。これがまた面白い。ノルシュテインのあの繊細な絵はどうやって作っているのかが見れるだけでも興味深い。

本作は、文化庁メディア芸術祭アニメ部門の大賞、毎日映画コンクールで大藤信郎賞(日本で一番権威のあるアニメ賞)を受賞し、キネマ旬報文化映画ベストテンでも3位に入るなど、さまざまな賞を受賞し、高い評価を受けている。残念ながら劇場公開は東京、大阪、名古屋のごく一部の劇場でのみの上映であり、あまり多くの人の目に触れられていない(私は家の近くで上映していたので幸運にも観る事が出来た)。
ビデオは出ているが、その繊細な描写は大きなスクリーンで隅々に至るまでじっくり見るのが望ましい。ともあれ、アニメに興味のある方は必見であり、また俳句・短歌に興味のある方も是非観ることをお薦めする。個人的には本年のベスト3に入れたいし、出来うるなら手元に置いて何度も眺めたい、これは素晴らしいアートの秀作である。    (採点=★★★★★

(2004年2月22日)

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「東京ゴッドファーザーズ」

Tokyogodfarthers(2003年:ソニー・ピクチャーズ/監督:今 敏 )

これまで、「パーフェクト・ブルー」「千年女優」という、いずれも優れたアニメーションを監督して高い評価を受け、海外にもその名を知られる今敏が、またも傑作アニメを作り上げた。これは恐らく、アニメとしては本年度の最高作であるばかりでなく、日本映画全体の中でも屈指の傑作だと思う。

東京の街中で暮らすホームレス3人組が、クリスマスの日にひょんな事から捨て子の赤ん坊を見つけ、その親を捜し求めるうちに騒動に巻き込まれて行く…という物語。

笑いあり、涙あり、アクションもあればスリリングなサスペンスもありと、あらゆる娯楽的要素が盛りだくさん。特に、それぞれ心に深い傷を持つ、まったく縁もゆかりもない3人の男女が、行きがかりで一緒に赤ん坊の親を捜すうちに、次第に家族にも似た心の絆を強めて行く…という展開が心を打ち、単なるエンタティンメントに終わっていない。

この3人、ギャンブルにのめり込み、妻と子を棄てた中年男ギン(声:江守徹)に、おカマのハナ(梅垣義明)、家出した娘ミユキ(岡本綾)という組み合わせが父と母と子のようでもあり、言わば擬似家族を構成しているように見える(実際、ミユキの夢の中ではこの3人は本当の家族なのである)。物語の中には、さまざまな“家族”が登場し、それぞれに悩みを抱え、本当の家族像を模索し、苦闘する姿が描かれ、よく見ればなかなか奥が深い。そう言えば、ホームレス、捨て子という本筋以外にも、在留外国人犯罪者、ホームレス狩りの若者たち、ヤクザ…等が登場し、これはまた現代の日本が抱えるさまざまな病巣をもしたたかに描いた問題作でもあるのである。

しかしトータルでは前述のように、スリリングなエンタティンメントとしてうまくまとめており、ラストではギンもミユキもそれぞれ自分の家族の絆を取り戻すであろう事もさりげなく匂わせ、爽やかな余韻を残して映画は終わるのである。

観た人の間では、エンディングに向けてあまりにも偶然が重なり過ぎる…との不満の声もあるようである。しかしこれは、クリスマスの日に起きた奇跡…と考えれば十分納得できる。現実離れしたファンタジーの世界では、何が起きたって不思議ではない。クリスマスとの関連で言えば、フランク・キャプラの傑作ファンタジー「素晴らしき哉、人生!」をも思い起こせばよい。丁寧に作られ、感動さえさせてくれれば、どんなに都合よく物語が進んだって納得できるのである。

題名のゴットファーザーズとは、マフィアにあらず(笑)、ジョン・フォードの秀作「3人の名付親」原題"Three Godfathers"。3人の悪党が赤ん坊を町まで届ける話)から来ている。テーマやストーリーもこの作品からいろいろとヒントを得ていると思われる。

デビュー作「パーフェクト・ブルー」はサイコ・スリラー、「千年女優」は戦前戦後を生きた伝説の女優の半生記…と、1作ごとにまったく違うジャンルに挑戦しながら、いずれも成功させた今敏監督は、今やポスト宮崎駿を狙える、アニメ界のみならず、日本映画界のホープであると言えると思う。しかも1作ごとにエンタティンメント度を高めている。大人から子供まで、誰が観ても楽しめ、なお且つ考えさせられる、これは本年ベストを狙えるお薦めの傑作である。 
(採点=★★★★★

(2003年11月29日)

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